軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

18.精霊の救い方

さてさて『魔宝石の組み紐ペンダント』はどうなったかな?

『装備時『時属性魔法』『闇属性魔法』スキルを使用可能(時魔法3)(闇魔法1)』。

おお、新たに属性が増えた。魔法数が少なめってことは、ロアンよりリューシーのが強い精霊ってことなんだろうか。い、一緒に住んでて大丈夫? パワーバランス的な…。

黒月で『ムーンキャッチ』が変化してたらお引っ越しも検討した方がいいかもしれない。

確認すると、ルイたちに装備してもらってたアクセサリーも変化してた。

ルイのムーンキャッチは『 黒月影(くろつきかげ) 』、レトのムーンキャッチは『 金月影(かなつきかげ) 』。そしてルイの『 青月明(あおつきあかり) 』は変化無し。あら残念。

『黒月明』じゃないっぽいとは思ってたけど、『黒月影』か。月影も月光のことだから、間違いじゃないけども。なんか特殊仕様っぽい感じ。

そして鏡月明じゃなくて『金月影』か。

レトのが『金月影』になったのは、たぶん光の当たりがよかったんだろう。金の月が現れて猫が頭上を仰いだとき、レトもルイの頭の上にいて同じように月を見上げていたから。ルイのは鞍についてるから、猫の影になって月光が当たらなかったんだと思われる。

そんなわけで出来た『黒月影』と『金月影』のアクセサリーをロアンに見せてみたが、両方とも移ることは可能なようだけど、すぐにつるんと抜けて魔宝石の方へ戻ってしまった。魔宝石のが好きなんかな?

新しい魔宝石を探してみるか。幸いなことに予算はあります。フフ。

クエスト中、バタバタしていたから無理かな?と思ったけど普通に運送ギルドは使えて、無事セルバンテスさん(執事)に『大陸鳥の技羽根』『大陸鳥の魔羽根』などを着払い発送出来た。まずは手付金ということで通常羽根と同じ30万、2枚で60万を受け取っている。

わはー、いくらになるか楽しみだなあ!

んふふ、とお金に夢を馳せつつ、更にステータスを確認。

闇魔法は何が使えるようになったのかとレトの魔法一覧を調べると『ダークフォグ』だった。もやっとした闇の雲を浮かべる魔法だ。敵の目辺りを覆うと視界を邪魔できたりするデバフ系。

レトは杖をぶんぶん振って素振りしている。使いたい? ダメです。

こんな暗いのに闇の雲が出てたら危ないもん。この手の現象を作る魔法は、敵味方の区別がないのだ。なので、わりと嫌われるタイプの魔法でもある。

ううむ、明るくてもレトには使わせづらい魔法だ。マイルームでなら使わせてあげられるので、お外では許してほしい。

そういえばレトが戦闘中に使ってた最後の魔法はなんだったんだろな?とログを確認すると、やはり『リカレント』だったらしい。

他に魔法がないのだから、それしかないだろうとは思っていた。 繰り返す(リカレント) 、名の通り、それまで使っていた魔法を同じ数だけ繰り返す、とかだとしたら、あの大量のハートも納得だ。

レトが猫にMPポーションを使わせてたのも、もしかしたら行動中断がダメとか、同一行動を取り続けるとかそういう制限があるのかもしれない。取り扱い説明書をくれー!

『カウント』は教本あったけど、『リカレント』は売ってなかったんだよね。まず『カウント』を覚えないことには現れないのかもだ。

んー、しかし『リカレント』か。

繰り返す魔法はどこを起点としているのかが必要になるだろうから、『リカレント』はおそらく『カウント』とセットの運用だ。だからレトは最初に『カウント』を使ったんだろう。

時属性魔法は数の魔法…、だったっけ? 港町ポーツで読んだ絵本に書いてあった。あれ、題名がわからなかったんだよね、記号と数字が散らばった表紙で、どこをタイトルとすべきか謎だった。

「時魔法の真髄は『カウント』にある」とか書かれてたなそういえば。……もしかしてレトの全体ヒールも『カウント』に由来したりする? となると『時属性魔法』にそういう性質がある…?

