軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

9.孤児院

にゃふふん、不良在庫気味だったアイテムが片づいたので気分がよい。新しい不良在庫が出来ただけなんて気のせいよ。

調薬ギルドへ行って納品……は、やはり飴は出来なかった。残念。

「にゃあ~…」

「もし安くなってもいいのであれば、孤児院へ持っていってあげると、喜ばれますよ」

「孤児院にゃん?」

おや、孤児院を見つけたことでフラグが立ってる?

「はい、子どもが多いのでどうしてもこの時期は風邪が流行りやすいらしくて。子どもは薬を嫌がるので、広まってしまうことがあるとシスターがよく嘆いてますから」

『飴玉』系のレシピは『料理』分野だそうだ。なので調薬ギルドでは引き取れない。しかし料理ギルドも薬効果のある飴は買い取れないとあって、ままならないところなのだそう。

中途半端で役に立たないアイテムかと思いきや、風邪の引きはじめに使うと効果を発揮するので、常備薬としては優秀なんだって。

買取出来ないのはギルドシステムの穴なんかな? ゲーム的にはとってもクエストアイテムの香り。

孤児院はちょっと気になってたので、ちょうどよいや。

「寄ってみるにゃん~!」

来たぞ孤児院。

一応掲示板と攻略サイトで調べてみたんだけど、孤児院が関係するクエストはいろいろあるらしく、入ってみないことにはどのクエストが発生しているのか不明なようだ。

前提クエストを一通り見てみたけど猫、身に覚えがない。お使いクエストくらいしかまともに踏んでないからなあ。

ちまちま細かいのは踏んでるんだけど、このゲームのサブクエストって進行中はともかく終わっちゃうとログがわかりにくいんだよね。地名・番号になっちゃう。そしてエンドによって番号が違うらしくて攻略サイトと照会しづらい。

踏んでる人の多い――メリットの大きいクエストなんかは結構解明されてるけど、今のところ何も得るものがない、あるいは他に代替可能なクエストは放置されてたりする。趣味クエってやつですな。

孤児院は趣味クエの最たるものらしく、フラグが面倒な割に、クリアしても得るものは特にないみたい。だから不明点がまだまだ多いそう。

猫の場合は、特に系列のクエストを踏んでるわけではないみたいだから、孤児院に入れるフラグを踏んだだけっぽいかな?

……ちなみに孤児院フラグが派生する条件で猫が踏んでると思われるのは「関係が良好な自由都市NPCが10人以上」かつ「現在関係が拗れている(または好感度が著しく落ちた)NPCがいる」だ。…くぅ、本屋さん……!!!

しかし孤児院の困り事を解決するとこのNPCと仲直り出来るかも?な話もあり、その点でも猫はぜひ孤児院に行きたい。下心満載なよこしま猫ですまない!

それではいくぞ。

たーのもー!

門扉が開いた、と思ったらコンニチハしたのはイモムシだった。

お、おお……???

大変イモイモしいイモムシさんですね…??

猫と同サイズの芋虫にはさすがに猫もびっくりするしゾワッとする。せめて半分サイズならまだよかったんだけど、てなんで芋虫?

「こ、こんにちはにゃん…??」

声をかけると頭をぐいんぐいん振る。い、威嚇されてる? これ大丈夫なやつ?

「アーッ! すみませんすみません!」

遠くから慌てた女性の声が聞こえる。

「そのイモムシ逃がさないでください~! 区画から逃がしたらとんでもないことになってしまいますー!!」

「にゃん!?」

えっ、捕獲か!? 無茶を言いおる。

「 生死は問いません(デッドオアアライブ) です!!」

「了解にゃん!」

それなら出来ることがなくもない!

猫が持つ最大火力といえば『ライトニング』。しかしこれ、貫通なんだよね。街中で撃つには危険すぎる。

ならばそう、生活魔法ではないリミッター外してある方のスタンガン魔法『 雷(ライ) 』しかあるまい。

食らえ、最大出力!

バヂィ!! とまばゆい発光と共に激しい音がして、無事に芋虫を丸焦げに出来た。おお、倒れてもでかい……。

いやはや至近距離にいてよかったのか悪かったのか、これ以外だと殺傷能力のある魔法って猫、持ってないかもしれない。

ルイに行けとは言えないし、ラージはタンクだし、レトは回復、ルビーは補助だし。ううむ、咄嗟の攻撃って難しいね。

ぷすぷすと煙の上がる芋虫を眺めつつ反省していると、女性が走ってきた。

「はあ、はあ、た、大変申し訳ありませんでした…! ありがとうございます!」

「芋虫倒してよかったにゃん?」

「今、駆除をしていたところだったんです。それで逃げられてしまって」

「ならお手伝いできてよかったにゃん!」

女性は孤児院で働いているシスターで、今は畑で大発生してしまった蝶の幼虫を駆除しているところらしい。

「いつもなら卵から孵化するのはモンシロバタピーのはずなんですけれど、巨大な芋虫が出てきてしまいまして。しかもすごく早くて、あっという間にカンラ菜の畑を食べ尽くされてしまいました」

「にゃあ…」

猫それ、掲示板で見たことある…!

