軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

13.蝶よ花よ

かくしてバタピーは羽化した。

何処から?

…土の中から!!

たしかに畑は上を全部刈り取ったあと、耕しはせず放置していた。でも『ハーヴェスト』かけた畑に残ってるとは思わないじゃない。まさか地下は無効だったなんて。それとも『ハーヴェスト』に殺虫効果はなかったということか?

カウントダウン終了と同時にデデンと畑の中央から這い出してきた巨大芋虫のシュールなことよ。セミか? そんな生態ある???

そしてサイズでいうと幼虫の状態ですでに3mくらいある。

タレイアさんは顔を覆って天を仰いでいる。こ、これはちょっと予想外のサイズ感。

猫も掲示板で見たことのあるキングモンシラは3mくらいだったから、そのくらいかな?て思ってた。幼虫(サナギ)から成虫はだいたい倍くらいになるので、前翅長で6mくらいかな……。わあ。

そしてあっという間にサナギになって時が経過していく、早回し動画のような展開。

掴まるところのないサナギは通常、羽化に失敗するものだが、このサナギ、どういうわけか空中にしっかり縦になっている。

「ないわあ」

「何がなんでも蝶を出そうという運営の気概を感じるにゃん」

「気持ちは認めよう。だがもっとこう、なんかあるだろ!!」

例によって羽化するまではBOSS登場ムービーとなっており、やいやい文句を言うくらいしかすることがない。いや、バフとかみんなかけてるけど。

猫も自分のPTを従魔法で支援。それくらいしかやれることがない。今回の猫、やることなにもないのでは? 投擲出来ないなら『パウダー』要員にもなれない。くう!

猫が悔しがってる間にも巨大な蝶はズルズルとサナギから姿を現し、みるみる間にしわしわの羽根を伸ばしていく。……なんで触覚がクシ型なんだろね?

「モンシロ系じゃないにゃん」

「ていうか蝶じゃない」

「モスラじゃん!」

「モンシガ!!」

「あれ、蛾になるってことだったんですか?」

「たぶん違うけど結果的にそうなってる」

「モスラじゃん!!」

大事なことなので以下略?

羽根は真っ白に黒い斑紋、触覚はふさふさ、あんよモフモフ系。これで小さければなかなか可愛いと思うのだが、いかんせんデカイ。見上げるほどデカイ。わー、なんだこれ。

「ああ、なんということでしょう…!」

「整ったのか神父!」

「錬金術師のもたらした禁忌が生命を歪めてしまったのでしょう…! この邪悪な波動…哀れな…!」

「邪悪な波動ってなあに?」

「この胸のざわめき……、これが…邪悪な波動……?」

「生理的嫌悪ちゃう??」

しっかり神父ロールを挟んでくるアベルさんは偉い。

それにしてもこんなん、孤児院の狭い畑で戦えないぞ、と思ったらBOSS登場ムービーが終わると孤児院の畑が巨大化した。

一面に広がる畑は実際の孤児院同様、収穫後の姿を留めているところもあれば、雑草の生い茂っているところ、耕した土の状態で放置されているところもあり、さまざまな姿を取り揃えている。

「どういうこと!?」

「やったあ思う存分戦えるね!じゃねえんだわ」

「戦闘フィールドが用意されてるならBOSS登場前に転移しろ!!」

それだ。サナギを見つけた瞬間に移動してくれればまだ納得感もあったものを!

やいやい文句を言えていたのもそこまでで、モンシガ(?)が羽ばたくと強風が巻き起こり、煽られて転びそうになる。ふぬぬ、頑張れルイ!

ラージは平べったくなって耐え、ルビーとレトは絨毯をしまいラージにぴったりくっついて耐えている。か、賢いぞ!

羽ばたきにはなにかデバフ効果が乗っていたようだが、何もわからんうちに癒され、ついでに回復されていた。手厚いヒーラー介護…!

羽ばたきが収まるとモンシガはふわりと浮かび上がった。同時に、その頭上へカウントダウンが浮かぶ。やはり時間内決着が必要になるらしい。

「短期決戦狙ってこー!」

「うえーい!」

「いきましょう!」

なお今回、タンクはノーカさん、アタッカーはタレイアさんとエンジェルさん、猫は遊撃(何も期待しないでくれ)、ヒーラーにユミーさん、アベルさん、アルミハクさん、タスクさんの豪華仕様。

PT分割はタンク1+アタッカー1+ヒーラー2のメインPTと、アタッカー1+ヒーラー2のサブPT。そしてテイマー猫(遊撃?)のソロPTだ。猫はルイ無しでの移動が困難なので、どうしてもPT枠とっちゃうから別動隊にしてもらった。

別PTとはいえ下手に的を増やすのは申し訳ない、とルビーとラージは留守番させようと思ったのだが、猫の回復担当になったアルミハクさんが「固まっていてくれれば回復は範囲ヒールだから、増えても問題ないよ。経験値稼ぐためにも出しておかないと!」と言ってくれたので、お言葉に甘えてフル面子だ。

