軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

41.三度目のポーツ

今日もいい天気!

暗黒夜が明け、掲示板とマケボがにぎわう朝である。元々、暗黒夜は冒険者のパーリーナイトだから明けると昨夜の話題で大荒れなんだけどね。

今回はそれに加えて、精霊関連がお目見えだ。

情報解禁の大混乱を横目に、猫はギルド前に来ている。

三度(みたび) ゆくぞ、ポーツへ!

目的地はアルテザだが、ルイのLV上げも兼ねてポーツから徒歩(騎乗)でいく。荷運びと、それから道中にあるワイバーンの巣に寄るためだ。

ついでにポーツで漁師少年を探して、錬金術師の叔父さんの情報も知りたい。

ちなみになぜ 転移施設(ポータルポート) ではなくギルド前かというと、前にポーツまで送ってくれるってフーテンさんたちと約束してたからだ。

今、フーテンさんは漬物石の情報を求めてポーツにいるので、富豪の『テレポート』で無料送迎だし、問題ないんだって。

すでに昨日のうちに運送ギルドで荷物を預かってきたので、移動の準備は万端だ。

荷車の試運転は自由都市では目立つし、ポーツに到着後としたので、今は普通にルイと猫に積めるだけ。レトは鞄がないのでアイテムを持てなくなり、ちょっと落ち込んでた。杖を作るまで我慢してくれ。

しばらく運送ギルドのランクアップはないだろうし、多少テレポートで達成しても問題はないはず。

お、きたきた。

「お待たせ~~」

「今来たとこにゃん~!」

ついに猫も様式美を達成したぞ…!

ひとり満足に浸りつつ、早速PTを組んでもらい『テレポート』送迎、あっという間!

ふわっと海風薫る、すでに懐かしい気すらする港街ポーツへ到着だ。

「送迎ありがとうにゃん! 助かったにゃん~」

「どういたしまして~。そういえば、猫ちゃんは赤月夜はどこ行くの? やっぱりルイネ?」

「一応ルイネの予定にゃん。でも3日じゃルイネにたどり着けそうにないし、そうなると 転移施設(ポート) で移動になるから、どこ行っても同じにゃん? いちばん混んでそうなルイネじゃなくてもいい気もするにゃん」

「たしかにそうね~」

フーテンさんたちは、エドさんが小人族なこともあって小人族の里コロップの予定だそうだ。ティアラさんが行ったところでもあるので、ある程度の事情がわかってるのも決め手だったのだろう。

「もし特に何も見つけなかったら、コロップおいで~」

「まるで猫がいつも変なもの見つけてるみたいにゃん??」

「ニャハ」

笑って流された!

「ま、それじゃあ猫ちゃん、アルテザまで道中気をつけてねえ」

「ありがとにゃん~! そっちも検証頑張ってにゃ~~」

PTを解散してサクサクお別れだ。

フーテンさんはシティシナリオではお暇になりがちだが、今回は本を読むというお仕事がつまってるはず。

幽世恋物語(かくりよこいものがたり) 、重要参考文献だからさ。

猫も読まないといけないんだけど、まだ積んでます。醤油作りには必須だから悩ましい本だ。

運送ギルドで荷物を下ろし、味噌と醤油を買い出し――しようとして思い出した。

商人の実績解除スキル、『仕入』『真贋』『道中安全』のどれかを取っておこうと思っていたのを。

『仕入』はNPCからの購入をスムーズに行えるようになるスキル。大量購入とか値切も可能になる。

『真贋』は偽装・擬態を見破るスキル。対象はアイテムに限らないので、持ってるとなにかと便利。

『道中安全』は種族LVに由来して敵に会いにくくなるスキル。

前はそこまで心惹かれるスキルではなかったのだが、猫が風猫族としてやっていくためには、必要なスキルと思う。

せっかくなら特性をとことん伸ばす方向でいこうかと。

ケータくんも短期間に猫として成長してましたし。猫も負けないように、いっぱしの風猫族になるぞ!

これからもNPCとの関わり多めでやっていくつもりだし、露店もNPCから買ったものを売ることが多いから、『仕入』はやはり取りたい。

これがあればミーさんの購入制限もひょっとしたら緩和されたのでは、と思わなくもない。次回はたくさん買いたい!

そんなわけで『仕入』は確定。

『真贋』も取ります。あっさり。これ、改めて調べたら『隠れる』と 相乗効果(シナジー) もあった。つまり見極める目が磨かれると誤魔化しかたも磨かれるというやつだ。

悩ましいのは『道中安全』で、パッシブスキルなので解除が出来ないのがネック。戦闘しないとLV上がらないし、PTにも影響が出る。

これはやはり、なし!

てことで『仕入』『真贋』をそれぞれ10SPで取得。残り100SP。

SPが減るときはいつだってドキドキだ。

『仕入』取得後、醤油と味噌の買い出し。LVが低いからかそこまでの違いはないけれど、心なしか店員さんが親しげになったような?

そして誤差程度だが多く買えたので、これはまた商業ギルドで売ったり、自由都市の露店で販売したりしようっと。

ポーツは楽に『砂』を拾える場所だから、精霊情報解禁後はにぎわうのでは、と思っていたが、案外そうでもないようだ。

初心者に『ガラス工』持ちがあんまりいないというのは本当なんだな。

『調薬』持ちが「『ガラス瓶』高い!自分で作るわ!」と『ガラス工』に目覚めるパターンと、『鍛冶』持ちが隣の工房の吹きガラスとか見て「ガラスいいな、キレイ」と転がっていくのと2パターンあるとか。

作業虚無に陥った硝子連合たちとメールしてるときの雑談で聞いた。

ポーツが賑わうのは、漬物石解禁後になるのかね。

ちなみにポーツ付近には赤月夜のスポットはない。あるのは青月夜と白月夜だけだ。それもあってにぎわってないのかも?

