軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

9.闇人形を探せ

アオーン。

悪徳商人が無惨な姿で発見されました…。

そんな感じで、朝。

悪徳商人から人形奪還の計画を立てていたら既に成敗されていた件は、エドさんが夜の内にジョンさんを巻き込んでギルドに報告をしてくれたらしい。

ちなみに商人は死んでない。一命を取り留めている。

診断の結果、重度の闇心症――村人がかかってる風邪の重症化したもの、とのこと。うーん、策士策に溺れる??

意識不明のため、残念ながら話を聞くことは出来ない。

ここで問題になってくるのは商人が倒れたことよりも、『闇人形』が消えたということ。

『闇人形』は盗まれてしまった…と、思ったら、どうやらそうじゃないらしい。

おそらく『闇人形』は既に復活し、自らの足で逃げていった、というのがジョンさんの見立て。

ほ、ほう???

『闇人形』については、人形BOSSを倒してオークションに出したプレイヤーが掲示板で宣伝してたログがあった。

人形の心臓にあたる基幹部には魔宝石がついていて、動力源として機能しているらしい。BOSSを倒せたのはこの基幹部の魔力切れによるものだったため、機能としては壊れていないと鑑定されたそう。

つまり『闇人形』はオークションにかけられた段階では力を失っていたけども、魔力を注げば動き出せる状態にあった。

どうやら商人は最初から『闇人形』目当てで落札したわけではなく、この魔宝石を狙って落札したけど、解体出来なかったみたい。硝子連合の鍛冶師さんが言ってた通り、素材解体不可ってやつだ。

商人ギルドには彼らが魔宝石の鑑定を依頼したこと、どうにかして魔宝石として売却出来ないかと持ちかけていた話が記録されていた。

それで希望額ではどうにもならなかったので、人形遣いから手を借りれないか、という方向で動き始めたのではと憶測される。

この辺は大商人とティアラさん他、硝子連合の商人たちが手分けして調べてくれた情報だ。

『人形遣い』を主に持つジョンさんによると、この人形の基幹部にある魔宝石とは、精霊石であるらしい。

「精霊石を核とした人形はその体そのものが精霊の器となる。すると魔宝石は人形に融合し、人形は自律して動くようになる。自分で身を守り、戦うしもべとなるのだ」

はあん。人形遣いと精霊使いにシナジーがあるわけだ。

ちなみにこの状態になると人形全体で『精霊石』と扱われるようになるので、解体不可になるらしい。

そして、そうなった人形は、ただの人形とは訳が違う。

魔宝石って、そもそも装備の強化素材アイテムなのだ。そんなものと融合してるわけなので、そりゃあ頑丈で、お強い。

しかも一度シャットダウンした人形が再び動き出すには魔力を最大までチャージする必要があるそうで、今、人形はフル充填。

『闇人形』はBOSS時代は『狂える暗黒ドール』という名前だったそうで、当然のように人類とは敵対状態の赤マーク。

そんな『闇人形』が村周辺をうろついているのが現在なわけだ。そりゃ成敗済の悪徳商人より、今ある脅威が問題になろうというもの。

「 娘御(むすめご) はすでに長きに渡り異界にさらされ、狂えるものとなっておった。だからこそ姫も、娘御をなんとしても取り戻してやりたいと考えておったのだ…」

物憂げにジョンさんは言う。

ちなみに今日のジョンさんはちゃんとお布団に挟んである。スヤスヤサンドイッチ。

「にゃん~、商人さんが魔力を注いじゃったから、動き出したにゃん?」

「おそらくは。やつははじめ、姫に魔力を注がせるつもりであった。しかしなにがしか 術(すべ) を思いついたのであろう」

魔力を注ぐといえばトランスファーだけども、一般的な人族NPCは基本、魔法を使わない。魔法師とか冒険者などのジョブ付NPCなら話は別だけど。

商人は、いわゆるMPがない人族ってやつだったんだろう。

だからなんかアイテムとか、魔法以外の手段で魔力注入を試みたはず。MP回復ポーション、は生命体じゃないと効果がないし。なんだろね?

