軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

54.解呪術

「…………どうしたの? じいじ」

「…………な、なんじゃこりゃ!?」

(……何が!?)

「じいじ、僕、何かまずいことしちゃったかな?」

「まずいかどうかは置いておいて、界よ……一体、どれだけの魔力を込めたのじゃ?」

「え……?」

「つまりじゃ、界が封魔術に使った魔力量が多すぎて……解呪できないのじゃ……」

(何ですと!?)

「あの……じいじって封魔術のエキスパートですよね?」

「界、じいじを馬鹿にしているのか?」

「ち、違っ」

「その通りじゃ、じいじは封魔術のエキスパート。じいじのレベルの封魔術を扱える者はそう多くはない。そのじいじが解呪できないと言っておるのじゃ。その意味がわかるか?」

(……っ)

界はつばを飲み込む。が、

「いや、わかりません」

わからなかった。

「…………まぁ、そうじゃよな……」

じいじはちょっと虚を突かれたような表情をしつつ頷く。

「でも、その……このままだと、ひょっとして熊燐は永遠に封印されたままに……」

「まぁ、そうじゃろうな……別にそれは構わんじゃろ……」

(っ……、まぁ、そ、そうなんだろうけど……)

「問題はそこじゃない。このままでは、界が使った分の魔力が戻ってこないということだ」

「……!」

「彰彦から界の魔力量測定の結果がどうであったかは聞いている。にわかに信じられないが、界の魔力量は赤を超えた〝 赤外(せきがい) 〟であるということじゃろ?」

「っ……!」

(……赤外)

界はそれを聞き、はっとする。

きっとそうなんだろうとは思っていたし、実際これまで魔力量にモノを言わせた戦術も取ってきていた。しかし、目の前で、はっきりと言われたのはこれが初めてであった。

「赤外がどれ程、膨大なのか……正直、じいじ程度の者には推し量りかねる。ひょっとすると今、界が封魔術で使った魔力量も界からすると 些細(ささい) なものなのかもしれない。例えば、一般的な破魔師からして100という魔力量が大きな量であったとしよう。だが、界の魔力量が仮に ∞(無限) だとしたら、∞から100を引いてもそれは∞なのじゃ」

(……∞!? 高校数学でちょっとかじった奴だ……。じいじ、流石にそれは大袈裟じゃないかな……? それはそれとして……)

「じいじ……」

「なんじゃ?」

「解呪術を教えてほしい!」

「……まぁ、そうなるじゃろうな。これだけの魔力量であっても、界自身であれば、間違いなく解呪できるはずじゃ……。少し順序が狂ったが、先に解呪術……すなわち 解印(かいいん) を学ぶことにしよう」

「うん、ありがとう……! じいじ」

そうして、界はじいじから解呪術を学ぶことにする。

それから一週間後。

「封ぜし鎖、今解かれたり。

汝が意、汝が在り処へと。

我、干渉せず。ただ扉を開ける」

「…………ダメか」

「……うん」

解呪術の取得は難航していた。

「じいじ、僕、センスないかな……」

「いや、まぁ、すごくあるというわけでもないが、普通程度にはあると思う」

(……そんなにはないのね)

界は苦笑いする。

「じゃが、正直、見ている限り、 解印(かいいん) は最低ラインはクリアしているし、解呪できていてもおかしくないと思うのじゃがな……」

じいじは首を傾げるのであった。

その日の訓練は大きな進展なく、終了した。

夜。

じいじとくまじいじが眠っている横で、界は熊燐が封印された札と睨めっこしていた。

訓練中以外に実際の解呪をすることは禁止されており、界はそれを守っていた。

だから、界はなんとなく札を見つめていたのだ。

そして、

「なぁ、熊燐、お前、なんで出てきてくれないんだよ?」

なんとはなく語り掛けていた。

しかし、返事が返ってくるものでもない。

(「ドウマ、何かわかったりしない?」)

【いや、この件に関しては田介の祖父と同じ意見だ……。なぜ解呪されないのだろうな……】

(「そうなんだね……」)

【ん……? なんで少し嬉しそうなんだ?】

(「あ、いや、何でもないよ……」)

(ドウマが同意見だなんて……やっぱりじいじってすごいんだなぁ……。これ言ったら、ドウマは不貞腐れそうだから言わないけど……)

「それにしても何でうまくいかないんだろうなぁ……」

界は、訓練の復習がてらなんとなく解呪詠唱を口ずさむ。

「封ぜし鎖、今解かれたり。

汝が意、汝が在り処へと。

我、干渉せず。ただ扉を開ける」

(…………我、干渉せず。ただ扉を開ける……か……)

「……!」

その詠唱から、ふと思いついたことがあった。

「明日、一度、じいじに試させてもらおうかな……。大丈夫かな、じいじ怒るかも……」

そんなことを思いつつ、界は眠りにつく。