軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

560回目 悪戯神『ロゥギィ』

始まりは『神の死』だった。

この世に存在する全ての物に滅びがあるように、不死に思える神にも滅びは訪れる。それは酷くゆっくりとしていて、永劫とも思えるほどに遠くて遅々としている。だから『最初の神』である創造神の死は、死を望むロゥギィにとって希望だった。

『ボクらは『最初の創造神』が創った世界に生まれた。ボクらが生まれた時には既に、世界が創られてかなりの時間が過ぎていたし、初めて意識を持った時の記憶は、もう気が遠くなる程に時の彼方だけどね』

『意識を持った時の最初の記憶か。…………僕も覚えているよ』

気が遠くなる程に遥か時の彼方にある記憶。人などの生物が生きるのとは異なる概念にいる神々だが、それが遥か遠くに過ぎ去った物である事は変わらなかった。

『神の生は長過ぎる。そう思った事はどの神でもある筈だ。しかも、その死は中々訪れない。仮に殺されたとしても魂はそのまま世界に残り、新たに同じ存在として再生する。しかも前の自分の記憶までが、魂にうっすらとだけど、こびりついて剥がせない。これじゃあ、とても『死』とは言えない』

『…………完全に消滅したいのか? そんな事、世界が認めると思えない』

『そうだよ、手が届くとは思えない事だ。でも、だから欲しいだろ?』

正直、ロゥギィの言っている事はダイスにも理解できる。実質的に終わりが無い事に辟易した事など、神であれば誰でも覚えがある事だろう。

『…………それが、君の望みか? 死ぬ事が?』

『完全なる死。死は安らぎだよ。人間を見ていれば解るだろう? たったあれだけしか生きられない生物が、何故あんなにも輝いて見えるのか、何故あんなにも暗くなるのか。あれは終わりがあればこそだよ。すぐに死んでしまうから、あんなにも明滅する。ボクはそれが羨ましく、妬ましい』

『…………生物としての死、か』

『ちなみにボクの好みは眠るような死だよ。ただ安らかに、また次があるかの様に消えていく。それこそ安らