軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

0.風猫族のラン・ワールドウォーカー

『猫の店、開店にゃん!』

開店お知らせGPS付メールを希望者各位に送って、開店!

今日は久々の自由都市マケットでの露店だ。新エリアの旅に出ていて、しばしホームタウンを留守にしていた。

流れていく客、隙間のないぎちぎちの露店、いやあ、帰ってきた感がありますな。 学園都市(アルカディア) は区画整理がしっかりされていて、露店通りもピシッと真っ直ぐで趣が全然違ったもんね。

廃都(ルイネ) は露店通りってほどの賑わいはないし、それぞれいろいろあるものだ。

猫はやっぱり自由都市が好き。

『寄りますぅ! 先日のメールの件、買い取るのでよろしくお願いします!』

『何時まで開いてます?』

『『紫シスル』入荷した?』

『『鍵魔法玉』5個取り置きよろです』

『今日は何の店~?』

ぽちぽちメールが届き始めるのを眺めつつ、商品を考える。

いや開店する前に考えろって話なんだけど、基本は買取露店なので売るものはだいたい適当だ。

『ありがとうにゃ、お待ちしてますにゃん!』

『だいたい1時間の予定にゃん~』

『入荷してますにゃん! 『緑ラペ』もあるにゃんよ~』

『取り置き了解にゃん~、1時間以内によろしくにゃ』

返信しつつ、商品や買取籠を並べていく。

買取はいつもの最低品質素材、それからいくつあっても足りない『貝殻』、割と本気で探してる『トロンポス・ベル楽譜2』と『銀雷の種』。

アッまじで買取オンリー露店になっちゃう。残り3枠は売り物にするか。

えーと『鍵魔法玉』と、ちょっと肥料の配分間違えてまた増えすぎた『ハッピー豆(生)』、あと何にしよう。

……あ、これでいいや、『惑わしの木コブ』。必要と思って多めに採取してきたけど、インク作るのめんどくさすぎて萎えちゃったんよな…。改めて聞いたら上級素材らしいし、もっとお手軽な素材を手に入れるのだ。よってこれは在庫処分しちゃう。

うーん、またまた統一感のないラインナップ。まあいいか!

『今日は「なんか丸いもの」の店にゃん~!』

『聞いたところでなにもわからない回答ありがと~~! 行けない悲しみ』

『だと思ったにゃん。集中しろにゃ』

『残念~~』

大商人は今日はダンジョンか。

まあいろいろな人が来たり、来なかったりするのが露店のいいところだからね。気軽に寄ってもらえれば幸い。

もちろんメール返信なしでの来店も歓迎だ。

さてさて、今日はどんな日になるかな~~!

◇ ◇ ◇

『おめでとうございます。初めて都市に到着しました。SP10とプレゼントボックスを入手しました』

「おおー、こうなってるのか」

長々とした衛兵さんの話を聞き終えて、ようやく来たぞ、自由都市。

これが私にとっての初めての街だ。

ライフ系MMOがやりたい。農業したり釣りしたり出来るやつ。生産があるゲームは多いが、ライフ系はあまり多くない。

それで探しあてたのが、有名MMOの第三エディション。大型アップデートがあったばかりらしい。

第三エディションは第一からの差を埋めるために初期SPボーナスが多い、ガチャ要素であるプレゼントボックスが多い、最初からマイルームがある、など第二までにはなかった要素が多いらしい。

更に大型アップデートで追加になった要素も最初から取れるチケット付とあって、既存ユーザーにも売れている――とか、なんとか。

そんな噂に誘われて始めてみたゲーム。

キャラ作成して自由都市の城壁前に 出現(スポーン) 、と思ったら、門を通るために長々と街の説明が始まった。

いや、大事よな、街の説明。

街の中での迷惑行為の禁止、窃盗強盗暴行等の犯罪行為の禁止、戦闘・乱闘行為の禁止、無闇に大声を出さない、道路を占拠しない、など注意事項もやたらと多かった。後半になるに連れて具体例があったので実際にあったんだろうな、とちょっと遠い目になってしまった。

そんなこんなで大量の注意と案内を聞いてきた。

すでに結構疲れたな??

やっぱりこの種族、小さいからちょっとスタミナが少ないのかもしれない。

見下ろしてみれば、フサフサ灰色毛皮のお手々が目に入る。小さい。

見回せば道行く人の大半は、私より背が倍近く高い。なんだか子どもになった気分。なにしろ今の私の身長は、1mほどしかない。

白いパジャマを着た、二足歩行の灰色猫ちゃん。それが私のアバターだ。

器用で幸運、生産は苦手な風来坊という種族、 風猫族(かぜねこぞく) を選択している。猫耳や尻尾だけではなく、体全体が猫っぽい。いわゆるケットシーっぽい種族だ。

顔も猫で、人族よりかなり小柄。非力で魔力も低めというデメリットはあるが、素早さと器用、幸運が高く、テイマーや斥候向き。なにより可愛い。

ちょっとこだわって作ったモデリングを風猫族仕様に変換したらふわふわの灰色猫になったのでそのまま採用した。ネコチャンかわいいね。

瞳の色は金と青で悩んで、やはりブルーキャットよな、と青にした。

初期装備は初心者のシャツとズボン、全種族共通。猫だろうと服は着る。

これはプレイヤーたちに『パジャマ』と呼ばれている通り、言われてみればもうパジャマにしか見えない。コラボ商品として実際にパジャマが販売されてバズってたから見覚えがあって、更にパジャマ感に拍車をかけている。

早く着替えねばという使命感にかられる良デザイン…なのか?