経験値頭割りではなく、各自・PT割りにしてもらった。これなら猫PTの人数が邪魔になることはない。

まずは風の攻撃を耐えつつ、鱗粉を消し去っていくためにヒーラーたちがどんどこ雨のように『アンチポイズン』を降らせていく。

猫は完全にLV対象外なので、下手なことはせずに下がって観察だ。モンシガ、LV65相当だって。無理無理、溶けちゃう。

さてタレイアさんは…と見ると頭を抱えてイヤイヤしているところをエンジェルさんに引っ張られていっていた。す、すまない……。

程なくして『アンチポイズン』の雨が止み、モンシガは一回り小さくなった。模様がついてれば変化前変化後がわかりやすいらしいけど、残念ながら同じ白だし、モフモフなままなので、見た目の変化はサイズが変わり、デフォルメされた複眼が白から金色に変わったくらいだ。

「第二形態にゃん?」

「たぶん? キングモンシラにはない変化だね」

キングモンシラはBOSSではなくmobなので形態変化とかはないそうだ。ううん、モンシガは未知の敵なのか。

次に、エンジェルさんとタスクさんが濃霧をモンシガの周囲に放っていく。これで浮いているのを地面に落とすわけだ。しかし、モンシガが身震いするとせっかくまとわせた水が瞬時に散ってしまう。

「この毛、防水性能が高いぞ!?」

「うへえ、持久戦は困る」

「いっそ組み付きますか」

ノーカさんが拳を打ち合わせて言う。ノーカさんは格闘系か。

「やるならお供しますよ」

神父さんがにっこりと笑う。

二重人格設定とかじゃなくてスムーズに表裏なんだなあ、アベルさん。

「んやああああああ!!!」

バッサバッサと飛んでいたモンシガが近くに来すぎたのか、タレイアさんが絶叫しながら火を放った。

あ、燃える。

「…普通にそのままで燃えるっぽいですね」

「あー、でも燃えると上にいっちゃうのか」

「そして上ると鎮火」

ダメージは与えられているけど、微々たるもの。

「やっぱり落とさないとダメにゃ?」

「あのサイズの羽根じゃ組み付いてもそのまま上がりそうじゃない?」

「5人くらい乗れそう」

エンジェルさんたちが水魔法を当てると徐々に下へ落ちてくる。そしてぶるぶると水を飛ばし、火を食らうと上へ……。

「蓄積ダメージにはなってるけど、これで時間内討伐は厳しそうですね」

「考えてみりゃモンシラって時間かかるけど安全な倒し方があるmobだもんなあ。時限付きは思ったより難易度高いわ」

「にゃあ…」

などと言っていたら何度目かの飛翔でモンシガが力強く羽ばたき、炎を反射してきた。

うええ、燃える!

「みぎゃあああー!!」

「『ファイアヒール』!」

すぐさまノーカさんが炎上ヒールで対応してくれたが、モンシガの回りには竜巻のようなものが発生している。

「やっぱり『ウィンドカーテン』持ってるかー」

「デスヨネー」

『ウィンドカーテン』は風属性の飛行mobのほとんどが持っているという魔法で、要は風のバリアだ。飛び道具と風、火属性攻撃のほとんどを無効化してしまう。

モンシガはこの状態で攻撃をうけると、反射からの反撃を行ってくるようだ。反撃はただの強風だったので、もし鱗粉が生きていたらデバフ攻撃だったと思われる。

「死ぬ気はしないが倒せる気もしないやつ~」

「ぐうう、今すぐ燃やしたいんですけど燃やせなくてェ…! いやああああ」

「どうどう」

ときどきくる強風をやり過ごしつつ、隙を窺っているとなぜかモンシガが地面に降りた。

「!?」

「なんだろ? でもチャンス!!」

タレイアさんとエンジェルさんが光り輝くほど大量のバフを浴びつつ、2人同時に火を放つ。

「『ファイアストライク』!」

「『フレイムタン』!」

無防備に火を食らったモンシガは仰け反り、そして燃えながら再び空へ羽ばたいていく。上ってしまうとやはり鎮火してしまうようだ。

「ああああ火力が足りないいい!」

「今のを待つしかないんかね?」

「時限戦闘でそれ確実な失敗ルートじゃない?」

「デスヨネー」

「にゃあ、ギミック戦闘の気配にゃん?」

「何か地面にあったのかも? ちょっと見にいこうか」

猫とアルミハクさんでモンシガの降りた地点まで行ってみると、雑草の生い茂る地点だ。しかし残念、燃えてしまっていてなにもわからない。

うーん、飛び疲れたとか? そんなことある?

「あ!」

「にゃあ?」

「もしかして花が咲いてたのでは?」

アルミハクさんの指差す先には、たしかに雑草が花を咲かせている。

「補給のために降りたっていうのはありそうにゃん!」

それなら猫にも出来ることがあるぞ!

