軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

18.新しい侍女決定

「侍女に心当たりがございます。一度面接をしていただけませんか」

ナリッサが唐突に言い出した。

引越しの荷造りについて、やっぱり大至急侍女が必要かもって私が相談したとたんに。

「ええと、それってクラウスがいま書類選考をしてくれている人たちとは別に、っていうことかしら?」

「そうです」

それっていいの? と思わなかったわけではないんだけど、ナリッサの強い勧めもあって、我が家でいきなり侍女の面接を行うことになった。

私とお母さま、それにもちろんアデルリーナ、そして執事のヨーゼフに下働きのカールと勢ぞろいした我が家の客間に、ナリッサがその侍女候補を連れてきた。

侍女候補の女の子の顔を見たとたん、私たちは納得してしまった。

だってその女の子は、一緒に客間に入ってきたハンスにそっくりだったから。

「ハンスの姉のシエラです。年齢は17歳になったばかりだそうです」

「あ、あの、シエラ・グレッセンです。よろしくお願いいたします」

ナリッサの紹介に、シエラは顔を真っ赤にして挨拶してくれた。

そのようすがまた、本当にハンスにそっくりだ。そばかすはないけど愛嬌のある顔立ちで、明るい色の髪も濃い茶色の目も同じだし。ハンスに比べるとやや小柄な感じだけど。

シエラはいま、貴族の衣裳を手掛けている服飾工房でお針子をしているんだそうな。

そういえばシエラが着ている服、自分でお直ししたんじゃないかな。袖口とスカートの裾に別布が足してあるんだけど、いかにも丈が足りなくなってつぎ足しましたって感じじゃなく、きれいなフリルになっていてとてもかわいらしい。フリルには濃い色の細リボンもあしらってあって、それがアクセントになってるのがまたおしゃれだし。

ずっとお針子をしていたシエラに侍女の経験はないものの、貴族女性相手に採寸や仮縫いをすることもあるため、貴族に対する礼儀や作法は一通り心得ているとのこと。

「もしシエラを雇っていただけるのなら、侍女の仕事については私がイチから仕込みます」

ナリッサが頼もしく請け負ってくれる。

それくらい、シエラの人柄がナリッサも気に入っているということだろう。てか、いったいいつの間に目をつけてたの?

「あの、私、お針子の仕事はとても好きなのですが、その……いまのお店では、毎日夜遅くまで作業が続いて、それであの、特に目がすごく疲れてしまいまして……」

お針子から侍女への転職でもいいのかという私の問いかけに、シエラはややうつむき加減ながらもしっかりと答えてくれる。

「それで、仕事を少しでも減らしてもらえないかお願いしたのですが、減らしてもらうことはできませんでした。それに、ほかのお店に移ろうにも紹介状もいただけなくて……どうしようかと思っていたところ、ハンスがナリッサさんを紹介してくれたんです」

うーん、どうやらブラック職場っぽいね。

毎日夜遅くまで、それもおそらく灯の魔石をケチったあまり明るくない部屋で針仕事をさせられてるんだろうね。そんな薄暗い中で毎日長時間にわたって細かい作業をしてたら、そりゃあ目も疲れるでしょうよ。肩こりだってきっとすごいだろうし。

でも確かに、お針子って目を悪くして辞める人が多いって話は聞いたことがある。それって、こういう労働環境のせいっぽいね。シエラもきっとそれを心配して、転職を考えたんじゃないかな。

「こちらの、クルゼライヒ伯爵家さまについては、弟のハンスから話を聞いていました。奥さまもお嬢さまがたも本当にお優しくて、とてもよくしていただいていると……それであの、本当に、侍女の経験もない私が、厚かましいお願いであることはわかっているのですが、できればこちらで雇っていただけないかと……どうかよろしくお願いいたします」

真っ赤にした顔を一瞬だけ上げ、シエラは深々と頭を下げた。

同時に、慌てたようにハンスも頭を下げ、その耳が真っ赤になっているのがなんともほほえましい。

私はお母さまに視線を送る。

お母さまはにっこりと笑みを浮かべると、その顔をアデルリーナに向けた。

「リーナはどう思って?」

問われたアデルリーナはきょとんと不思議そうな顔をしてる。

でも、お母さまがなぜアデルリーナに問いかけたのか、私には納得だ。だって、ヨアンナのことはまだわからないけど、それでも侍女としてシエラを雇うなら、シエラはアデルリーナの侍女になる可能性が高いから。

「シエラはハンスのお姉さんなのでしょう?」

きょとんとしたまま、アデルリーナが口を開いた。

お母さまがほほ笑む。

「そうですよ」

「じゃあ、いい人なのではないかしら。ハンスはまじめに働いてくれているって、お母さまおっしゃってたでしょう? そのハンスのお姉さんなのですもの」

無邪気に、嬉しそうにアデルリーナはそう答えた。

シエラは、それにハンスも、ますます真っ赤になって感極まったような顔をしてる。

うん、採用!

だってアデルリーナにあんなかわいい顔をさせてくれちゃうことができて、しかもアデルリーナのあんなかわいいかわいい顔にちゃんと感動できるって、ものすごく大事なことだからね!

シエラ、これからよろしくね!

と、私が声に出す前に、お母さまが言った。

「では、シエラには我が家の侍女になってもらいましょう」

お母さまは私にも確認をとってくれる。「ルーディ、あなたもそれでいいで」「もちろんです、お母さま!」

がっつり食い気味に私は答えてしまった。「シエラにはぜひ、我が家の侍女になってもらいましょう!」

後日、クラウスにはめっちゃ謝っておいた。

だってあんなに頑張って侍女の選考をしてくれてたんだもの。さすがに、こちらで侍女を決めたことを伝えたら、ちょっと遠い目をしてた。

でもちゃんと慰労金も支給しておいたから、きっとクラウスくんも納得してくれたはず。クラウス、これからもずーっとよろしくね!