軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

11.神は見ている

キングモンシラは風と毒属性、地属性無効の風属性回復。水属性で弱らせると地上に落ちるので、落ちたらフルボッコ出来る。逆にいうと落とさないと風バリアが強くて近づけない上、飛び道具無効となかなか厄介な相手らしい。

火属性で燃やすのは有効だが、これも風に煽られて畑が炎上、地獄絵図になりペナルティーが入るため、あまり推奨されない。今回は刈り取ってしまって畑は空なので、その点では安心だ。といっても風バリアが有効な内は本体を燃やすのも難しいそうな。

つまり水で弱らせてから燃やす一択?

『水もね、モンシラならいいけど、キングモンシラは毒属性持ってるから、土が汚染されるのよ』

『にゃあ、厄介にゃん』

モンシロ残党探索中、キングモンシラについてPT会話で教わっている。

もしキングモンシラより格上のが来るとなったら更なる増援をお願いしたいところだけど、風属性無効・飛び道具無効ではフーテンさんたち一行を頼るわけにもいかない。

火属性なら硝子連合だけど、今は忙しいだろうしなあ。強火で虫を燃やすといえば連合のタレイアさんを思い出すが、彼女は虫嫌いだし呼ぶのは酷な気もする。……いや、足が多くてウゾウゾしたのが苦手なだけで、チョウチョはオッケーな可能性も??

『本体に『アンチポイズン』かけまくるときれいなチョウチョになるんだよ』

『きれいなチョウチョ』

鱗粉が毒なので、『アンチポイズン』で除去し続けると透き通ってくるらしい。そうなったら水をかけても問題なくなるそうな。

意外と持久戦なのかな?

『ソロだとアレしてコレしてって面倒だけど、風で薙ぎ倒そうとしてくるだけで攻撃力は高くないから、他のキリキリみたいな痛いやつよりマシだよ』

『キリキリやべえもんな』

キリキリは畑に植樹していると現れる害虫の一種で、見た目は30cmほどのカブトムシ。見つけたと同時にドリルのように突っ込んできて角に刺されるというバイオレンスな虫らしい。農家はLVが上がるにつれてもれなく畑でデスするようになるそうだが、その原因の上位にあげられるのがキリキリだ。「畑の暗殺者」の異名は伊達じゃない。

ちなみに果樹園はまさにサバイバルだそうで、出荷までのあいだ延々と迫りくる害獣と害虫と戦い続けねばならないらしい。その分、畑産の木材と果物の販売価格は大変お高い。

『そういえば食糧危機は、木材には影響ないにゃん?』

『もちろんありますよ。自由都市は特に、高級木材の産地ですから。食糧と違ってわりと後々まで尾を引きます』

『自由都市産の木材は家具用とか建材だから装備品にはあまり影響ないけど、家具類の値上げがえげつなくなるのよね~』

『ああ!? 家具の謎のインフレそのせいだったんだ!?』

『特産だから、全都市の高級家具に影響がでる』

そういうのもあるんだなあ。お祭り騒ぎで稼ぎ時な分、取るとこではしっかり取るってことかね。

あちこち孤児院内を探しているけど、今のところモンシロも幼虫も見かけていない。もちろん小さい生き物(といっても15cmはある)だから見逃してしまってる可能性もある。

チョウチョ相手ならレトも探索にお役に立てるかと思ったが、残念ながら孤児院内はあちこちにネズミ取りが仕掛けてあるらしく、安全のためマルモによる探索はあきらめた。モンシラの幼虫、場合によってはマルモサイズのもいるしね。

それにしても全然見つからない。やはり何かしらイベントを取り逃がしてしまっているのだろうな。ノーカさんの言ってた、子どもが幼虫を隠してしまっていたような、そういうのがある気がする。

そういえば、アベルさんも「ヤツには因縁がある」とかいってたし、それってたぶんモンシラにってことじゃなくて、孤児院で何かあったんじゃないだろうか。聞いておけばよかったな。

いや、アベルさんはPTチャットで発言がなかったし、そっちの対応は自分でしてるか。

ぷらぷらと歩きながら探索していると、小さな礼拝堂のような場所に辿り着いた。あれ、この祭壇、豊穣神じゃないな?