取り出しましたるは『赤シスルの種』。シスルはアザミ、アザミは蜜が多くてバタフライガーデンにぴったりな花なのだ。つまり、モンシガもきっと好き! ……たぶん?

これを燃え跡の畑の土にパラパラと撒いて、『ピュリファイ』、肥料、そして『タイムパス』。

きれいな赤い花が咲いた。

「!! 猫さん危ない!」

「ランさん!」

モンシガが猫、というか『赤シスル』へ向かって急降下してくる。

んえええええ!?

あわてて下がるけど、これは間に合わない!

「――――『ポヨ』!!」

プワンと出てきたシャボン玉のような虹色の膜が猫を包みこみ、その次の瞬間、モニュッと外側からつつかれて弾けた。

ころんと投げ出される。

あいててて。

猫の前にノーカさんと神父さんが滑り込み、モンシガをぶん殴ってノックバックさせる。うわわ、吹き飛ぶモンシガのサイズがサイズなので地響きがすごい。

更に追撃する2人、突然に立ちのぼる光の柱、そこへ再びエンジェルさんとタレイアさんの火魔法が飛ぶ。フレンドリーファイアがないからこそ出来る巻き込み戦法。

そして一方、猫はというと……『ポヨ』って単体対象だったんだなあ。そしてどうやら、モンシガの突進は範囲攻撃だったらしい。

猫の後ろにいて偶然庇われていたレトとルビー以外、ラージとルイは倒されてしまった。にゃああ。

しかもラージに至ってはログを見るに猫を庇った形跡がある。ああああ、猫よりLV低いのに無茶しやがって…!

うううん、『ポヨ』はラージにかけるべきだったのかもしれん。む、むずかしいなあ!

ひとまず後退だ。久しぶりに徒歩移動すると猫、めっちゃ体力ない! すぐスタミナ切れちゃう!

失って更によくわかるルイのありがたみよ。全滅経験はそこそこあるけど、一部だけ倒されちゃうのは初めてで結構しょんぼりだ。

「猫さん、無事でよかった!」

「にゃああ、アルミハクさんも無事でよかったにゃあん!」

「ゴーレム消し飛んじゃったけどね~、猫さんの方まで守りきれなくてごめんね!」

「こちらこそ巻き込んじゃってごめんにゃん~」

「私の判断が遅かったからだから、そこは気にしないで」

話しつつも猫にバフをかけ直してくれる。ありがたや。さっきはなかった『スタミナアップ』が入ってたのにちょっと笑ってしまった。よわよわですまない。

そしてあまり間を置かずして、モンシガはノーカさんたちを振り切って空へ上ってしまった。でも結構ダメージは与えられたみたいだ。

さっき立った光の柱は『プランツ・サンクチュアリ』だったそうで、害虫にあたるモンシガには継続ダメージが入ったらしい。

「なぜ豊穣神は虫を捕まえておく術を我らに授けてくれなかったのでしょうか…」

「ほんそれ」

豊穣神、害獣特効の罠魔法はあるけど、害虫特効の罠魔法はないらしい。残念。

みんなと合流すると、タスクさんとユミーさんがルイとラージにそれぞれ蘇生魔法『リザレクション』をかけてくれた。従魔は召喚獣と違って、倒れたあと5分間その場で光の玉になって留まる。その光の玉があるうちは蘇生待機時間なのだ。蘇生魔法を受けるの、初めて。ありがたや…!!

復活したルイとラージが猫の元へかけてくる。わああ、ごめんよ~~。後でいっぱい労わねば。

「ありがとうにゃん~!」

「なんの、死んでも生かすのがヒーラーというものですたい」

「守れなくてごめんねえ!」

「こっちが不注意だったにゃ、申し訳ないにゃん~」

「そういえばさっきの花はなんだったの? 有効だったみたいだから、再現性があるかもうちょっと詰めたいわね」

「あれはアルミハクさんからもらった『赤シスル』にゃん。たぶんチョウチョが好きな花にゃんね。もう一度やってみるにゃん?」

「『タイムパス』で種から一気に育てたってことよね? ノーカは『タイムパス』使える?」

「いけますよ。俺が育てるのがいちばん安全でしょうね。ただ、種は持ち歩いてないです」

「種ならまだあるにゃん!」

貰い物の種で、まだ増やしてなかったからちょっとしかないけどあと2回分くらいならある。もらえたのは農家神官たちのおかげなので、ここで使いきっても惜しくはない。

作戦としてはノーカさんが『タイムパス』で育てて『赤シスル』を開花させる。降りてきたタイミングでノーカさんと神父さんが迎撃、ノックバックさせたところで他神官で『プランツ・サンクチュアリ』(植物のあるところであれば使用可能)、エンジェルさんとタレイアさんで火魔法。

猫は種やらなんやら提供するだけ!

あ、いや、待てよ? 元がモンシロチョウならそういうこともある? うまく行くかはわからんが、念のためやってみる価値はあるのかも。アレがついに役立つときがくるか!?

「相談があるにゃん~!」