軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

88.加齢

「よぉ……、久しいな…… 元(げん) ……。随分とじじいになったな……」

「…………なんだ、元気そうじゃねえか……。ヴィリー……」

瓶から現れたのは50代くらいの男は、 白神元(じいじ) の友にして、ヨハン、リーゼの祖父。

ヴィルヘルム・ヴィンターシュタインの20年ほど前の姿であった。

「で……、ヴィリー……の姿をしたドッペルゲンガーさんよぉ……、姿はそのままでいいのか?」

じいじは目の前の敵に尋ねる。

「ん……? ドッペルゲンガー……なんのことだ? 元よ……」

「とぼけやがって……」

「……よくはわからぬが、特に今のままでいいようだが?」

「っ……」

ドッペルゲンガー。

それは形のない彷徨える亡霊。

だが、出会った者に姿を変えることができるという。

そのドッペルゲンガーが姿を変える対象は、出会った者の中で最強の者であるという。

「見誤ったな……ドッペルゲンガーよ……! 雷術〝 雷轟(らいごう) 〟!」

じいじは手の平を前に突き出し、速い初動で、輝く雷をドッペルゲンガーに放つ。

が……、

「……見誤ってなどいないでしょう?」

ヴィルヘルム・ヴィンターシュタインの姿をしたドッペルゲンガーはにやりと口角を上げる。

ドッペルゲンガーの目の前には、鎧の騎士が現れ、雷から守る盾となっていた。

「…………守護霊体……か……」

じいじは眉間にしわを寄せる。

「ホムンクルスな……」

ホムンクルス。

それは日本の 心(しん) 〝魄術〟に相当する技術で、魔力を守護霊体(通称、ホムンクルス)に変化させる技である。

「いい加減、横文字もちゃんと覚えろよ……。元……」

「っ……」

かつての友がいかにも言いそうなことを指摘され、じいじは唇を噛みしめる。

「 霊晶砲(エーテル・グランヴィル) !」

それは拳銃の形をしたものであった。

ヨハンは古風なリボルバー式の拳銃の引き金を引く。

|エーテルクリスタルクーゲル《霊素結晶弾》と呼ばれるドイツ式の主たる攻撃手段である。

銃口から青白く煌めく弾丸が発射される。

「ゲギャァアアアアア!」

その弾丸が直立したイノシシのような怪物に直撃し、イノシシはさらさらと霧散していく。

「……よし」

ヨハンは小さく握りこぶしを作る。

「ヨハン、やったね……」

後方で見ていたリーゼもヨハンに軽く声を掛ける。

「あぁ……、だけど、今の奴は8体の中で、最弱のガイスト。僕はこれより強いガイストをあと7体、倒さなければいけない……」

「……うん」

「さぁ、ゆっくりしている時間はない。急いで、次のガイストの封印を解かないと……」

そう言って、ヨハンはアタッシュケースから綺麗な石を取り出す。

「雷術合術〝 迅雷轟(じんらいごう) 〟」

雷を纏ったじいじがドッペルゲンガーを強襲する。

しかし、振るった右腕は空を切る。

ドッペルゲンガーはサイドステップで、ひらりと攻撃をかわした。

空を切った右腕の勢いをそのままに、再度、右腕でドッペルゲンガーを襲う。

今度は、鎧の騎士の左腕がそれを止める。

「どりゃぁあああ!!」

「グギ……」

バチバチと激しい音を立てながら、鎧の騎士の左腕はひしゃげていく。

だが、

「ボ……」

「っ……」

鎧の騎士は、空いている右腕をカウンターでじいじに向かって繰り出す。

「くっ……」

じいじは身体を反ることで、間一髪、パンチを避ける。

雷を足に込め、鎧の騎士の胴を両足で蹴りながら、後方へ退避する。

両者は一定の距離を取り、睨み合うが、その間、

「ボォ……」

ひしゃげた鎧の騎士の左腕が形を整えていく。

「…………まぁ、元は魔力だからな……」

その結果に、じいじも驚きはしない。

「うーむ、流石は元……といったところか……。しかし……衰えたな……」

「っ……」

「人間の加齢とは残酷なものだ……。元……こんなにも弱くなって……」

「あぁ、確かにな……。老いて……衰えた……それは否定できん」

じいじは険しい表情で、肯定する。

「潔く認めるのだな……。ならば、力の差は明らかであろう……。さっさと負けを認め……」

「話は最後まで聞け、このクソせっかちが」

「なっ……!」

「俺は確かに衰えた……。だが、弱くなったとは言っていない」

「っ……!」

「見せてやるよ……。お前の知らない20年って奴をよ……」

じいじはゆっくりと重心を下げる。