作品タイトル不明
579回目 神聖樹の森
『はじめましてであるな、この世界の人間よ。ワシの名はジュダイン。樹木の神をやっておる者である。…………フム。ガモンと言うのは?』
「お、俺です…………」
『お前か。では、時間も無い事であるし手短にいこうか』
「…………えっと? 時間、無いんですか?」
『ウム。この分体を作るにあたって、注ぐ神力は極限まで削ってあるのだ。そうでなければ、ワシの身体は勝手に成長を続け、無限に広がっていくのでな。この世界を飲み込んではマズかろう?』
「マズいですね。お気遣い、ありがとうございます」
「頭を下げずともよい。そのせいでワシの意識がある時間も限られておるでな。ゆえに手短に行こう。…………そうそう、ワシの意識が無くなったならば、この森は好きに使って良い。忘れぬ内に言っておく」
…………聞き間違いでなければ、いま樹木とは言え自分の、それも神の体を木材にして良いって言ったのか?
色々スケールがデカ過ぎるだろジュダイン。素直に解りましたって言えねぇよ? まぁ、ありがたく使わせて貰うけども。
『さて、まずはこの地の事だな。解っているかも知れんが、ワシはこの大陸の全土に根を張った。ゆえにこの地はすでに神聖な地となっておる。瘴気の影響を受けない、とまでは言わんが瘴気に負ける事は無い。実際、この大陸を満たしておった瘴気は、ワシが粗方は喰らい尽くしたでな』
「…………確かに、ジュダイン様の言う通り、この地からは既に瘴気を感じません。逆に大聖堂の様な、神聖な力に満ちています」
森に目を向けたシエラが言う通りだ。俺も下に広がる一面の森を見てみたが、神聖な気配が満ちていて若干森が輝いて見える程だった。
『この地を小分けにし、『方舟』と戦う際の拠点とすれば、瘴気に負けて不利になる事は無いであろう。それにワシも神であるでな、この地に引き込めば魔王や幻獣もある程度は弱体化もするじゃろう』
「それは…………! 本当に助かります!」
一応、戦いの場は☆5『闘神『ガルネシア』の闘技場』を使うつもりではいるが、『方舟』との戦いで何が起こるかなど予想はつかない。
場合によっては待機している者達が襲われる事も考えられる為、それに備えられるのは本当にデカいのだ。
『…………ムゥ、思ったよりも時間が持たんな。もう少し力になってやりたいが、もはや意識が持たぬ。…………小さな者達よ。お主らの健闘を祈っておるぞ……………………』
「…………えっ!? もう!?」
突然の時間切れ発言に驚く俺達が見上げる先で、巨大なジュダインの顔はその動きを止めて、両眼に輝いていた緑色の光が消えた。
これは別に、ジュダインの死ではない。ジュダインは、ほんの僅かに持っていた神の力を使い果たし、二度と目覚めない程に深い眠りについただけ、ただの樹木へと戻っただけなのだと、理解できた。その証拠に…………。
『ムゥ。ガモンよ、この森を鑑定してみよ』
そうドゥルクに言われて鑑定してみると、そこにあったのは☆5『◇神聖樹『ジュダイン』の森』ではなく、☆5『◇神聖樹の森』とあった。ジュダインの名前が、ガチャアイテムの名前からすらも消え失せているのだ。
樹木の神『ジュダイン』はもうここに居ない。だが、その身体である神聖樹は、丸々大陸一つ分残った。
『いやはやしかし、信じ難い光景じゃな。これがあの西の大陸か? もはやここに住んでおった者達でさえ、違う場所だと口にするであろうな』
「それは…………そうかもな」
西の大陸を、俺はあまりよく知らない。確かに『ヒトガミ』とはここで戦ったが、いくら縦横無尽に動き回ったと言っても大陸から見れば猫の額のようなものだ。
その後も、この大陸で生き残った人々を移住させたりと活動はしたが、その時に見た感じとしては、何と言うが、岩や砂漠が多かった。
もちろん森はあるし、川もデカイのがあるのだが、乾いた土地や、茶色い岩山も多く見ていたのだ。広大な砂漠の上を飛空艇で飛んだりもしたしな。
だからそこから考えるなら、この光景は有り得ない。地平線まで森で出来ている光景なんて、俺は初めて見た。
「…………まずは調査だな。森に降りてみよう」
地面からあまりにも高い位置にいた俺達は、飛空艇『アベルカイン』を呼び寄せて、森へと降りてみた。
森が深い上に広すぎて、飛空艇を完全に降ろせる場所が無かった為、途中で飛び降りる事になった。帰りの為にも後で一部刈り取って、飛空艇が降りられるようにしておこう。
そうして俺達は『神聖樹の森』を調べ始めたのだが、…………どうやらこの森が『クラッシュレア』の位置づけだったのは『ジュダイン』の名前からと言う訳でもなかったらしい。
この森。調べれば調べる程に、とんでもない可能性を秘めた、まさしく『神の森』だったのだ。