「おや、ランさん」

「にゃあ、アベルさんにゃ。チョウチョ見つかったにゃ?」

祭壇裏からアベルさんが出てきた。どっから出てきてるんだ。猫は突っ込まんぞ。

「ネズミを探していました」

「にゃん?」

なんでネズミ??

首を傾げると、アベルさんはフッと小さく息を吐く。

「その様子ですと、ランさんは組織を追って孤児院へ来たわけではないのですね」

何の組織!?

アウトローなお話か? 踏んでないから違うと思います!

「猫は『咳止め飴』を売りに来たにゃん~」

「そうでしたか。私のときはモンシラ騒ぎは人為的に引き起こされたものでしたので、そちらの線を探っていたところです」

「にゃん!?」

食糧危機を人為的に起こしたい組織(?)があったってことだろうか。

たしかに、そういうのもありそう!とか思ってしまったけども。

「なんでも錬金術師の手掛けた『作物を大きく育てる研究』が虫にも作用してしまったとか。それで虫にも使えるということは他の生物にも使えるのでは、と虫から始まり、動物実験、そして人体実験へと繋がっていくチェーンクエストでした」

「にゃ………」

ば、バルトロさんんんーー!!!?

孤児院で渡してたやつコレか、もしかして!!

「猫、クエストは踏んでないけどその話にはすごく覚えがあるにゃん……」

「おや」

かくかくしかじかにゃん~と説明するとアベルさんは目を閉じて聞いてくれ、そしてうなずいた。

「なるほど、ポーツからきた錬金術師」

「悪気は全然無さそうだったけど良いことだと信じきってそうではあったにゃん」

「ふむ…、 性質(たち) の悪い」

こぼれ落ちる低い呟きが不穏。猫が悪いわけじゃないけどなんだか気まずい!

「こっ、この祭壇は豊穣神じゃないにゃんね?」

「こちらは名を忘れられた古い神の祭壇だそうです。以前聞いた話によると孤児院は、古くは神殿であった建物を改修して建てられたとか」

「名を忘れられた…堕ち神にゃ?」

「祭壇には神像がありませんので、なんとも」

なんかこういうのって邪神召喚とかしそうなあれこれに見えちゃうけど、大丈夫? そういうのはなさそうな感じ?

ちなみにこの世界の神さまは加護持ちにはフレンドリーなので、供物を用意して時期や場所をあわせてお名前を呼ぶとハーイて出てきちゃうこともあるそうな。出てくるだけですぐ帰っちゃうらしいけど。そして神官と違って、1回こっきりっぽいけど。

祭壇に描かれているのは幾何学的な紋様で、それが何を表しているのかはちょっとわからない。『錬金術』の神とかだったら面白いのにな。

自由都市は『錬金術』の本家だから、神がいてもおかしくはないはずなのだ。でも、いない。本当にいないのか、どこかへ行ってしまったのか。ちょっと気になるところ。

「もし薬が関係しているのであれば、シスターが知っていそうですね。一度聞いてみることにします」

「にゃ、この祭壇の裏は何処に繋がってるにゃ?」

シスターとのお話にご一緒するのもいいけど、未探索ゾーンがあるなら先に回ってしまっておきたい。一応、同じ場所でも2人はチェックした方がよさそうねって話してたしね。ダブルチェックでモンシラを逃がさない方式。

「祭壇の裏は地下へ繋がっています。下水道ですね」

「すでに外へ逃げちゃってる可能性もあるにゃん?」

「地下道には虫の侵入を拒む罠が現役で動いてますので、その心配はないと思います」

……。

虫ってチョウチョとかの虫だよね? アベルさんの仮面のような笑顔から発せられると有象無象のなにかを指してるような気がしてきてしまう。ネズミも隠語だったのだろうし。

暗黒面とかいうだけあってアベルさん、わりとアウトロークエスト踏んでるっぽいもんね…。

うむ、解釈一致です。猫、そういう神父さんイイと思います!

