軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

15.錬金術と金のなる木・後

「戻ってきたねえ」

「一時はどうなるかと思ったけど、何事もなく終わってよかったわ」

「さすがにあれは階層深すぎて焦ったね」

わいのわいのと感想を言い合いつつ、もいできた林檎をみんなにひとつずつ分けた。

アイテム名はそのまま『ルイネの林檎』。

調薬や料理の材料として大活躍、更にイベントアイテムとしても引っ張りだこ。なおそのままNPCに売ってもお高い。お手軽換金アイテムといえよう。「NPCに売るなら俺に売ってね~」とフーテンさんに言われたけど。

「しかし久しぶりにみたな、ルイネの林檎」

「学園都市のどこかにはあるって話やったけど、まっさか図書館ダンジョンにあるとはなあ。あれどのくらいの深さなんやろな」

「6人PTの減衰有りで、マンドラコラ倒してランちゃんがLV11から14になったんでしょ? 相当深そうね」

「いや~経験値分割にはしてないよ。猫ちゃんLV上げたくないのわかってたし。だからマンドラは猫ちゃんのソロ討伐だねえ」

「それならLV減衰だけかな?」

LVにあわない敵を倒すと経験値が割り引かれる現象を経験値減衰、略して減衰と呼ぶ。

LVが低い敵だけを無数に倒しても経験値は減るし、LVが高い敵をPTの他の面子に倒してもらういわゆる養殖も経験値が減って旨くないのが減衰だ。純生産が茨道なのもわかろうというもの。

それにしても経験値が減ってる状態で3LV上がるって、なんだかとんでもない花を刈ってしまったな。

「よくよく考えたら人ん家の庭園荒らしをしてしまったにゃん?」

「いやいや、ダンジョンの中よ、ランちゃん」

「元々は管理されてた庭園かもしれないけど、今はダンジョンの奥地に飲まれちゃってるしねえ」

この世界で『ダンジョン』と呼ばれるにはいくつかの定義があり、そのひとつが 幽世(かくりよ) ――つまり異界と重なっている、ということだ。

マイルームのドアが開けない話とも重なるのだが、ダンジョンは多重に世界が重なった状態になっている。これを「界が安定していない」と言い、この状態になった場所を『ダンジョン化している』とも言う。

界の安定していない場所で新たな扉を開くと世界の侵食が広がる、と言われているので、安全のためにマイルームのドアは開かなくなっている、とかなんとか。世界観的な説明はそうなってる。

ダンジョン化してしまった場所の特徴として、その地は界を行き来している状態になるので、ダンジョン化したその瞬間から外部からの変化を受け付けなくなる。

要するに、自動修復状態だ。

どんなに破壊しても巻き戻るし、木の実を根こそぎ採取したとしても次の日にはまた生ってたりする。逆に壊れたものはどんなに修復しても次の日には巻き戻って壊れているし、どんなに整備しても滅びた庭園は戻らない。

それがメリットになる場合もあれば、デメリットになる場合ももちろんある。

…ルイネの林檎の木がダンジョン化してる、てなんか闇を感じる話だが。

メインクエストでその辺も出てくるんだろうか?

さておき、ダンジョンの庭園ならいくら採取しても元に戻るので気にしなくていい、というのが結論らしい。

はい。

採取ポイントがある~やった~て掘ったはいいけど掘っちゃダメなとこだったってパターンもあるらしいと掲示板で見てたから、ちょっと考えてしまったのよ。

フーテンさんたちの階層LV推理は続いている。

「そういえば、猫の採取LVでも、採取失敗したものがほとんどなかったにゃん。採取失敗すると雑草になるにゃん?」

「採取物の要求スキルLVか~。採取系はギャザラーしててもそう突出しないからねえ。採取の要求LVで階層は計れないかな」

あら、そうなのか。

『料理』や『調薬』を持っていると、初心者の頃に『採取』は取得する。初心者の頃には自力採取しても金が増えれば買うようになり、採取は自分が遠出したりダンジョンに行ったときに暇があれば採取スポットを採る程度になるらしい。なので戦闘職の採取LVはほどほどで頭打ちになり、大した差にはないらしい。