そういえば金や黒の精霊は出るところが決まっていたみたいだし、その他の月にもこういう特徴があって出る、とか決まってたりするんだろうか。

強いていうなら青は水に関連あるっぽいか? いや、でも白も水辺だったな?

例の錬金術師の甥っこ漁師少年を探して、漁師ギルド、釣り桟橋、海の家と、うろうろしたところ、ついに発見!

灯台下暗し、なんと醤油屋の息子だった。漁師じゃないんかい。

…もしかして魚をたくさん返してると精霊が大きくなったりして、立派な漬物石をもらえるとかだろうか。

「叔父さんの家? 変なこと聞きたがるなあ」

「猫も錬金術師だから、ちょっとお話してみたいにゃんよ~」

「そういえば錬金術師っていってたっけ。……んー、ならいいか。ついでに『貝殻』届けてくれるか?」

「にゃん~、アルテザ行ってからになるからちょっと遅くなるけど、いいにゃ?」

「全然いいよ、洗ってあるし、腐るもんじゃないもん」

そんなわけで『小包』として『貝殻』をお預かりして、クエストになった。よしよし。

ちなみに醤油屋の息子少年の名はマルコというらしい。

「偏屈だけど、俺の名前を出したら会ってくれると思うから。連絡も一応しとく」

フォローまでばっちりのよい子であるな、マルコくん。

猫の師匠候補の叔父さんもいい人だといいな。

あとは砂浜をうろついて『砂』を拾ったら、運送ギルドでアルテザ行きの荷物を見繕って出発! 今回はあんまり寄り道しないぞ!

といっても魚屋さんで豊漁だったという『イワッシー』100個は買ってしまった。気のせいか、NPCの不良在庫を買ったときはいい話が聞ける気がして、つい。

「そうだなあ、面白い観光名所なら、1週間過ぎたくらいにまた来るといいよ」

「1週間にゃ?」

改めてポーツの見所を聞くと、そんな答えが返ってくる。日付指定ってことは、月夜関連かな?

6日後が黒月夜だったはずだから、月夜の翌日に起きるなにかがあるんかな? それとも、その次の青月夜の話?

「幽霊船が見られるはずだぜ」

「幽霊船!?」

それはちょっと気になるな!

「どうもでかい引き潮が発生するらしくてな、とおいとおいところにある船を連れてきちまうらしい。さすがに浜にまでは来ないが、沖でゆ~らゆらしてるのが見られる」

「もしかして、乗り込めちゃったりするにゃん?」

「ハハハ、怖いもの知らずだな猫さん! 月が沈んだらあっという間に消えちまう船に乗りたいやつなんて、命知らずしかいねえさ。……ああ、猫さんはマレビトかい? それなら、もし幽霊船に乗ったら何があったか教えてくれよ」

どっちにしろ1週間後くらいには、青月夜のためにポーツへ来ることになってたからお得な情報だ。

なんだろな、幽霊船、楽しみ!

猫、見えるやつは平気なタイプ。

ついでなのでしばらくポーツ滞在だというフーテンさんにもメールしておこ。

幽霊船も探すといいにゃんよ~、ついでに魚屋さんから豊漁の『イワッシー』買え、と。

事前の情報収集よろしくにゃん~!

その後、プレイヤーの露店も覗いたけどオードリーさん――レッサーパンダの獣人でドリームブレスシェルでお悩みだったお姉さんは、残念ながらいなかった。

フレ欄確認したら、学園都市にいるようだ。船で移動したところだったのかもね。

オードリーさんは、気ままな野良活動がメインだが、友人の裁縫師互助会クランの護衛なんかもしているらしい。今は移動の問題からポーツに滞在することが多いが、本来の拠点はアルテザと聞いている。

だからか、アルテザへ行くなら到着して落ち着いたらメールほしいって言われてるんだよね。

会えたらまた何かいい素材がないか見せてもらおうっと。

さて、ようやく手に入れた荷車を出した。

猫の荷車屋台は 幌(ほろ) つきで、馬車の荷台とそれほど変わらない。

魔ロバとはいえ馬よりは小柄なロバが引くので、一回り小さいかたち。猫も人族より小柄だから、特に狭さや小ささは感じない。

なんといっても御者台の奥、荷車の中は異空間になっていて、簡易マイルームというか、懐かしの四畳半だ。荷車のグレードを上げると四畳半が成長する仕様。

つまり荷車って、マイルームの増設であり、ダンジョンでも使える移動式マイルームなのだ。そりゃお高いはずよ。

ちなみに猫たちマレビトのマイルームは 幽世(かくりよ) に部屋があるって設定なんだけど、荷車の方は空間魔法で部屋を作ってるという設定だ。だからダンジョンでも使える。マジックバッグ系がダンジョンで使えるのと同じ抜け道というわけだ。

この世界かそれに付属する亜空間の座標を弄るのが空間魔法、関係ない並行世界と繋げちゃうのが幽世の扉って感じで、一応区別はされているが、導きだされる結果は酷似しているのでなかなかややこしい。

それでも「空間魔法で繋がるのは亜空間であり幽世ではないよ!」というのが公式の回答だ。

だからか、マイルームの箪笥はどの部屋に置いてもマイルームからならすべてにアクセス出来るけど、荷車の箪笥は荷車からしかアクセス出来ない。ちょっと不便だけど、まあ納得はする。