軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第66話 宝石の聖女

オーソクレース王国、私の部屋にて。

「うーん美味しい! やっぱりキセノさんのお茶は最高ですね」

「お褒めに与り光栄です」

「このお菓子も美味しいよジュリーナ。遠慮なくどうぞ」

「ありがとうございます! クルも美味しい?」

『キュッ』

お茶会を私とフェルドは楽しんでいた。本当は城内の庭園でやってもよかったのだが、綺麗に彩られた庭園で本格的な道具を使ってのティーパーティはなんだか落ち着かない。やはり私はこうして部屋の中で、お茶とお喋りを楽しむ会、といった具合のものが好きだ。

「こうしていると、アルミナでのことが嘘のようですね」

アルミナでの事件から、もう10日が経過していた。あれから諸々の後オーソクレースに帰った私たちだが、今日までの日々は実に穏やかだった。

「そうだね。アルミナからの使者も、まだ来る気配がなさそうだし」

あの事件を受けてオーソクレースの対応はというと、ひとまず『待ち』だそうだ。今後アルミナがどうするのかをアルミナ側が決めるのを待ってから動く。なので今はある程度準備しつつも基本は待機、なのでフェルドも比較的ゆっくり過ごせているようだった。

ちなみにサッちゃんも一緒だ。魔族の脅威は残っているということでオーソクレースに留まっている。しばらくは一緒に暮らすことになりそうだ。できればこれからも一緒にいられれば、賑やかでいいなと思う。

それより、やはり問題はアルミナだ。

アルミナがどうなっていくにせよ、オーソクレースが動くのはアルミナからの正式な表明があってから。緊急事態だった事件当日はともかく、それ以上の干渉は政治的に問題があるのだとか。

場合によっては「魔族と結託してアルミナを滅ぼそうとした」なんて言いがかりをつけられる恐れも……まあさすがにもう、あの国王がいなくなったのでそこまでの心配はいらないと思うけれど……

そう、結局あの後アルミナ国王は見つからなかったそうだ。魔物か、魔族に殺されてしまったんだろうとフェルドは言っていた。

国王に限らず、国内のあちこちで大臣や貴族たちの死体が見つかったらしい。『紅の宝玉』を持って逃げようとしたところを襲われてしまったのだろう。『紅の宝玉』を隠し持っていたりしなければ狙われることもなかったのに。

まあそういうわけで、アルミナは今、権力の中枢を失い、国としての形すら危うい状態だ。だが……

「おそらくもうそろそろ、アルミナに王子たちが帰還するはずだ」

そう。アルミナにはまだ、王族が残っているのだ。

数年前からとある理由で他国へ留学に言っていた王子。その付き添いの王妃。この2人がアルミナでの事件の報を受け、国に帰還するという。

国王がいなくなった以上は王子がその跡を継ぎ、それを王妃が補佐をしていくことになるのだろう。今後のアルミナはその2人次第。アルミナ国王のことを考えると不安はあるが……

「とはいえ戻ったとしても、事件によって国民に植え付けられたアルミナ王家への不信感の影響は大きいはずだ。それに関してもひと悶着あるだろうから、方針決定までにはさらに時間がかかるだろうね」

「じゃあそれまでは私たちもゆっくりできるってことですね?」

「まあね。アルミナにとっては幸運なことに、君が張ってあげた結界もあることだしね」

「フェルド、私だけでなく、私とクルが、ですよ」

『キュ!』

「おっと、ごめんごめん」

アルミナには今、あの時私とクルが作った結界がまだ残っている。渾身の力を込めて作った結界なので、効力は勿論持続力も相当なものになったのだ。まだまだ長く残ることだろう。その間にアルミナには今後のことを決めて欲しいものだ。

「『紅の宝玉』が今後どうなるか、アルミナの結界はどのように維持していくのか……決めなきゃならないことは山積みだろう。もちろん、君への報酬についても決めてもらわなくちゃならないしね」

「ですね。結界まで作ってあげたんですもの、たんまり頂きますよ」

と、その時。

「そうだ、アルミナからの報酬はともかくとして……」

そうしてフェルドが取り出した小箱。開かれたその中には『紅の宝玉』のネックレスが入っていた。

「ひとまず用意できた、僕からのお礼、その一部だ。受け取ってくれるかな?」

「もちろん! ありがとうございます」

私はそのネックレスを遠慮なく手に取り、首にかけた。やっぱり落ち着く。

それになんだかんだで、私は『紅の宝玉』の輝きが好きだ。単純ながら美しいと思うし、その輝きを身につけていると、自信が持てる。本当は宝石ではないのかもしれないけれど、だからといってこの輝きが消えるわけじゃない。

「似合ってますか? フェルド」

「ああ、とても」

そう言って、フェルドと笑みを交わし合った。

「とはいえ、今回の件では僕も力不足を実感したよ。いずれ国を背負う身としてこのままじゃいけない、もっと努力を重ねて……いつか、より素晴らしい贈り物を、君にしたいと思っているよ」

フェルドの言葉には何か含みがあったが、その時の私は、フェルドはストイックだなあぐらいにしか思わなかった。

「この後のことは大丈夫かい?」

「ええ、もちろん。しっかり仕事させてもらいますよ」

「頼もしいね。いつもありがとう、ジュリーナ」

「いえいえ」

お茶会の後には予定がある。私とて今日までずっと遊んで暮らしていたわけじゃない。平和とはいえ、いやむしろ平和だからこそ、フェルドと一緒に色々と仕事をして回っているのだ。

今日はモース村に赴き、その後の瘴気についての調査をする。とはいえ原因は取り除いたので一応の確認程度だ。主目的はむしろモース村の皆があらためて感謝を伝えたいと招待してくれたので応じた……といった形。ありがたい話だ。

私はそっと、胸の『紅の宝玉』を撫でた。

宝石は、求められ、認められてこその宝石。逆に言うと石じゃなくとも、真珠のように美しさから宝石と呼ばれるものもある。

聖女もまた、周囲が決める呼び名だ。私は一度それを否定され、剥奪され、追放されたわけだが……

今は違う。求めてくれる人たちがいる、認めてくれる人たちがいる。

宝石の聖女。その呼び名を、誇っていきたいと思う。

この手の中の、紅の輝きと共に。