…自律式人形を生命体に換算するかについては審議ですな。猫は棄却する。

「そなた、 某(それがし) の代わりに、姫の手足となってくれぬか」

「嫌にゃん。……殺気ダメにゃん、暴力反対にゃん! 協力しないとは言ってないにゃんよ!?」

ジョンさん、うっかりするとすぐマークが赤くなるので気が抜けないんだが!? 姫強火担すぎるのよ!

「にゃん~、乗り掛かった舟にゃ、人形探しはするし、姫さまの意向も聞くにゃ。必ずしも見つかるとは限らないし、姫さまのお願い叶えられるとも限らないにゃ。そして明日も見つからなかったら、猫たちは帰るにゃん」

「それで構わぬ。明日は黒月、娘御の力が増すとすればそこが境よ。某も明日の夜には癒え、戦えるであろう…ゴホッゴホッ」

「そうだといいにゃんね~。温かくして寝るにゃんよ~」

『クリーン』と『治癒』を掛けて毛布も追加しておいた。くらえもこふわサンド。相手は寝る。

ジョンさんと話した後には、彼の姫さまと思われるルイネアのシャイアネイラさんとお話。意向を聞くって言ってしまったしね。

なんというか、深窓の姫さまですな。

たぶん元々病弱そうな感じ。肌も真っ白、髪も真っ白。眼はとても濃く深い紫で、一見すると黒にも見える。

『闇人形』てこういう感じなのかもなあ、てちょっと思っちゃった。お人形さんみたい、というのがまさしくしっくりくる。綺麗なんだけど表情は全然なくて、話し方もすごくぼんやりしている。

『ルイネアでもかなりの長老らしい。ユーリハーよりも上だってさ』

ポユズさんがそっと教えてくれた。

ルイネアは年を取っても老化しない代わりに、意識が夢の中へ溶けていく。そして長く眠るようになる。

元々、ルイネアは長期的に眠ることの出来る種族だ。プレイヤーのルイネアは、大昔に眠りについていた若者が目覚めた設定だしね。

長期睡眠に入ったルイネアは身体が蝋のように硬くなり、仮死状態に陥る。長く生きたルイネアはそのまま石のように固まり、精霊になる日を待つのだそうだ。

おそらくシャイアネイラもまもなくそうなるのではないか、とのこと。

そんな状態なもんだから、御付きの人の警戒が激しくて、まともに『解析』もさせてくれないんだって。手を触れるどころか、そばに近づくことさえ許してもらえないらしい。

昔は偉い人の肌に触れちゃいけないから手首に糸を当てて脈を取ったとか、そういう話もあったね。高貴な人って大変。

幸いにしてシャイアネイラさんは元々闇属性強めの人らしくて、闇風邪にはかかってないらしい。風邪引いたら儚くなりそうな人だから、そこはよかった。

そのシャイアネイラさんは、闇人形のことを「わたしのあの子」という。

「あの子を助けなくては。鏡が力を取り戻す前に。風を凍らせ、氷を光に導く術を。やさしいあの子を、 幽世(かくりよ) へ帰してあげなければ…」

ぶつぶつとこんなことを言うのである。

鏡……、てやっぱり鏡月のことかなあ?

もしかして今回の月って、黒月じゃなくて鏡月なんだろうか? たしか白にも赤にも青にも黒にも、みたいな感じで変幻自在っぽかったし。他の月を真似るというか、映す?らしいし。

鏡月が力を取り戻す前に、てことは月が満ちる前に。つまりは明日の夜までに、かなあ。

「風を凍らせ、氷を光に導く術」は何もわからん! 魔法? 属性を変える? リドルなのか?

猫は生活魔法なら全属性使えるけど、ふたつの魔法を同時に使う『二重詠唱』は使えない。フーテンさんに丸投げだ。

シャイアネイラさんはずっとこの調子なので、精霊使いのNPCといえども精霊使いの話など出来ずじまい。残念~。

人形遣いのジョブがあったら違ったのかね?