まあどう見てもパジャマ。

そんな私のステータスはこちら。

― ― ―

名前:ラン・ワールドウォーカー

種族:風猫族 LV1

陣営:Free

メインジョブ:――

サブジョブ:――

スキル:

採集:『採取』LV2『採掘』LV1『伐採』LV1『釣り』LV2

生産:『錬金術』LV1

生活(ライフ) :『農業』LV1『交易』LV2

戦闘:『使役』LV2

魔法:『生活魔法』LV1

補助(パッシブ) :『軽業』LV2『運搬』LV2『隠れる』LV2

― ― ―

はい。

こいつ戦う気ゼロだな、というスキル構成だが、これでもちゃんとアレコレ考えて取ってきている。

まずこのゲーム、そこそこ人気のMMOなので、戦闘アシストも充実、技術的な問題で詰まるようには出来ていない、らしい。

第三エディションとあってメインストーリーは大分進んでるが、現在ではお使い並の難易度で進めて追いつけるそうだ。更に追いかけるだけで経験値も入る、とかなんとか。

つまり序盤はお使いクエストを受けて、あっちへこっちへ行っているだけでLVも上がるしお手軽にSPも手に入っちゃう。たとえ多少初期スキルをミスったところで、なんとかなるなる、というわけだ。

そもそも私は、生産は可もなく不可もなくだが、材料を集めたりするのが好きだ。コレクターではない。強いて言えば子どもの宝箱のような、人にはナニソレ?て言われるようなものをちまちま集めるのが好きなのだ。

なので当然の帰結として『採取』『採掘』『伐採』『釣り』『運搬』と集めつつ運ぶためのスキルは必須。

スキルとしては正直これだけあればもう満足、十分って気持ちだったが、初期スキルは10個なので、あと5個足さねばならない。

『使役』『生活魔法』『錬金術』『軽業』それから『農業』、とちょっと悩んで決めた。

残り2つは、種族選択で得られた初期スキル『隠れる』『交易』。

種族スキルは強制取得でひとつかふたつあり、強力なものはなく、ステータスの高い種族であればデメリットのあるスキルがつくときもある。

風猫族は前述の通りステータス特化種族ではないので、ごく普通の誰でも取れるスキルとなっている。

なお種族人間の場合は初期スキルはなく、スキルをふたつ自由に選べるのだそう。

とりあえず街についたことだし、まずは『冒険者』のジョブにつこう。

ジョブについたら身分証が出来るので、それがあれば城門はフリーパスになるらしい。

またあの説明を長々と受けるのは遠慮したいので、出る前に必ず就職せねばならない。

そうと決まれば冒険者ギルドへ。城門で案内を受けているときに地図にマークしておいたので迷うことはなかった。とても近い。

さくっと冒険者ギルドに登録。

ランクは『見習い冒険者』からスタート。

依頼にはいつでも受けられる常時依頼と、水物の依頼がある。後者はそのときどきによってどういった依頼があるのかは異なるので、こまめにチェックした方がよいそうだ。

依頼内容は多種多様だが、アイテムの納品を必要とする依頼と、実績のみでクリアできる依頼とある。納品依頼は納品をもって達成となるので、採ってきてから報告しても問題ない。実績依頼は先に受けておかないと無効になってしまうので注意が必要だ。

依頼の達成と報告を繰り返すことによってランクポイントが蓄積され、ランクアップ出来る仕組となっている。

そんな説明を一通り受けたら、早速メインジョブに『見習い冒険者』をセット。あ、ジョブって自分でつけ外しが簡単に出来るのか。セーフティーエリアかマイルームなら可能、と。

それなら各ギルドだけ行っておいて、ジョブを確保しておいた方がよさそう。

ここでもポーンとアナウンスが出た。

『おめでとうございます。初めてジョブに就きました。SP10と『不思議な鍵』、プレゼントボックスを入手しました』

あ、SP。それからプレゼントボックスもたくさんあったんだった。まだ見てなかったや。さっき街に入ったときももらってたな。

『不思議な鍵』はマイルームへの入り口だ。全部のギルドに登録したらマイルームへ行って、それからゆっくりあれこれ見ることにしよう。

『スキルチュートリアルが解禁されました。チュートリアルを開始しますか?』

おっと、ここでチュートリアルが出てくるのか。

わりと放任主義なゲームなのかなと思ったらちゃんと見守られてた。

「はい」

私はチュートリアルはしっかり受けるタイプ。説明書もパラパラとは読む方なのだ。