軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

6.魔道杖を求めて

しかし魔道具が精霊装身具を参考に作られているのは意外だった。

てことは、もしかしてレトの杖はそのままリューシーの魔宝石を加工無しで流用できたりする?

「精霊石を魔道杖に? もちろん可能だよ」

「にゃあ、猫でも出来るにゃん?」

「杖の製作には『木工』スキルが必要になるね」

知ってた! 残念!

でも『魔道工』ではないのか。それならエドさんに頼んでもいける? いや、エドさんは弓矢の製作が主で、杖の製作はそんなにしたことないんだったっけ。

杖職人の知り合いはさすがにいない。執事ことセルバンテスさんも木工職人だったはずだが、彼も矢師だし。杖職人って、純生産寄りじゃないとあまり選択しない道なのかもしれない。

「杖職人に頼んでみたのかい?」

「にゃん~、猫の腕前ではまだ早いみたいにゃん」

「上級杖職人に頼んだのかな? 上級の腕が必要な素材となると、確かにまだ早いのかもね 」

「素材を見てもらう前の段階にゃん。紹介状が受け取れなかったにゃん~」

「なるほど、上級は高級店が多いものね…。素材だけでよければ、僕が見ようか?」

もしかしたら上級杖職人じゃなくても作れるかも、とのことなのでお願いしてみる。

「『カーバンクルの魔宝石』か! わあ、たしかに素材は希少……だけど、質はそれほど高められていない…。うんうん、これなら中級杖職人でも十分、杖に仕立てられるだろうね。中級杖職人なら、僕の知り合いを紹介できるけど、どうする?」

「本当にゃ!? 嬉しいにゃん、ぜひお願いしたいにゃん~!」

ピロリンと電子音と共に紹介GPSが飛んでくる。んん? あれ、なんか最近見たことがあるような…? なんだったっけ。

最近……あ! 思い出したぞ、迷子の猫ちゃんが迷い込んでたおうちだ。いかつい木工職人のおじさんだったけど、爪研ぎ板を作って猫ちゃんを誘い出してくれたのだった。

猫好きおじさんとわかっているので頼みやすいぜ。

「ありがとうにゃん!」

ついでに属性銃についても聞いてみたけど、属性銃には指向性が必要なので猫の持ってる精霊石では無理だそうだ。残念、進化に期待ってことかね。

指向性というのは属性とその傾向のことで、例えば聖属性なんかは指向性がなく範囲型なんだそうだ。光や闇、回復、空間、時などもその傾向が強い。

ロアンは闇属性なので、そのままの精霊石では属性銃に出来ず、『魔道工』による指向性をもたせる加工が必要になるらしい。

ちなみにロニの属性はまだ判明していない。というか、まだ分化してないんじゃないかと思われる。『 宝硝子(ビジュー) 』に入ってもらおうとするとフラフラするし、ケータくんの精霊みたいに気に入って出てこなくなるとかがないんだよね。入れるのは何種類かあるけど、入っていたいほど気に入るのはないみたい。

白月の精霊なので光、回復、木、聖のどれかのはずなんだけども。『固定』『昇華』したら確定するんだろうか?

なお属性銃の製作には、『鍛冶』『木工』『魔道工』と複数の生産スキルが必要らしい。道理で自作の属性銃って話が掲示板にも出ないわけだ。…もちろん『錬金術』スキルが噛んでるからってのもあるんだろうね。

せっかくなのでその後もお片付けを少し手伝って、黄色い紐の封筒を台所から発掘した。なぜ台所に…。

中身は『薬草』の『圧縮』変化についてのレポートだった。新レシピではないけど、自分で実験せずに結果が手に入るのはありがたい。

薬草の亜種みたいな感じで『農業』でもこういう変化つけられるのかな?とか別の意味でも気になってくるレポートだった。軽くではあるが、何の素材になるかもメモがついていて親切。

猫としてはNPC錬金術師への弟子入りを目指していたんだけど、バルトロさん、全然まったく師匠っぽさないし、むしろ錬金術師仲間だね~みたいな雰囲気なので、弟子入りは無理っぽい。

というかバルトロさんにはNPCの、細々と世話を焼いてくれるしっかりした弟子がつく方がよいと猫は思う。台所を片付けていて思ったけど、この人、生活全般ダメな研究者タイプだ…!

