軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

96回目 ゲーム感覚

「シエラ。『ハイポーション』が手に入ったけど、アレスはこれで治るか?」

「ハイポーション!? まさか『ガチャ』ですか!? ガモン様のスキルはハイポーションまで出せるんですか!?」

「まあ、俺のスキルには違いないけど、ガチャじゃなかった。だが手に入ったんだ、取り敢えず使え!」

「は、はい! これがあれば、アレス君は完治します!!」

シエラはハイポーションを吸い飲みに注ぐと、アレスを少し抱き起こして、それを飲ませた。

ハイポーションはアレスの喉へと流れていき、アレスの喉が動くと、そこからの変化は劇的だった。

まず、アレスの全身から溢れ出した青い光が、アレスを包み込んだ。その光はアレスの失くした鼻や唇、そこには無い指の形も再現し、それが徐々に実体化していく。

俺はてっきり、アレスの失くした部分に骨が生え、肉が盛り上がって再生していくのかと思っていたが違うらしい。アレスの失くした部分は、ハイポーションによって魔法で創り出された、そんな感じに見えた。

「…………そんな…………!?」

「…………ハイポーションって凄いんだな」

再生されていくアレスを見て、絶句するシエラ。もしかしてシエラも初めて見たのだろうか? 絶句するその気持ちはよく解る。

「こ、これが『ハイポーション』!? ま、まさかランクが…………! ガモン様、他にハイポーションはお持ちですか? ぜひ、それを調べさせて下さい!」

「い、いや持ってない。ハイポーションは、一本だけ手に入ったんだ…………」

「そ、そうですか。…………それにしても、よく手に入りましたね。ガモン様のスキルは知っていましたが、流石にハイポーションが手に入るとは考えていませんでした」

「ああ、それは俺も同じだ。俺もハイポーションなんて物が手に入るとは考えていなかった。そもそも『魔法薬』を『ガチャ・マイスター』で手に入れないといけないと思ったのも、今日が初めてだ」

「どういう意味ですか?」

「…………俺が、最悪の大間抜けって話だ」

あのクエストが、『ストーリー・サブクエスト』が始まった当初、俺には焦りが無かった。確かに大変な事態ではあるし、期限も短い。

この時の俺が真っ先にした勘違いは、『このクエストの主役はシエラ』というものだった。

その勘違いの要因は、前に起きた『緊急クエスト』にある。あのクエストにおいて、そのほとんどを解決したのはバルタだ。逆に俺は、ガチャ装備を用意したくらいで、戦いの場では初めての恐怖に呑まれたりしていた。

俺は当初、この緊急クエストで敵と戦い、それを倒すのは俺の役割なのだと思っていた。しかしそれをやったのはバルタであり俺は役に立たなかった。つまりあれはバルタがメインのクエストだった。そう思った。

だから今回は、治癒魔法が使えるシエラがメインのクエストだと俺は思い込んでしまったのだ。

一番解らなかったのは、今回のクエストの内容が切羽詰まっていた事だ。何せクエストに与えられた期限が二日しかなかった。

その期限の短さと難易度を考えると、これは『緊急クエスト』で良かった筈なのだ。しかし出て来たのは『ストーリー・サブクエスト』だ。これはちょっと意味が解らなかった。だって依頼主は『天使』だぞ? しかも内容はアレスだけでなくアリアとアラムまでが死ぬという内容だったのだ。

この『緊急クエスト』と『ストーリー・サブクエスト』の違い、それがキモだったのだ。

おそらくだが、今回のクエストが『ストーリー』だったのは、俺がメインで解決すべきクエスト、もしくは俺の『ガチャ・マイスター』がなければ達成不可能なクエストなのではないかと考えたのだ。

この『ストーリー・サブクエスト』が始まった時、俺はシエラがメインだと思ってアレスの治療をシエラに任せた。だが、シエラの治癒魔法を見て、これでもアレスはある程度治るとは思ったが、二日後に迫る『死の運命』は越えられないと思った。なぜならそこには『アカメアリ』も絡んで来るからだ。

しかもアレスは、自身の指まで失くしていた。そしてこれを治すには『ハイポーション』が必要だとシエラが言った事で、俺は俺の役割に気がついた。

…………つらつらと言い訳を並べてみたが、俺は自分が嫌になった。何というゲーム感覚。これが現実だと解っていない大間抜け。人の命が掛かっているのにメインがどうとか、気分は最悪ってやつだ。

「俺は俺の間抜けっぷりが本当に嫌になったよ。そのせいでシエラにも苦労をかけた」

「いえ、私は私の出来る事をしただけですので、気にしないでください」

「…………う。…………っ!」

俺とシエラが話している横で、ハイポーションによるアレスの治療が終わったらしく、アレスが目を覚ました。

先程までは大火傷を負っていたので解らなかったが、アレスは真面目そうな青年で、鍛えているのか、その体つきは細いがしっかりと筋肉がついている。いわゆる細マッチョってやつだ。

「…………あっ!」

アレスは上半身を起こして自分の身体を触りながら確認すると、俺達に居る事に気がついたのか、素早くベッドを降りて床に座り、深々と頭を下げた。

「俺を治療してくれた事は感謝しています! ですがお願いです! この治療費の支払いは俺だけで勘弁してください!! 俺がどんな事でもして、必ずお支払いしますので!!」

…………完治したアレスは、どうやら思い込みが激しいタイプのようだった。