「俺は結構採ってる方だと思うけど、30台で伸び悩むっていうか動かなくなったな」

エドワーズさんは採取LV30台らしい。古参っぽい人でもそんなものなのか。

「いやあ、それにしても今日は面白かったわ~。SPも10入ったし、ほんとありがとうねえ」

「どういたしましてにゃん! 猫も楽しかったにゃん」

「あ、ラン。砂糖持ってくるからちょっとここで待ち」

解散の流れだったが、ヤマビコさんが料理の材料を倉庫から持ってきてくれるらしい。

「猫は待てる子ですにゃん!」

ヤマビコさんがマイルームへ帰って倉庫を見る間に、フーテンさんから初心者シリーズを受け取った。

「たくさんあるにゃん~! 猫もマケボで買ってるからお楽しみににゃん。そうそう、『初心者ラーニング手袋』は2回しか使えないみたいにゃん」

「お、使用回数制限付だったのね。まあ便利アイテムだもんね~。てことは猫ちゃん、『料理』前に破れちゃったのか」

「『文献調査』は技術スキルだったみたいにゃん。本読んでただけで手袋が破れたにゃん」

「『文献調査』も自由都市で取れたか~。時間制限ランプさえなんとかなれば、ここでも早いんだねえ」

「僕たちのあの苦労はいったい…?」

「先人とはそういうものさ…」

それから『初心者転移ポーション』をフーテンさんに見せる。

「ポーションとは??」

「転移石とかじゃダメだったのかね」

「これ、下級になるか試してもらってもいい?」

「もうポーションが尽きるにゃん~。買出しはするけど、ちょっと遅くなるかもしれないにゃん」

「あ、初心者ポーションも他の商人から預かってるよ。ただ量が多いから『運搬』持ちの猫ちゃんでもきついかもしれない」

「ルイの騎乗鞍は荷物も乗せられるにゃん!」

「散財しまくってるにゃん~! まあ確実に役立つもの買ってるし、いいかあ…」

猫はちゃんと趣味と実益を兼ねたものを買ういい猫にゃんよ?

「そうそう、ポーションといえば、万能薬を作るついでに各属性の実験もしておいたにゃん。結果からいうと変化があったのは回復と光だけで他は通常の圧縮potだったにゃん。これが変化のあったポーション」

「お、『下級万能薬』か~! これは新しいレシピかね?」

フーテンさんがポユズさんへ『下級万能薬』を渡す。

「知らないやつだ。ここから万能薬レシピ、イケるかも。ランちゃん、これ買わせてもらってもいい?」

「いいにゃん! ポユズさんは『調薬』にゃん?」

「僕とリーは『調薬』だよ。ランちゃんは『調薬』外しって聞いたけど、なんか必要な薬とかあったら気軽に言ってね」

ポユズさんは錬金術無しの調薬オンリーなのかな? いろいろなパターンがあるね。

「猫は『液体肥料』がほしいにゃん!」

「あ~、マケボには出てないだろうねえ『液体肥料』。肥料はこれまで買ってたの?」

「『雑草玉』を土に混ぜて耕すと肥料になるにゃん。土は買わなきゃいけないのが面倒にゃん」

「『雑草玉』にそんな使い道が…! 錬金術のスキル上げに作った『雑草玉』が倉庫に山ほどあるけど、ランちゃん使う?」

「ほしいにゃん! 結構量がいるから、作ろうと思うと大変だったにゃん~」

リーさんから『雑草玉』をもらえることになった。やったぜ。

『液体肥料』が手に入るとしても最初の土に混ぜる『雑草玉』は必要なのだ。

「猫ちゃん本当に手広くやってるね~。御入り用のものがあったらだいたい揃えられるから、気軽に声をかけてねえ」

「フーテンさんは魔道杖にゃん?」

「うん? そうよ~、俺は魔道杖」

「杖職人さんの知り合いがいるにゃん?」

「いるねえ。杖が御入り用?」

「指揮杖がほしいにゃん」

「猫ちゃん、ロマン砲するの?」

「そういえば、さっきの錬金術の本に書いてあったわね。錬金術は指揮杖が適しているって」

「そうにゃん。猫が取引してる職人さんに、猫が指揮杖を持つなら『ミミットホルン』か『青ブナの枝』の杖がいいってオススメされたにゃん。でもマケボにも露店にも売ってないにゃん」

「指揮杖はマイナーだから売ってないだろうねえ~。そのLV帯ならエドも作れるんじゃない?」

「エドワーズさんは『木工』にゃん?」

「エドでいいぞ。俺は『木工』と『革工』の『弓職人』。かといって杖がまったく作れないわけじゃないから、ミミットホルン辺りなら杖に出来るぜ。今から作らんでも、もしかしたら練習で作ったやつが倉庫に眠ってるかもしれん」