「いっぱいお世話になりましたにゃん~。ごはんはちゃんと食べるにゃんよ~」

「はは、気をつけるよ。何か『錬金術』について面白いことがあったら教えてね」

こうである。うん、これはマルコくんが心配するのもわかりますな。叔父さんはダメな大人だったよ…。

お世話になったお土産に、『串焼き』を贈っておいた。インテリは肉を食え、肉を。

杖職人に会うぞ!

ということで再び街歩きである。前に猫探しクエストで一度行ったことがあるし、その頃には『地図製作』スキルも取ってたので道も万全。お、こっちのが近道。こういうのがわかるのも面白いね。

孤児院前を 三度(みたび) 通る。そういえばバルトロさんが孤児院で何を交換していたか聞きそびれちゃったな。でも聞くと尾行してたみたいで印象悪いじゃん? いや実際、後つけてましたけども!

はい。謎は謎のままでいいか…。いずれ孤児院を実際に見たことがフラグになってどこかでクエストが生えるんじゃないかと期待しておこう。

杖職人のお名前はロメオさん。イタリア系人名が続いてますな。親戚なんかな?

自由都市(マケット) はドイツ系が多かったりと、なんとなく都市それぞれでぼんやり名前の系統が違ったりするんだよね。これはこれ!と明確にわかるほど猫も詳しくはないんだが。

種族系統でいうとルイネアは長めの名前で造語っぽい名前が多い、とかいろいろ設定があるっぽい。

風猫族は短めの名前が多いが、本名は長かったりするらしい。しかし本人も忘れていて覚えてないパターンが大半なのだとか。名前が長いのは妖精族あるある。

さて、杖職人ロメオさんの家に到着!

鳩ポッポ商店街の木工店だ。どちらかというと家具店の様相。ここで杖を…? とちょっと腰が引けるが、ちゃんとGPSに杖職人って書いてあるので信じるぞ。

「『魔道杖』か? 『魔道石』さえ用意したら杖は用意してやれるぞ。ジジイの 手遊(てすさ) びで構わんのならな」

すでに顔見知りなこともあり、話が早かった。ジジイとか自称してるけど、髭面なだけでそこまでお年なわけじゃないらしい、と猫探しのときの噂で聞き及んでいる。突っ込まないけどね!

「にゃあ、『精霊石』でも大丈夫にゃん?」

「もちろん構わんよ。どれ、見せてみろ」

フヨフヨと家具店を探索している2匹を呼び寄せ、レトをもにゅっと掴んでロメオさんに差し出す。メニューから召喚獣の装備を剥ぐことも出来るんだけど、とりあげると絶対後で拗ねそうなので。

「この子のペンダントの石にゃん」

「おやまあ、贅沢させて」

カラカラと大口を開けて笑う。レトは彼が杖職人だとわかるのか、自分からペンダントを取って差し出した。察しがよい。

リューシーの入った石をためつすがめつ確認したロメオさんはうなずく。

「こいつはいい石だな。雑な魔力が抜けて透き通ってる」

「にゃ、精霊が入ってるからにゃ?」

「そうだな、それもあるが、『カーバンクルの魔宝石』にしてはやけに精霊の属性が研ぎ澄まされている」

精霊は生まれによって属性傾向を持っているが、単一属性の精霊というのは非常に稀らしい。そして属性が研ぎ澄まされているほど強い。これを擬似的に得るべく、人の手を経て昇華を繰り返すことによりそれに近い精霊を生み出すのが『精霊使い』の腕の見せ所でもあるそうな。

そして『カーバンクルの魔宝石』は、元のカーバンクルが多重属性なのもあって入れる精霊は多いけど、その分精霊も石に影響されて多重属性になりがちらしい。

リューシーは『カーバンクルの魔宝石』に入ったから時属性の性質を強く帯びたんだと思ってたけど、どうやら元々リューシーは時属性だったようだ。だから魔宝石からその属性を引き出したんだろうって。そうだったのか…。

そういえばリューシーは運送神からもらった精霊なので、運送神の特性である時属性を強めに持っていても不思議じゃなかったんだな。

しかし元々属性の強い性質を持っているからといって、『カーバンクルの魔宝石』に入っていてなおこうなのは珍しいらしい。

「何か特別なことをしてるのか?」

「にゃん~、特別かどうかはわからないけど、 部屋(マイルーム) に入るとよく抜け出て 青月明(あおつきあかり) に入ってるにゃんね」

「あんまり珍しい話じゃねえなあ」

「あ。その青月明は浄水の水桶に沈めてあるにゃん。こう、下に水晶石を敷きつめて」

ロニの住処の予備にしてた『白月明』を載せる小皿を買ったときに、店主さんから水晶石を敷くといいって言われたんだよね。そしてその通りにしてたら、ロニが小皿もいいけど水桶も入りたい…みたいにうろうろしてたので、水桶に水晶石敷き詰め計画を頑張ったのだ。めっちゃいっぱい入りました!

