軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

33.魔宝石の作り方

店は魔道具を扱う店らしくて、魔道具指輪なんかも売っている。やはり店主さんが錬金術師なんかな?

猫はケータくんとの会話中は商品棚を眺めていたが、ケータくんは同時進行で店主さんに「お金は持ってきたけど、『精霊石』も持ってるから違いを教えてほしいニャン」などと会話していた。器用だな!?

「『精霊石』の場合はうちで出来ることは何もねえよ。見たとこ火炎系の魔宝石だろ? カッティングも透明度も悪くねえ」

「ニャ? これは宝石じゃなくて『ガラス』ニャン」

肉球の手に乗せた『 火硝子(フレイムビジュー) 』を見つつの店主さんの指摘に、ケータくんが首をかしげる。

「ガラスぅ!? そんなもん属性銃の出力になんか耐えきれねえぞ?」

「にゃん~、色つきの『 宝硝子(ビジュー) 』にゃんよ、ただのガラスじゃないにゃん。それでも駄目にゃん?」

ケータくんは猫が売ったものの材質について詳しくないようなので、ちょっと失礼しますよ。

「『 宝硝子(ビジュー) 』ってぇと、学園都市の魔鉱炉の」

「そう聞いてるにゃん~。色変は錬金術にゃ」

「人工魔宝石の研究ってやつか、なるほどこいつはたしかに そう(・・) 見える」

しげしげとケータくんの『 火硝子(フレイムビジュー) 』を眺めつつも、手には取らない。

猫はちらりとケータくんを確認してうなずかれたので、インベントリから透明の『 宝硝子(ビジュー) 』と、色付きの『 木硝子(ウッドビジュー) 』『 雷硝子(サンダービジュー) 』を取り出した。

「これが素の『 宝硝子(ビジュー) 』にゃ」

「ほお…!」

露店台の上に置くと、店主さんが手に取る。ゲームの仕様上、NPCがプレイヤーのアイテムを手に取るにはプレイヤーが取引上に載せる必要がある。その場合、なんらかのクエストが始まって奪われてしまうこともあり得るので(たとえば猫の『ダイアモンド』のように)、ケータくんは精霊石を渡せなかったのだ。

勝手に奪われない仕様なのはありがたいことだけど、こういうときはちょっともどかしさもある。

店主さんは感心したように『 宝硝子(ビジュー) 』を光にかざしたり、触ったりしている。たぶん透明度とか硬さを調べてるんかな?

「ふむ。色付きは、属性は弱いが十分魔宝石の基準は満たしているな。これは錬成陣か?」

「そうにゃん。真円を使ってるにゃ」

「真円か、道理で属性が弱い。菱形で二重術式にかけたほうがよほど濃くなるだろうに、なぜ真円で…」

「真円しか持ってないにゃんよ~」

「お前か!? なんてもったいないことを…!!」

嘆かれた。

そうか、魔法じゃなくて属性を入れるのは菱形の方がいいのか…。そういう使い分けがあるとは知らなかった。猫ったら菱形の説明書はまともに読んでなかったからな。今度また書庫で読んでおこう。

「お部屋が狭いにゃん」

「たしかに『菱形錬成陣』は大きいが、使わないときは丸めて立て掛けておけばいいだろう」

「いちいち片付けるものだったにゃん!?」

「当たり前だろう、邪魔だろうが!」

「にゃん…!」

それはそう。

でも『菱形錬成陣』、ラグサイズなもんだから工房家具だとばかり思っていた。家具は一度置くと、もうアイテム欄に戻せない。だからしまったり出来ないもんだとばかり。そうか、真円もアイテムだし、あれも扱いとしてはアイテムだったのか。

ケータくんにまで半目で見られている。

「にゃ、にゃ、『属性銃』にするには強度はどうにゃん!?」

話を強引に戻すぞ!