「いかない方がいいにゃ?」

「『罠感知』がないならおすすめしませんね」

「にゃあ…。残念にゃん」

『罠感知』は探索者の実績解除スキル。召喚獣や従魔で持つ人もいるので必須ではないが、ソロなら持っておくと吉なスキルでもある。 漢(おとこ) 解除(あえて踏んで潰す)派も多いようだけどね。

猫も悩んではいるんだよね。ダンジョン行くなら取った方がいいんだろうけど、ダンジョン行く予定がないからと先送りしている。

「シスターとのお話、ご一緒させてもらうにゃん~」

「はい。では参りましょう」

シスターに聞いてみたところ、やはり錬金術師バルトロさんからもらったのは植物を巨大化させる薬、その名も『デッカクナール』だった。わかりやすさに全力投球したネーミング…!!

この薬は使うと作物を大きく育てることが出来て、孤児院の小さな畑でも子どもたちの食い扶持を賄うことが出来ていたのだとか。

とはいえ、シスターはかつて起きた『食糧危機』について知らなかったわけではあるまい。

『食糧危機』のようなゲーム世界全体に影響あるクエストは世界の歴史に刻まれるので、NPCもそれについて認知するようになる。そしてその事件によって起きた変化はその後も継続して続くように出来ている。

なのでシスターは、『食糧危機』が再び起きるかもしれない危険性を認知した上で使用していたことになる。

「代替わりしていらっしゃいますが、あのような事件を伝えていないわけがありません。まして、あなたはこの薬に辿り着いた。孤児院の記録から知ったのではありませんか?」

「そ…、それは…」

刑事ドラマで見たことあるやつだ。

探偵アベルさんに追い詰められたシスターさんはがくりと肩を落とし、小さくうなずいた。

「その通りです…。しかし先代の孤児院長の犯した罪から、私たちは自らの手だけで立ち上がる必要があった…!」

「そのためなら自由都市を巻き込む災害が起きても構わないと?」

先代の孤児院長の罪ってなんだろ。なんか話が猫の上でぴゅんぴゅん進んでいく。

「ではどうしろと!? どう説明しても我々は人身売買の温床ではなくむしろ被害者だと、誰も信じてはくれない…!」

…人身売買かあ…。

やたらと孤児が小さい子しかいなかったのは、それでなのだろうか。もしかして邪神召喚イケニエ的なイベントもすでに起きてもう終わってたりする?

しかしこれだけ突然にダークなクエストがいろいろ生えてくるとなると、猫はどこかでフラグ踏んじゃったんだろうか。それか、ニンジャが悪さしてるのか。いやいや、今回に関していえばだいたいバルトロさんのせい。

「神はすべてを見ていらっしゃいます。あなたの行いも、都市のひとびとも、すべてを」

猫がぼんやり考えている内にアベルさんはなんか強引にまとめへ入っている。

「孤児院からバタピーが羽ばたけば、再び人の口へ上るでしょう。あなたたちは今度は、薬の温床になったと退けられる。それがあなたの選んだ道です」

「あああ…!」

泣き崩れるシスターさん。よしよしする猫。

「神は、すべてを見ていらっしゃいます。だからこそ、我々を今、ここへ導いたのでしょう」

「ファーザー・アベル…」

「我々は羽化を防ぎます。万が一羽化に間に合わなかったとしても、かの災いの蝶が飛び立つことは許さない」

いい感じにまとめられようとしている…!

「……だから教えてください、薬のありかを」

あれっ、そっち!?