「モンシラバタピーってやつにゃんね~」

農家スレでたまに話題になるやつで、畑の受粉のために一部カンラ菜を育ててモンシロバタピーを呼んでいると、何代目かで巨大化したモンシラバタピーが出てきてしまう…という話だったはず。

「完全に倒しておかないと、次はキングモンシラっていう更に巨大なバタピーになっちゃうって聞いたにゃん」

「な、なんということでしょう…!」

大半は駆除出来たけど、まだ残ってるバタピーもいるらしい。しかしもう食害されるカンラ菜はなくなったので、そこまで危惧する必要ももうないのでは、という意見もあり、ちょっと休憩してたんだって。そしたらこっそり外へ逃げようとしていたモンシラと猫が出会ってしまった、というのが現在らしい。

うーん、どうなんだろ?

スレで見たやつは、畑を全部食べられたって書いてあったんだよね。全部カンラ菜だったってことはないだろうから、何でも食べるようになるんじゃ? でも猫も実際体験したわけじゃないからなあ。

聞いてみよ。

『モンシラ幼虫が出た畑からヘルプが出たにゃん~、カンラ菜は全部食べられちゃったけど、幼虫はすぐ倒さないとダメにゃ?』

ちょうどこの前メールしたところだったので、宛先はノーカさんにした。

『モンシラは放置するとすぐ蛹化羽化して次の世代になるので駆除必須です。終齢まで育たなかった幼虫は体の割に小さめの蛹になってモンシロバタピーサイズで羽化しますがこいつの卵からもキングモンシラが生まれます。油断大敵です。キングモンシラは種類関係なく畑の緑を全部食害します』

超早口かつ秒で返信が来た。危機感!

『放置絶対ダメなやつにゃんね! ありがとうにゃん~!』

『自由都市のレンタル畑ですか? 駆除手伝いましょうか』

『にゃん~、孤児院の畑にゃん』

『孤児院………、もしかしてランさん、まだLV30以下です?』

『以下にゃん』

『それたぶん『食糧危機』っていうインフレイベントのスイッチクエストです』

『にゃん!?』

猫、なんか踏んでた!?

インフレイベントとは『革命』とも呼ばれる特定アイテムの取引価格がNPC間で変化するイベントだ。そしてこれでいちばん大きいのは食糧だそうだ。『粗麦粥』でさえ値上がってしまうのでスラムの暴動イベントなども起き、結構なお祭り騒ぎになるらしい。

お祭、といってしまうのはこのインフレイベント、実は都市限定なのだ。つまり別の都市から食糧の輸送が可能なのである。人間倉庫である マレビト(プレイヤー) たちにとっては金銭の稼ぎ時であり、好感度の稼ぎ時ともなる。

当然だが『食糧危機』はそう簡単に起きては困るイベントのため、フラグは複雑、ついでに比較的低レベルでしか踏めないように設定されているそうな。

……猫、『不思議な探索者』も持ってるし変な運があるんかな……。

『そのまま進めてもプレイヤー的には祭になるだけなんで問題ないですが、クエスト的には畑が壊滅的な被害を受け近隣へバタピーたちが旅立っていく…という終わりかたになるはずです』

『にゃ、にゃあ…』

それはめちゃくちゃ後味悪いやつでは!?

『そこで提案なんですが、ランさん。救援を出しませんか?』

『にゃあ? 助けてくれるにゃん?』

『これはむしろ俺の都合なので、断ってもらっても構いません。その方がプレイヤー的には喜ばしい事態かもしれませんし。ただ、実は俺もそのクエスト踏んだことがあるんです。当時のリベンジも兼ねて、参加させてもらえればと思いまして』

やけに詳しいと思ったら経験者とは。しかしそれなら実に頼もしい、経験者の力添えがあれば百人力というもの。

『もしかしたら救援無効かもしれませんし、救援にいっても結果は変わらないかもしれません。ただイベントが長引くだけかも』

『それでも出来ることがあるならやっておきたいにゃんね~、是非お願いしたいにゃん!』

『ありがとうございます。おそらく孤児院内はすでに個別インスタンスになってると思うんで、一旦救援のために孤児院を出てもらっていいですか? 外へ出てもクエスト無効にはなりませんから』

『了解にゃん!』

早速、シスターに断って孤児院を一旦出る。

救援は可能だった。

孤児院の外でやってきてくれたノーカさんを回収、孤児院へ戻ることが出来た。もし救援不可だったら『クエストを破棄しますか?』という表示が猫に出るはずなんだけど、出なかったもんね。

『駆除ってことは戦闘になるにゃ?』

『はい。まずはモンシラ幼虫の駆除になります。そのあと、俺のときはBOSSとしてキングモンシラが出ましたね』

そもそもこのイベント自体がソロじゃないと踏めない上、BOSSのキングモンシラはソロでの推奨LV50と格上も格上、負け確イベントだったらしい。

うーん、踏んだが最後、起きるべくして起きるやつだったのかもね。

『にゃあ、駆除の手が追いつかないパターンにゃ?』

『はい。なので農家連中にも声をかけてみます。モンシラ駆除なら慣れてますから』

『手練れの農家神官参戦は頼もしいにゃん~!』

目指せモンシラ拡大阻止だ、やるぞ!