軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

06.秘密の訓練

(ドウマによると、俺はすでに魔力発現をしているらしい……)

それを知り、界はスマホを見つめながら呆然とする。

(「え……? ってことは、俺は生まれたその日に魔力発現したってこと?」)

【そうだ。この 儂(わし) 様ですら、初めて魔力を発現したのは二歳だったはず……。いや、別に羨んでないぞ……!】

(……)

界は言葉を失う。

(で、でも……スポーツ界なんかで、天才少年と持て囃されてた選手が、いつの間にか無名の雑草選手に追い抜かれてたなんてことはよくある話だ……。慢心せずに謙虚に頑張ろう……)

界はそう決意する。

(それじゃあ、早速、実践してみようかな……)

界は生まれて初めて、自発的に魔力を使ってみようと試みる。

(まずは集中……)

深呼吸して、息を整える。

普段、ドウマからの乗っ取りチャレンジを受ける時のことをイメージする。

(そして…………呼吸を止める)

「……!?」

溢れ出るようだった。

内に秘めた力が次々に外に解放されていく。

白く……たゆたうようなオーラだ。

強い万能感が押し寄せてくる。

(…………できた……のか?)

その時であった。

「ん……ん~……界……?」

(っ……! か、母さん……! やば……!)

母がむくりと身体を起こし、目を 擦(こす) っていた。

界は慌てて、魔力を止め、

(はぁ……はぁ……止められてよかった……)

そして狸寝入りする。

「界……なんでそんなところで寝てるの?」

(危な……ぎりバレなかったかな……)

そんなことなかった。

翌日――。

「ねぇ、あなた……! 昨日の夜……! 界から凄まじい光の魔力を感じたの……!」

「え!? 真弓! 本当か……!?」

「本当よ……! 私、見たの……!」

「やっぱり! 界は天才だ! 界! 父ちゃんにももう一度見せてくれ!」

界の両肩をつかみ、鼻息を荒くした父が問い掛ける。

「…………だぁ?」

もうある程度、言葉をしゃべれるのだが、界は咄嗟にとぼける。

両親に、自分への過度な期待をさせたくなかったからだ。

天才少年が伸び悩んでしまうことはよくあることだ。

「…………真弓……」

「あ……うん…………ごめん、夢だったかも……寝ぼけてたし……」

「だよな…………ドウマ様の闇の魔力があるのは分かってはいる。光の魔力の気配があるのもそうなんじゃないかと思ってしまってはいるのだが……。だが、凄まじい光の魔力を発現というのはな……。真弓……気持ちは分かるが、子供に過度な期待を寄せすぎるのは子供にとってもよくないと聞く」

「……そうよね、ごめんなさい」

「…………いや、こっちこそ言い過ぎた。それより…………界くんはかわいいでちゅねぇ」

(……ひっ!)

「真弓……! 魔力なんてなくたって、界は世界一、かわいいぞ!」

「そうね!」

(…………)

その晩のこと。

むくり……。

両親の眠っている隙を突き、界は再び徘徊を開始する。

(あった、あった……)

界は母のスマホを発見し、早速、操作しようとする。

だが……、

(「あっ!? あれ……?」)

【ん……? どうかしたか小僧……】

(「あ、いや……パスワードが変わってる……」)

昨日からパスワードが変わっていて、スマホを使うことができなかった。

(「しまったな……昨日、使ったままの状態にしてたから、母さん、流石に怪しんでパスワードを変更したんだな……」)

【はん……、罰が当たったのだな……人のモノを勝手に見ようとするなど趣味が悪い】

(くっ……悪霊に正論をぶつけられるとは……)

界は唇を噛みしめる。

(「ぐぬぬ……でも……こつこつ頑張ると決めたんだ……こうなったら独学だ……!」)

【はぁ……!?】

界は昨夜と同様に魔力の発現を試みる。

(集中して…………息を止める……よし……!)

昨夜のように、魔力を解き放つことに成功した。

(昨日はここで母さんが起きちゃったけど…………今日は……大丈夫そうだ……)

父も母もぐっすりと眠っていた。

(ここから先……何をすればいいんだろ……うーん……とりあえず……)

界は、魔力を動かし、様々な形に変形しようとする。

その時だった。

【っ……! お、おい、小僧……そんなに魔力使っちまっていいのか?】

ドウマが低いトーンで問いかけてくる。

(「え……?」)

【小僧……魔力が無尽蔵だとでも思ってるのか? 魔力は体力と同じだ。使えばそれだけ消費する】

(「……!」)

【別にいいんだぜ? 儂(わし) 様は……。いや、むしろその方が都合がいい。小僧が疲れたところを……】

(……やばっ!)

界は慌てて魔力を停止する。

【なーんだ、やめちまったのか……つまんねえな……】

(…………くっ……魔力放出の訓練はしばらくはできないか)

ドウマの存在により、界は魔力放出の独学訓練は止めざるを得なかった。

その後も、ドウマの乗っ取りチャレンジは毎日のように続いた。

ドウマの魔力は日に日に強くなり、界はその都度、それこそ必死に対抗した。

界は4歳になった。

毎日欠かすことなく続いていたドウマの乗っ取りチャレンジも3歳ごろを境に、ほぼ無意識に止められるようになっていた。

そして、つい最近になって、とうとう諦めたのか、全く乗っ取りチャレンジをしなくなった。

界は煩わしかったものがなくなり、清々するかと思ったが、なぜかちょっと物足りない感じがしたのであった。

それはそれとして、4歳になったが、保育園や幼稚園には通っていなかった。

もちろん、この世界に保育園や幼稚園がないわけではない。

というか実のところ、界は他人に比べ、極めて外出が少なかった。

行くとしても閑散とした場所を散歩する程度で、両親は界を人が多いところへは絶対に連れて行かなかった。

両親は口には出さないが、そういった場所へ行かせない理由はわかっていた。

界がドウマの依代の子だからだ。

他人に、もしものことがあることは絶対に許されない。

両親が界を愛していることと、リスクがあることは切り分けて考えなければならない。

そのことについて、界は両親が良識のある人間で本当によかったと思った。

それはそれとして、この世界改変において、変わってないことがある。

そう、家族構成である。

だから、今から半年前、3歳半の界は思っていた。

(そろそろだよな……)

無事、母の第二子ご懐妊である。