そんなわけでほぼノーヒント、制限時間だけが決まっている『闇人形』大捜索だ。各々別れてバラバラに散っての人海戦術。それと並行して、村人の風邪治療も進めている。

ただいま昼過ぎといったところ。

事件があったというのにのどかな村の中(ただし外出する人の姿はない)を廻って、猫もあちこちを散策している。

その時々でスキルやジョブが必要と思われるイベントが生えてくるようで、アライアンスチャットは常に大騒ぎだ。

『楽士、楽士来てなんか音楽が聞こえるぅ!』

『ヘイGPS寄越しな…なんで倉の中にいるの!?』

『お客様のなかに神官はいらっしゃいませんか!?』

『はい、どこに行けばいい? …祠なんてあったんだね』

『ギャー!!コレナニコレ火、火魔法師たすけ…私か!?』

『燃やすな馬鹿者! ア゛ーー!! 延焼するムリムリ無理水魔法師来てェー!! 山火事になっちゃうぅうー!』

『森の中で火はダメとあれほど…げ、マジで燃えてる。土、土被せとけ今向かうから!!』

『あ。鍛冶メンおる? 鍬折れた』

『『『『『ヘイ!』』』』』

『七人の小人並におるな!?』

『おるで! ジャンケンしてくる』

『妖精族ー! 妖精族の方タスケテーー!』

救援要請がしっちゃかめっちゃかに行き交っている。妖精族…あ、猫そうだった。

『にゃーん?』

『にゃーん!!』

GPSが飛んできた。そっちへ向かえばいいらしい。さてさてなんだろな~。

捜索班は村周辺の探索と、村の中の探索。治療班は村人の話を聞いたり、お世話ついでにあれこれ探ってみてくれている。

猫にヘルプが来たのは捜索班の方だな。GPSが川沿いを差している。

……お、山火事は防げた模様。よかったよかった。鎮火の煙がたなびいて見える。村に近いし、かなり危なかったのでは??

「来たにゃんよ~」

「お待ちしてましたにゃん~!」

現場は山火事未遂とは少し離れた一角。

ちょっと集落より上ったところ、山間に川が流れているのだが、そこを逸れて少し森に入った辺り。おそらく湧き水と思われる沼…泉?がある。

泉の前にはふんわりと小さな人が浮いていて、両手を大きく広げている。

妖精だ。久しぶりに見たぞ。

妖精族にヘルプを出してたのは、硝子連合の二人。

1人は人族女性、ナマナマさん。正式名称はナマムギナマゴメ・ナマタマゴさんだ。名前のインパクトが強かったので猫も一発で覚えてしまった。オレンジのような黄色のショートカット。な、なまたまご…?

もう1人も人族、こちらも女性。えーと、ココロさんだな。紫髪のポニーテール。

そういえば硝子連合には地人族もいたはずだから猫じゃなくてもよかったかもしれん。でも地人族は『鍛冶』が種族スキルだから、じゃんけんしてたか。

「この妖精なんだけど、泉を調べようとすると邪魔してきて、なにか訴えてくるけど何もわからないのよ」

「妖精族って妖精と親和性高いんだよね?」

「にゃあ、猫だと動物型じゃないと無理にゃんね~」

「あー、タイプ別なのかあ。てことは地人族も飛んでるやつは無理だろうなあ…」

うむ。妖精族は妖精と会話が出来るという特技?があるのだが対象は非常に限定的なのだ。風猫族は動物型の妖精だけとなっている。風とついているが別に風属性持ちなわけではないので、飛んでるのと相性はよくない。

しかも会話といっても、漫画的記号やピクトグラムのような絵文字が浮かぶだけで、言葉が交わせるわけではなかったりする。

「この泉になにかあるにゃん?」

「狩人のおじさんいわく、先祖代々見守ってきた泉なんだけど近頃様子がおかしいらしい」

「大岩と大穴っていう昔話があるんだって。昔、大岩が刺さっていた場所があって、あるとき岩が転がり落ちていったんだと。で、元々大岩があった場所には今は大穴が空いている、て話らしくて。大岩はこの下流だから、大穴は上流かなって見ていくと、ここ怪しいな?と」

なるほど、それは気になる場所だ。

しかし泉の上にいる妖精は明らかに怒ってます!といった様子で腕組をしている。

「なんか怒ってるにゃ」

「水晶とか宝石とかで買収しようとしたのがムカついたみたいで…」

「賄賂を許さない潔癖な妖精さんとは珍しいにゃん~」

妖精って忠誠心とかないから、ふらふら靡いちゃうし警備とか向かないらしいんだけどね。