軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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報告書を読み終わったアデラは、これからどうするべきか、静かに考えを巡らせていた。

これからクルトは、あんな提案をしたアデラに対する当てつけのようにリーリアと行動をともにするかもしれない。

でも、最終的にクルトが彼女を選ぶことはないだろう。

彼はレナードよりは常識があり、また年も上なので、貴族社会のことはよくわかっている。

たとえアデラのことは気に入らないとしても、リィーダ侯爵家に婿入りできる機会をみすみす逃すことはしないはずだ。

仮面夫婦になったとしても、リィーダ侯爵家の当主になるのはクルトだ。

それらをすべて捨ててまで、クルトがリーリアを選ぶとは思えない。

彼は、リーリアを愛しているのではない。ただ儚げで、自分を頼ってくれる義妹になるはずだった女性を守りたいだけだ。

ならば、このままアデラが何もしなくとも、リーリアの企みは潰えるのかもしれない。

(でも、彼女はきっと諦めない。何とかしようとするでしょうね)

それこそ手段を選ばず、クルトを手に入れようとするだろう。

それでも駄目なら、既成事実も作りかねない。裏社会では、理性を失わせてしまうような、怪しげな薬も出回っているという。

そうなってしまえば、さすがにクルトも逃げきれない。リィーダ侯爵家の当主の座を捨てて、ロトリガ子爵家に婿入りしなくてはならないだろう。

このままリーリアが勝つのか、クルトが勝つのか。それを見守るのもおもしろい。

少しだけ、そんなことを考える。

けれど彼女は、アデラにも攻撃を仕掛けてきたのだ。このまま何もせずに終わらせるわけにはいかない。

そこまで考えて、アデラは苦笑した。

もしレナードが裏切らなければ、裏社会に詳しくなることも、相手に復讐しようと思う心も持たないままだったに違いない。

(ああ、でも。あのまま何も知らずに結婚していても、レナードは私を裏切っていたでしょうね)

何も知らずに騙されるよりも、反撃の手段を知っている、今の方がまだましだ。

それに、人の本質は変わらない。もしシンディーと浮気をしていなかったとしても、いずれ誰かとそういう関係になっていた。

だからレナードと婚約したときから、こうなることは決まっていたのだろう。

ならばもう、過去は振り返らない。

今、できることをやるだけだ。

そう気持ちを切り替えて、分厚い報告書を置く。

「……そうね。まずは」

それから机の上に置かれていた、夜会の招待状を手に取った。

明後日の夜に、王城で開かれるものだ。

「これにひとりで参加して、まずは様子見ね」

クルトとリーリアはどうするのか。

ひとりで参加しているアデラを、周囲はどう見るのか。

アデラがリーリアを突き飛ばしたという話が、どこまで広がっているのか。

それをじっくりと、観察してみようと思う。

夜会にひとりで参加することを告げると、やはり父は反対した。

あの日。

訪ねてきたクルトにも謝罪しなかったことを聞いて、父にはまた叱られてしまった。

「私は、謝罪しなければならないようなことは、何もしておりません」

再度そう言うと、父は溜息をついた。

「そうだとしても、謝罪することで治めなければならないこともある」

さすがに、何度もやっていないと言ったアデラの言葉を、父も信じてくれたようだ。

それでも、陥れられてしまったアデラが悪いのだと、やってなくとも謝罪しなければならないときはあるのだと言う。

たしかにあのときは、油断していた自分も悪い。アデラもそう認めざるを得なかった。

「だから、今からでも謝罪の手紙を書いて、エスコートを頼め」

それでも、その父の言葉に従うことはできない。

「……嫌です。彼女に屈したくありません」

クルトに謝罪するのが嫌なのではなく、リーリアに負けるのが嫌なのだと告げると、父はしばらく沈黙した。

さすがに子爵家の娘に、侯爵家の娘であるアデラが謝罪するのは、あまり良くないと考えたのだろう。

「お前も頑固だな。誰に似たのやら」

「それは、お父様でしょうね」

即座にそう答えると、父は苦笑した。

そして今回だけは、他の者にエスコートを頼んでおくと言った。さすがにひとりで参加することは、許してくれないらしい。

(仕方ないわ。クルトではない人に頼んでくれるだけ、まだ良かったと考えるしかないのね)

父も頑固だが、娘に愛情がないわけではなさそうだ。

ドレスや装飾品など、レナードにもクルトにも関わらない色を選ぶのに少し時間が掛かったが、準備も万端だ。

(そういえば、お父様は誰に頼んでくれたのかしら?)

ふと、そう思う。

父は名前を明確には教えてくれなかった。

この国では、未婚の女性のエスコートは、未婚の男性のみと決まっている。

他国では兄や父など、縁戚ならば既婚者のエスコートも可能なのにと思うが、そういう決まりなので仕方がない。

従兄のエイダーが神殿に入ってしまったため、もう親戚内に未婚男性はいないはずだ。

父の知り合いの誰かに、頼んでくれたのかもしれない。

クルトでなければ、誰でも良い。

そう思っていた。

けれど夜会の当日に、迎えに来てくれた人を見て、さすがにアデラも驚いて立ち尽くす。

「……どうして」

「リィーダ侯爵に頼まれてしまってね」

そう言ってアデラに手を差し伸べたのは、レナードの兄のテレンスだった。