うわー! 教本読みたーい! でも暗ーい!!

さみしい……。

並べていた『ムーンキャッチ』をツンツンして、なんとなく裏返す。両面交互に月光に当てる方が早いかもしれない。

それにしてもレトは今回、立派にヒーラーを務めてくれた。もう戦闘はレトを本体にして、猫はアイテム使いになるのもいいかもしれない。それなら後はアタッカーをスカウトして、それからタンクも……、てやることが何も変わらないな!?

いや、レトの支援にもうひとりアイテム使ってくれるヒーラーがいるといいかも?とはちょっと思ったので、それも検討。マルモがもう1匹いてもいいなあ、と思うけどしかしMP…、うむむ。

あれこれステータスを確認したり『ムーンキャッチ』をくるくるしているうちに、ぽつぽつと人が帰ってきた。

最初に帰ってきたのがジョンさんたちだったのにはちょっとびっくり。NPCも狭間って行けるのか!

精霊とも契約出来たりするのだろうか…て、精霊使いがいるんだからそりゃ出来るか。MPある人類とマレビトの違いは、死の概念があるかどうかくらいだっていうし。

ジョンさんたちが帰ってきたら、あとはぽぽぽんと次々に帰ってきた。あまりにも一気に戻ってきたし、時間制限的なものがあったのかも?

イベント中に皆がアライアンスチャットに話してた分なのか、チャットがドワーッと滝のように流れる。

「にゃーん!」が大量で笑ってしまった。猫もやったので人のことは言えない。にゃーん!

ログを見るとみんな暗いところにいたっぽい。やはりパーティー毎の分断だったからか、アライアンスチャットは呼び掛け程度で、特に会話は残ってなかった。

「猫ちゃんもお疲れ~」

フーテンさんたちも戻ってきたようだ。プレイヤーはほぼ同時だったぽい?

オオー!と歓声が聞こえたので何事かと思ったら、車椅子に座ってたシャイアネイラさんが立ち上がっている。

お、おお? というか、浮いてる?

ふわり、と宙吊りになるように浮かび上がる少女の体。

細い身体を包むネグリジェが夜風にはためき、肘や膝が少し露出する。そこには繋ぎ目がある。球体関節。

シャイアネイラさんも人形かあ。

ガード固すぎたり、闇人形そっくりだったり、たしかに違和感はあったな。

もしかしてこっちは替え玉で、本物は別にいる?とかも考えてみたけど、どうも違うっぽい。ジョンさんの主ってシャイアネイラさんじゃなかったみたいだし。

戦闘中、シャイアネイラさんのこと名前で呼んでたもんね。姫って言わなかった。

というか彼女の車椅子を押していた、黒髪ポニテ少女の方が、彼の主だったっぽい。

『ナナちゃん!!?』

『うそでしょ、ナナちゃんさまじゃん!!』

『初手から俺らへのジョンの殺意高いのそのせいかー!』

『それは仕方ないじゃん!!? イベントの進行上仕方ないじゃん!?』

あー…。

ナナちゃんチュートリアル要員ってエドさん言ってたっけ。てことは、まともに既存のイベントやると序盤でナナちゃん倒しちゃう→裏BOSSジョンさんの殺意が最初からMAX? うわあ。

ジョンさん、姫強火担ぽかったもんな…。

そんな天然トラップなナナちゃん…さま?によると『殺戮鬼シャイアネイラ』とはたしかにルイネアの精霊使いであり、人形遣いだった。しかし彼女は学園都市にて異界の扉を封じるために奔走し、それが元で体を壊し、すでに亡くなっているそうだ。

ここにいるシャイアネイラさんは、その人形遣いの最後の人形であるらしい。

人形遣いのシャイアネイラさん(本体)は、七不思議ラビリンスの奥で人形BOSSが出るようになったことにとても心を痛めていた。すでに破壊され、部品を集めたとて連れて帰ってくることの出来なかった自身の精霊が、実は異界に囚われてまだ生きているのではないか、と考えていたらしい。

