軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

57.封絶術

「界様、封絶術は封魔術のように半永続的なデメリットはございません」

一旦、落ち着きを取り戻したくまじいじが界に封絶術について説明してくれていた。

(……くまじいじ、元に戻ってよかった)

(「一瞬、本当に熊燐になっちゃうのかと思ったよ……」)

【あははははは、なるわけないだろ……! あははははははっ】

ツボに入ったのか頭の中でドウマが爆笑していた。

(「…………ドウマ、そんなに爆笑してていいんだっけ?」)

【ん……? どういう意味だ?】

(「…………さーてぃわん」)

【っ……!】

(「……連れて行ってくれたの誰だっけ?」)

【……んなっ……、この儂様を脅すというのか……。いやしかし……確かにさーてぃわんの恩を忘れるというのは 些(いささ) か人道に反するか……】

(……いや、そんな大げさでもないけどな)

「しかし、界様、封絶術にも勿論、リスクがございます」

界とドウマがそんな会話をしているとはつゆ知らずにくまじいじがまじめに説明を続けていた。

「あ、はい」

(いかんいかん、俺こそちゃんと聞かないとだな……)

「封絶術は霊魔に使用した瞬間から、術を解くまで、ずっと魔力を消費し続けます」

「っ……!」

「実際のところ、封絶術は一般的な攻撃型妖術などよりも消費する魔力は多いため、使いどころは慎重に考える必要があるのです。その点を理解した上で、訓練に取り組んでいただければと存じます」

「わかりました」

「それでは封絶術の概要を説明いたします。封絶術には 封綾(ふうりょう) というもので霊魔を封じるのが基本となります」

「 封綾(ふうりょう) ……?」

「はい。封綾とは、魔力を具現化して生み出される織物のことです。例えば、糸であったり、紐であったり、人によっては鎖のようなものを具現化する人もいます」

「 魄術(はくじゅつ) とは違うの……?」

「はい、 封綾(ふうりょう) に関しては、 魄術(はくじゅつ) とは別物です。 封綾(ふうりょう) はあくまでも相手を弱体化させる封絶術にしか使えません。ただし、時折、魄術が織物に近い形になる破魔師がいるのもまた事実です」

「そうなんだね」

「それで、 封綾(ふうりょう) の発動方法です。具現には印を結び、念を流す動作が必要になります。動作自体は封魔術よりも遥かに簡易です」

「はい」

「まず、両手を前に構えます」

くまじいじが実際の動作をしながら説明してくれる。

「右手の中指と薬指を立て、残りの指は軽く折りたたんで親指で支えます。

左手は人差し指と小指を立て、他は握り込む形にします。

両手を近づけ、指先同士を合わせるようにして、印を固定します。

その状態で、魔力を指先に集中させます。

魔力がまとまれば……このように……」

「おぉ……! すごい……!」

くまじいじの指先から、太い縄のような物が具現化する。

「 封綾(ふうりょう) として何が具現化するかは、術者の魔力の流れや意図に応じて変化しますが、基本的には紐状の物質が具現化します」

(……あくまでも拘束具ってことだね)

「そうして指先を対象に向けることで、対象を束縛し、弱体化させることができるのです」

「わかりました!」

「はい、それでは界様、早速やってみましょう!」

「はい……!」

そうして界は封絶術の訓練を始めるのであった。

五日後――。

(右手の中指と薬指を立て、残りの指は軽く折りたたんで親指で支える!

左手は人差し指と小指を立て、他は握り込む形に……!

両手を近づけ、指先同士を合わせるようにして……印を固定……!)

界の指先からは刺繍用の糸みたいのがちょろんと出現した。

(……)

【……】

「……」

「ど、どうかな……? くまじいじ」

「界様…………正直に言います。まぁ、普通……またはそれ以下でございます」

「……ですよねー」

界の封絶術のセンスは、全くではないが、並以下であった。

(「ぐぬぬ……なんか全くできないとかだったら、まだなんかコツをつかめば花開くみたいのがあるかもしれないけど、普通にできてはいるのに、並以下って……」)

【まぁ、そんなもんよ……儂様も探知苦手だし……】

(おっ……? ドウマが慰めてくれてる?)

【そもそも田介……、お前は相手を弱体化させる必要ないだろ?】

(「なんでさ……!」)

【なんでってなぁ……】

などと、している時であった。

くまじいじのスマホに着信があった。

「ん? すみません、ちょっと出ます」

くまじいじは通話を終え、スマホを切る。

「どうした? 一之瀬」

じいじがくまじいじに尋ねる。

「あぁ、どうやら割と近くに霊魔が出現したらしい。我々に協力を依頼したいということのようだ」

と、じいじがにやりと笑う。

「ほーん、界の実戦練習相手にちょうどいいではないか」