「浄水に水晶石か。そりゃ贅沢なこった。今度その水晶石をしっかり見てみるといい、抜け出た属性がたぶん入ってる」

「にゃあ~見てみるにゃん!」

めっちゃいっぱいあるから確認大変そう! でも属性入りの水晶石は、属性水晶という別アイテムになるのだ。ちょっと楽しみ。

「うん、上等だ。これなら魔道杖にしてやれるよ」

やったぜ。レトも万歳している。賢い。

素材の木は選べるそうだが、残念ながら猫は全然『木工』にもその素材にも明るくない。自分で入手したことのある素材は調べるけど、それ以外はさっぱりなのが仇になった。なにせ『伐採』もイベント用素材しか試せてなかったしなあ。

ロメオさんとレトのいい素材を選んでもらえればそれで、と丸投げしてしまった。あんまりNPC丸投げってよくないらしいんだけどね。

「この精霊だけじゃ、この石は大きすぎるようだ。杖は長く使えるように、いい木を使った方がいい」

「石が大きいと長く使えるにゃん?」

「そうじゃあねえ。石が精霊にぴったりなら、すぐ『昇華』して次の杖に行く必要があるだろう? それなら身の程にあった杖を使ってる方が、次の住まいが見つけやすいんだよ」

「にゃあ、上の素材を使うと成長しすぎちゃうにゃんね」

「そういうこった」

うーむ、精霊装身具だとそういうところも考えないといけないのか。いい杖であればあるほどいいってもんでもないらしい。たしかに次の住まいのことも考えておくのは大事だ。

それにしても、やはりリューシーだけでは『カーバンクルの魔宝石』は大きいのか。魔宝石は月の石ではないから、月夜を経ても成長しない。ということは、やはり他の精霊との『融合』を考えた方がよいのだろうなあ。名前をつけちゃうと融合は憚られるのだが、そういうわけにもいかないか。

悪魔合体!とかそういう感じのアレって、可愛がってた個体だと猫はいろいろ考えちゃう方だ。自我はどっちが優位なんだろうとか、それともどっちも消えて新しい人格なんだろうか…とかとか。

といっても、リューシーに限らず精霊はみんな吹き出しもほとんど出ないし、自我はまだ芽生えてなさそうではあるんだけどね。

んん、もし次に魔宝石に入ってくる個体がいたら、リューシーと『融合』してもらおうかな。

『融合』には同化率の上昇が必要になるだろうし、そうなると昇華まで時間もかかる。なのでおすすめされた通り長く使える杖として、いい素材で作ってもらうことにした。

『ベビートレントの若木』という木材で、レアmobの素材らしい。たまたま入手出来たが家具には不向き、杖にはよく、特に精霊装身具と相性のいい素材なんだそうな。うむ、高い! 加工賃と合わせて63万! ひええ。

ロメオさんちはそもそも家具屋で杖は趣味の道楽、手遊びに消費してしまうのももったいない素材、と長らく不良在庫だったそうで、ちょっとだけまけてもらって、60万で買えた。買ってしまった…。だってここで妥協しても仕方ないし。

魔道杖ってお高いんだなあ! もちろん素材の特殊さもあるんだろうけど、まあ武器だから当然か。中級からは武器がすごくお高くなるって話だしね。

しかしレトのパワーアップは実質、猫のパワーアップだ。よいよい。よきにはからえ~。

おお、猫の散財予算よ…、ここで散ってしまうとはなさけない…。

注文したらあとは例によって例のごとく、超速NPCクラフトによってあっという間に杖が出来上がる。

『カーバンクルの魔道杖』を手に入れた!

レトは『カーバンクルの魔道杖』を装備した!

テテーン! かっこいいぞ、レト。本マルモもご満悦である。