そしてそれを救い出せない自分に歯噛みし、シャイアネイラさん(人形)をつくりだした。

もちろんこちらも人形であり精霊なので、異界の扉を潜らせるためではない。いずれ誰かが狂える人形を救い出してきた際に、その人形から精霊を解放するための存在として残した。

そんなわけで長らく、人形が救い出されるのをひっそりと待っていたシャイアネイラさん(人形)だったが、人形製作師はもはや失われた職ジョブであり、その人形レシピも失伝、壊れても補修する術は失われている。次第にシャイアネイラさんは身動き出来なくなっていき、今に至る、と。

ちなみにシャイアネイラさんが人形なことは、村では公然の秘密ってやつだったんだって。

猫はその辺知らなかったけど、シャイアネイラさんについては、聞いても口をつぐむ村人が多かったそう。

この辺の詳しい背景ストーリーは人形遣いがいるか、あるいは『闇人形』をオークションで落として直接持ち込みしてたりすると、聞けたのかも?

アライアンスチャットでも『まったく知らん話きた』『真相解明編の内容が初見』などざわついているので、誰かの共有忘れとかじゃなくて、この辺を聞けた人はいなかったようだ。

しかし『希によくあるやつ~~』とフーテンさんが言ってたので、希によくあるらしい。

『前提クエスト飛ばしても別のフラグが揃ってると、初見の真相があるクエスト踏めちゃうときがあるんだよねえ』

『一応、辿ることは不可能ではないんやけど、エンディングで全然知らん犯人が出てきて『誰やお前!?』てなるやつな』

『クエスト外に真相があるのはズルいよね』

『でも詳しく話を聞いてくとなんかうっっっすら覚えがあるのよね~…だいぶ前になんかフラグ踏んだような??ていう程度に』

硝子連合の面子は『そんなこともあるんだ!』みたいな驚いてる反応なので、たぶん戦闘職でクエストどんどこ進めてると、希に起きちゃう、みたいな話っぽい。力で全てを解決する弊害。パワーイズアンサー。

閑話休題。

なんでシャイアネイラさんの過去編などが出てきてるのかというと、だ。

猫たちマレビトが暴走した『闇人形』を倒したから、『闇の精霊石』の取得権はこちらにある。しかし、この精霊石はシャイアネイラさんが長年探してきたものだった。

そしてシャイアネイラさんが求めているのは、『闇人形』の中に宿っている精霊を解放することだ。

このままだと『狂える精霊石』なので、その始末を任されているシャイアネイラさんとしても、精霊使いでもあるナナちゃんとしても、この石をそのまま他人に渡すわけにはいかない、というのである。

うん、まあ、わかる。

そのまま置いておいたら周囲の属性バランス崩して病気にしちゃうような石だ。ハイどうぞってわけにはいかないだろう。

なので、もしマレビトたちが許すならば、精霊の『融合』を行いたいそうだ。

『融合』というのは精霊使いのアーツらしい。『固定』『昇華』の次に『融合』があるんかな?

そも、精霊石には精霊が閉じ込められている。そしてこの精霊を表に出す方法は3つある。

まずひとつは、石を破壊すること。しかしこれは石の破壊と同時に、入っていた精霊も消滅してしまう。

次に、『昇華』を行うこと。これはどうやら、精霊のパワーアップ要素っぽい。石は精霊の糧となって砕け散り、精霊は強化され自由になる。ただ、これを今行うと、狂える精霊が強化された状態で解き放たれてしまうことになる。

そして最後に、別の精霊と『融合』させること。シャイアネイラさん(人形)にも精霊がいるわけで、この精霊シャイアネイラさんが、精霊石に入っている精霊を自分のものにし、ひとつに合体する。これが『融合』だ。狂える精霊はシャイアネイラさんの一部となる。

精霊の死という点ではどれも微妙だが、どうやらシャイアネイラさん(本体)は元々、この『融合』で狂える精霊を救う算段だったようだ。

『どうする~?』

『猫は『融合』に賛成にゃんよ~』

『というかそれ以外、ないですな』

『ですわね』

ハイ。

そんなわけで全員一致で、『融合』してもらうことに。