「おう。強度は申し分ねえ。属性値がちょっと弱いが、それは『精霊石』になった段階で補強されているだろうし、大丈夫だろう。猫……2匹とも猫だな、黒猫よ、どうする? 『魔道石』はやめておくか?」

「ニャ、一応金は用意してきたから、最初のでどうなるか見てもらってもいいニャ?」

「構わんよ」

店主さんから猫へ『 宝硝子(ビジュー) 』たちが返却されて、ケータくんの『魔道石』作りの商談が始まる。

ケータくんが用意してきた魔宝石は『スモーキークォーツの魔宝石』で光属性。やはり光属性か。光か闇は汎用性が高いもんね。

魔宝石以外の素材はアレコレあるけど、基本的には「属性増強」「指向性」「魔道強化」などを加えるために、それぞれ素材が必要になるらしい。

『魔道工』て魔石やそれに準じる素材に魔道回路を作って魔道具の部品に仕立てるわけだけど、その回路の図面も色々なら、引くための素材もいろいろあるらしい。とてもややこしそう。

ちなみにROM金術師の上位職に当たるのでプレイヤーからの情報はまったくない。そもそもがシークレットクエストから始まるし、面倒くさそうだし、いたとしてもかなりレアだろう。

そうそう、スレといえば初心者スレから錬金術師スレに人が流れてきたみたいで、最近はちょいちょい賑わってるんだよね。しかしすぐ勧誘が来るので、錬金術師には嫌われている。この分だとそろそろ制限スレが立ちそうだ。ちょっと楽しみ。ROM金術師たちもついにROMを卒業する時代がきたのかもしれない。猫もだが…!

「属性増強に『白月兎の尾』、指向性は『ジニアのインク』、魔道強化が無しなんだったな。素材は手に入れてこなかったのか?」

「光属性の素材はそう簡単には手に入らないニャン~!」

…。

猫のポッケにはいろいろあるけど、ここで出していいものかどうか悩みますな。

「なら『魔道石』の作成賃も合わせて20万だな」

「それでお願いするニャ」

「にゃん~、参考までにお金で解決した場合はどんな素材を使うにゃん?」

「このレベルに合わせるとなると、『 歪真珠(バロックパール) 』の白か、『暴れ白馬の尾』か…そんなところだな」

「もしかして『天馬の蹄』『白い純情』なんかも使えるにゃ?」

「そいつはこれにはオーバースペックだな」

「にゃん~」

掘り出しもの屋で買った素材、オーバースペックなのか。どこで捨てられたアイテムなんだろな、あれは…。

まあそれはおいておくとして。

「ケータにゃん、猫、『歪真珠』の白なら持ってるにゃん」

「ニャ!」

バルトロさんに教わったレシピでお試しに作ってみたのが、ちょうど白と黒だったのだ。

『歪真珠』は調べたところ、元々は貝のmobのレアドロップ。品質が高いほど希少性が高いと言われ、主にイベントアイテムとして消費されている。通常品質でも『装飾工』に『調薬』に、と素材として求める生産が多いので結構人気のアイテムだったりする。

『七宝魚の鱗』がそうだったように色で品名が別れないので、こういうふうに色指定のものはマケボで買えない罠があるんだよね。

そんな『歪真珠』のマケボ取引価格は通常品質でも1万前後といったところ。

「色指定アリ、お急ぎコミコミで3万ってとこでどうにゃ?」

「白の『歪真珠』なら、普通に露店でもそのくらいするニャン?」

「にゃん!?」

「それに『調薬』で主に使うのは『水中呼吸薬』ニャ、こないだの青月夜で需要の高まりを感じるからもう少し上がると思うニャ。ほんとに3万でいいニャ?」

「いいにゃんよ~」

くぅ、猫の相場観はやはり弱い…!

