軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

602回目 『方舟』の守護者

☆5『神罰の鎖』が弛められると同時に、その瞬間を待ち構えていた幻獣と狂った神獣が『方舟』から飛び出した。

飛び出て来たのは、灰色に黒の豹柄で上顎から突き出した二本の牙を持つ獣だ。レティアを介して女神ヴァティーからもたらされた情報によると『グレイブ・ダガーキャット』と言うらしい。

ヴァティーのいた次元の世界では、時にドラゴンすら捕食する、最も危険な獣型モンスターとして知られていたと言う。

もちろん、そんな危険なモンスターが『方舟』に乗っていた訳もなく、これは『方舟』に乗っていた近しい種族の猫科の獣が、『方舟』の中に充満する瘴気で特殊な進化をしたのだと予想されていた。

しかしこのタイミングで厄介な幻獣が出て来た事に変わりは無い。それでも、幻獣一体だけならばまだマシである。一緒に出て来た狂った神獣は、羽アリのような神獣と宙を泳ぐ魚型の神獣が複数体であり、『グレイブ・ダガーキャット』を除けば、倒すのはそう難しくは無いだろう。

更にレティアによると、肝心の『グレイブ・ダガーキャット』の闘技場には頼れる男バルタが、双子の妹達と共に向かったようだ。

バルタが戦ってくれるのならば、勝利は固いだろう。俺達は安心して、自分達の仕事が出来るってもんだ。

そして、『方舟』に巻き付いた『神罰の鎖』が再び締められてキッカリ一分後。『方舟』に巻き付いていた『神罰の鎖』が唐突に消え失せた。

「いくぞ皆! 撃てーーーーっ!!」

俺の号令と共に、準備をしていた全員の攻撃が『方舟』の一点に集中して放たれた!!

轟音を響かせながら『方舟』に突き刺さる矢に銃弾に各種魔法。その全てがガチャアイテムを使った物か、ガチャアイテムによって強化された物だ。

だがその殆どが『方舟』の結界に弾かれているが、俺達は手を休める事無く攻撃を加え続ける。やがて戒めを解かれた『方舟』から『狂った神獣』が何体か出始め、仲間の数人が照準を飛び出して来た神獣に合わせ始めた時、ガラスが擦れる様な音と共に結界の一部が崩れる!

それと同時に、俺達は『方舟』の周辺から離脱し、俺は声を張り上げた!

「やれ! レティア!!」

『行きます! 『レナスティア・キャノン』! 発射!!』

離れた場所に浮かぶ『◇天空城『レナスティア』』から、凄まじい魔力の波動と共に光の本流が放たれた!!

――――ぐぅっ!? 間近で見るとこんなに凄いのか!! 『レナスティア・キャノン』が直撃した『方舟』を中心として、轟音と共に周囲が真っ白に染まる。

「うおぉぉぉっ!? 近すぎる! 船が壊れるぞ!?」

「なんとか堪えてくれ!!」

俺達は暴風と共に広がる衝撃波に小舟を翻弄されながら、何とか吹っ飛ばされない様にしがみつく。『レナスティア・キャノン』を発射する前に小舟は退避させていたのに、その距離が足りなかった。

「ぐぁぁっ!? 鼓膜がやられそうだ!! ここまで凄まじい衝撃だとは!!」

「少しずつで良い! 離れろ!!」

小舟から攻撃をしていた俺達は、衝撃波に巻き込まれて墜落しない様に、ジリジリと下がっていった。

と、その時。『レナスティア・キャノン』から放たれる光の奔流により真っ白に染まっていた世界が、ふと暗くなった。

いや、それは錯覚だ。『方舟』の内側から溢れる凄まじい殺気と、禍々しい瘴気が、世界の色を反転させたかの様に俺達に錯覚させた。

そしてソレは、光の奔流をものともせずに『方舟』に空いた穴の縁に手を掛けた。

ゆっくりと出て来る闇を纏ったソレは、『レナスティア・キャノン』の中を割って出る様に姿を現した。

その姿はドラゴン。漆黒の瘴気を纏い、赤く燃えるような眼を『レナスティア』へと向けた黒龍は、その長い首を光の奔流の中へと潜らせて、漆黒の『ドラゴンブレス』を吐き出した!!

「な、何だアレは!? 嘘だろ! 『レナスティア・キャノン』を、押し返してやがる…………!!」

白い奔流と、黒い奔流がぶつかり合い、それは徐々に『レナスティア・キャノン』を押し返し始めた。

それと同時に、光の奔流の中にあって見えなかった黒龍の全貌が明らかになる。

それは正に『漆黒の龍』。巨大な体躯を支える大きな脚で立ち、筋骨隆々とした腕の先には鋭い爪を、背中には巨大な翼を持ち、長い首の先にある頭は両脇に二本、額に一本の角が生えていた。

身体の至る所からは瘴気を取り込む器官があり、そこから周囲の瘴気を吸い上げている。どうやらあのドラゴンブレスは、その瘴気のエネルギーで放っていると見て取れる。本当にそうであるならば、あのドラゴンブレスは無尽蔵に吐き出せる。なにせ『方舟』は、巨大な瘴気の貯蔵庫でもあるのだ。

『グルル…………! ガアァァーーーーッ!!!!』

そして遂に、ドラゴンブレスが『レナスティア・キャノン』を喰い破り、光を裂く様にして『◇天空城『レナスティア』』まで届いた!

未だ威力の衰えないドラゴンブレスは『レナスティア』の結界すらも貫いたが、この結末を予想していたのであろうレティアが『レナスティア』をドラゴンブレスの軌道から僅かにずらした事で、真正面からの直撃は避けた。

だが、正面では無いが当たった為に、『◇天空城『レナスティア』』の前方の一部が砕かれ、崩れたのが見えた。

「そんなバカな! 『◇天空城『レナスティア』』は☆5のクラッシュレアだぞ!? レティア! 急いでそこを離れて被害状況を調べろ!!」

『かしこまりました』

「お、おいガモン! 奴さんの様子がおかしいぞ!?」

その声に顔を上げて黒龍を見ると、黒龍の周囲からは瘴気が消え失せ、黒龍がボタボタと滝のような汗を流しながら肩で息をしているのが見えた。

…………なるほど、向こうに取っても今のドラゴンブレスは切り札だった訳だ。なら、俺達のやる事は決まっている。

あの黒龍を、討伐する!!