軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

572回目 その日に相応しい教会

俺とティアナの結婚式。そしてそれに続く合同結婚式を世界に周知してから、準備に二ヶ月近く掛けて、とうとう準備が整った。

合同結婚式の参加者は男女合わせると二百人に近くなり、その種族も様々。人間が一番多いが、エルフやドワーフにマーメイドや獣人と、本当に様々な種族が入り交じっていた。

会場となるのはもちろん☆5『◇天空城『レナスティア』』の上なのだが、その場所は広大な『レナスティア』の一角。四季折々の花々が広がる場所が選ばれている。

様々な花に囲まれたその場所には、今は巨大な教会が建てられており、大きな噴水のある広大な広場を中心として、三つの教会があった。

「本当に凄いなこれ。俺、こんなの初めて見たぞ」

「本当に素敵ね。だけど、ドアルガンはガチャ書籍にあった『世界の美しい教会』って言う本を参考にしてデザインしたって言ってたわよ? ガモンの世界には、こういう教会もあったんでしょ?」

「そうかも知れないけど、俺は見た事無いし詳しくもないからな。それにしたって、こだわり過ぎだろう? 今一番忙しい筈のドワーフの長が何してるんだ」

「いい息抜きになったって、本人は笑っていたみたいよ?」

「息抜きでこれかよ。まぁドアルガンの冗談なんだろうけど」

この場にある三つの教会の内、一番大きいのは広場から見て正面にある教会だ。全体のデザインだけでなく、装飾もステンドグラスもとても美しい物になっていた。この中に、俺とティアナの結婚式の会場となる大聖堂がある。

ドアルガンが指揮を取り、自ら腕を振るったのがこの教会だ。他にも手の空いたドワーフ達が交代で建設に来たようで、世界でも類を見ない程に素晴らしい出来映えになったと胸を張っていた。

もちろん素晴らしいのは、広場を囲むように両隣にある教会も同じである。

右側にある教会は、花を模した装飾に溢れており、まるで教会そのものがウェディングドレスを着ているかの如く華やかな教会になっている。

ここは今日の合同結婚式に参加する花嫁達の控え室でもあるのだが、まさに美しい花嫁達が出て来るのに相応しい教会だ。

そして広場から見て左側にある教会は、カッチリとしたシンプルながらも凛々しい美しさのある、真っ白な教会である。こちらは合同結婚式に参加する新郎達の控え室だ。

広場を挟む様に建てられた二つの教会が控え室なのは、真ん中にある広場こそが合同結婚式の会場だからである。

「じゃあガモン。私は向こうに行って来るわね? お仕事がんばって。でも、明日は私達の結婚式なんだから、程々にね?」

「俺だって本当は休みたいよ。…………まぁ、今はそうも言ってられないけどな。『方舟』との決戦までにやる事が山積みだし」

「なんなら、ガモンも少しだけ一緒に来る? 綺麗な花嫁さん達がいっぱい居るわよ?」

「やめとくよ。明日の主役達によろしくな」

「うん。伝えておく」

そう言って、ティアナは花嫁達の控え室にもなる右側の教会へと向かった。

今日のあの場所は、きっと明日にも負けないくらいに華やかだろう。今日のあの場所では、明日の主役たる花嫁達が、自分の着るウェディングドレスを見せ合っているからだ。

ティアナも花嫁達に誘われて、その華やかな場所に行ったのだ。

こういった時の、彼女達のテンションは凄いの一言だ。実は俺は、それを目撃した事がある。

あれは二ヶ月前。合同結婚式の衣装をレプラコーン達が作ると決まった後の事だ。

俺はレプラコーン達に頼まれて、合同結婚式に出る者達を集めて、衣装についての打ち合わせをする場を設けた。

男達の方はいい。実に簡単に決まった。男に似合う衣装はさほど多くはないし、色や家紋などのこだわりのデザインを少し話し合う程度で終わったのだ。

しかし、女性達の方はそうはいかない。

彼女達に取っては一生に一度の事であり、しかもそれは世界を巻き込み、本物の神々に祝福される物である上に、全国放送までされるのだ。

自分自身にとって最高の一着を彼女達が求めたのは、無理からぬ事である。

それはこの世界で、それも世界との交流などなく自分達の周囲だけに閉じ籠って生きて来た男性側には理解出来ない部分だった。

そもそも結婚式自体が仲間内だけでやる簡素な飲み会程度なのが常識であり、合同とは言え、このような大々的な結婚式など、王族や大領主でもない限り縁の無いものなのだ。突然自分達に降り掛かった事態に、男達には戸惑いの方が大きかったのだ。

しかし、俺には解る。恵まれ過ぎた日本育ちで、結婚の経験は無いが、結婚式に出た事なら何度かあるし、花嫁達の心情も何となく解る。

だからやってしまった。ガチャから出たウェディングドレスや白無垢などを大量に並べた、花嫁衣装の展覧会を。これを参考にすれば良いんじゃない? 程度の軽い気持ちで。

結果は解るだろう? そりゃもう凄い事になりましたよ。

他のドレスやら衣装やらを際限なく並べさせられ、ただでさえ人数も多かった上に、作る側のレプラコーン達までもがノリノリになってしまった、ファッションショーの無限地獄に突入しましたよ。

女性達は楽しかったのがよく解る程にツヤツヤしていたけど、意見を求められた男達は軒並み真っ白に燃え尽きていた。

きっと今。ティアナが向かった花嫁達の教会は、あの時を越える程の華やかさが溢れかえっているに違いない。俺は無意識に花嫁達の教会を大きく迂回して、その場を後にした。