しかし『水中呼吸薬』なんてあるんだね。たしかに深海探検にはなくてはならなそうなアイテムだ。ちょっと気になる。

無事に『歪真珠』の白を取引してケータくんが店主に渡すと、魔道石の作成賃は10万zになった。

この魔道石を作るクエスト、ケータくんいわく必要アイテム1個不足につき10万かかるらしい。『歪真珠』が10万以下ならケータくんは即決だったはずだ。しかしそれはそれ、これはこれである。フレの足元を見るのはあまりよろしくない。

「ランは『魔道石』作らなくていいニャ?」

「悩んでるところにゃん~」

材料さえ全部揃ってれば10万zで『魔道石』が手に入るなら、お得なんじゃあるまいか。魔道杖にするもよし、それ以外の魔道具にしてもらうことも出来る……かもしれない。

作るなら光属性だけど、『 光硝子(ライトビジュー) 』(推定)はまだ作ってないんだよね。

宝石でも作れるというけど、宝石には属性がわずかにしか入っていないそうな。そこが魔宝石と宝石の違いでもある。だからこそ属性 宝硝子(ビジュー) が魔宝石扱いされたんだろう。

色つき属性 宝硝子(ビジュー) は土、水、雷、木、毒がある。闇はロアンに使ってしまったし、火はケータくんに売ってしまったからな。他は形と色の相性がわかっていなくて、まだ作っていなかった。

この中から選ぶなら、雷か毒か木かなあ?

猫が『 宝硝子(ビジュー) 』を取り出して首を傾げていると、店主が腕を組んで唸る。

「どれも属性が薄くて惜しいねえ」

「『精霊石』としてはちょうどよかったにゃんよ」

「精霊のことはよくわからん。だが『魔道石』の素材として見ると実に惜しい」

「にゃん~…」

そんなこと言われましても。

あ。そうだ。

「『 宝硝子(ビジュー) 』に属性を詰めてもらうことは可能にゃん?」

「お? 面白い依頼だな。それなら『 宝硝子(ビジュー) 』5つで手を打とう」

「どんな形でもいいにゃ?」

「構わんよ」

それなら5つ用意できる。またティアラさんにメールして今度は買わせてもらおうっと。今度こそちゃんとお金を取ってもらわねば…! そして白月夜に採れた『精霊砂』(今回は2個採れた)も送るのだ。

形いろいろな『 宝硝子(ビジュー) 』5個を渡すと、店主はまたまじまじと眺めている。やはり錬金術師としては気になる素材なんだろうね。

「どの程度の属性に仕上がるのか、先にこいつを魔宝石にしちまってもいいかい?」

「まとめて作る方が楽なら後でもいいニャ!」

店主が聞いたのはケータくん。『魔道石』を作る順番か。考えてなかったな、すまない。

了承を得た店主が屋台の奥から丸めたラグのようなものをゴザの上に敷く。『菱形錬成陣』だ。

「何属性にする?」

ん~~、形がわかってるのだと土、水、雷、木、毒、闇、火。

『属性銃』にするなら闇だけど、闇はロアンがいるしな。他の属性にするとしたら、雷が強そうだ。でも『属性銃』を2つ、一気に作る予定はない。いくらなんでも予算オーバー。

魔道杖も欲しい。農業用に結構、魔法使うし。となるとやはり土か、それか木も『グロウシード』で使う。うーん、悩ましいな。

せっかくオーダーメイドするんだから、自分では難しそうな木属性にしてもらうか。

「オーバルで木属性にするにゃん!」

「木属性ィ? そりゃまたマイナーな…」

呆れた顔をしつつも、店主は陣の中心にオーバル(楕円)の『 宝硝子(ビジュー) 』を置いて、菱形の頂点となる4点に魔法玉らしきものを置く。

色が全部白だから魔法玉だと思う。ほほー、プールポートに『ビー玉』じゃなくて『魔法玉』を使うことも出来るのか。そういえばプールポートとなるアイテムは末尾に『玉』がつく、て話があったっけ。すっかり忘れてたな。