「にゃん! もしかしてスリングショットを作ってくれたのはエドさんにゃ?」

「この前フーテンが買ってった初級のやつなら、俺が作ったやつだな。俺は弓も使うけどメインはスリングショットだから、面白い弾が出来たら売ってくれよ」

わいのわいのと話していたら、マイルームへ行っていたヤマビコさんが戻ってきた。入れ替わりにリーさんとエドさんが倉庫を見にマイルームへ帰っていく。

なおポユズさんは『液体肥料』はクエストの必要分しか作ったことがないので、倉庫にもないとわかりきってるそうだ。今度作っておいてくれるって。

「お待たせ、砂糖とバター、牛乳、卵な」

「ありがとうにゃん! もしかしてわざわざ買ってきてくれたにゃん?」

なんかちょっと遅かったし、よく考えたら普段ヤマビコさんが扱ってる素材は私には素材LVが高くて使えない可能性が高い。

聞くとヤマビコさんにぴす、と額を突かれた。

「そこは気づいても言わぬが花やで」

「にゃん~! トマト栽培頑張るにゃん」

「おー。使う予定がないなら今持ってるトマトも買い取るで?」

「ミミット肉とトマトを交互に挟んで串焼きの予定にゃん」

「ええなあ、使うメニューが見えてんなら自分で使い。マンドラは買うわ。フーテン、精算したって~」

「はいよ~~」

フーテンさんにマンドラコラの査定をしてもらう。

ヤマビコさんが必要なのは根っこだけで、上の葉とか花はいらないらしい。いわく、花が開いてる菜っ葉は不味い。なるほど。

なのでマンドラコラの頭…頭でいいのか? ちょっと根っこの上の方を茎付で欲しい、と告げるとヤマビコさんがスパッと茎付で頭(?)を落としてくれた。

「もしかしてそれ、育てるんか?」

「元々、種が欲しくて花を咲かせたにゃん。でもマンドラコラなら、大根?だからアブラナ科にゃん。アブラナ科は自家受粉しないにゃん」

「ほう?」

「大根の種が手に入ったら隣に植えて受粉させるにゃん」

花が咲いたまま時間の止まるインベントリやら倉庫やらがあるからこそ出来る手段である。

「大根の魔改造」

「品種改良にゃん!」

「種が出来たら教えてねえ~」

精算するとシュガーマンドラコラの根はかなり高く、バターと牛乳と卵と砂糖を合わせてもお金が戻ってきてしまった。

「ほんとに合ってるにゃん??」

「ちゃんと相場だよ~、商人の『精算』はアーツなのよ。その手の誤魔化しが効かないから安心おし」

『精算』をするとNPC販売だけでなく、マケボや露店販売の標準値までがわかるという。遠方の限定商品の場合は交通費も計算されるらしい、至れり尽くせりの強アーツじゃないか。

『商人』が戦闘職に多いというのもなんかわかってしまった。

その代わり『精算』を使用すると平均値から著しく外れた価格での取引は出来なくなるそうなので、新アイテムや、取引数が少なく値のばらついたアイテムには向かないらしい。

リーさんとエドさんが戻ってきて、リーさんからは『雑草玉』200個(まだまだあるけど控えめに持ってきたそう)、エドさんからは『青ブナの杖』をもらった。

「兎杖は持ってなかったが、『ミミットホルン』は在庫があるから、青ブナで不足を感じたら言ってくれ。でもそのときには『ミミットホルン』より上の杖がいいかもしれん」

「ありがとうにゃん~!」

こちらは倉庫にあるのも忘れてたような在庫処分品なのでお金はいいと断られてしまった。なんかいいブリッツ(弾)が出来たら売ってくれればそれでいいそうだ。ありがたや~。

早速、初心者の杖から『青ブナの杖』に装備を変更した。いい感じ!

『指揮杖』は『魔道杖』と違って特殊な装備効果は少なく、器用値と魔力が上がるものが多い。初心者の杖は魔力+1だけだったが、青ブナの杖は+3ずつ上がるようだ。いいね!

「猫ちゃんや」

「にゃん?」

「SP10ばかりか新スキルにルイネの林檎までもらえた情報は決して安くありません。……散財しないと誓えますか?」

「猫は今『中級錬金釜』が欲しいから、浮気の散財はしないにゃん。50万zにゃん」

「よし、それ買お」

フーテンさんくらいのLVになると皆SP乞食なので、SP10が10万zで買えるなら激安らしい。一人10万ずつ出してくれて、無事に『中級錬金釜』が買えた。

「にゃあ~ん! 貢がれたにゃん」

「貢いじゃったにゃん」

「にゃん」

「初級と同時に使うことも出来るから、入れるものを間違えないようにね!」

「同時に使えるなら捗るにゃん~!」

フーテンさんから追加のポーションも受け取り、アイテムがぎっちぎちだ。

「おお…、猫ちゃんすごいねえ。鞄がぱんぱん」

「重たいけど『運搬』チュートリアルに比べたら楽勝にゃん!」

「チュートリアルそんな過酷だったの?」

「最初はあまりの重さに三歩も歩けなかったにゃん」

「そんなに??」

「非力な妖精族は大変にゃん~。猫はチュートリアルで基礎体力を養ってきたエリート猫にゃん」

「ランちゃん、錬金釜も持ち上げてるものね。初期値だとルイネアでも持ち上がらないのよあれ」

「にゃん!」

猫にしてはスキルの恩恵でマッスルが鍛えられてるのである。ステータスでも少しだけ振った。

おそらく猫の主力になるであろう『軽業』も、実は筋力がないと片手落ちのスキルなのだ。素早さと器用と筋力がバランスよく必要な難スキルらしい。猫は種族で器用と素早さは上がりやすい。筋力は『運搬』やら『採掘』でのスキル補正が少々あるので、不足を感じる分だけ少しずつ振っている。

そんなわけであれこれ受け渡しも終えて、本日は解散となった。

やることがまた増えたにゃん~!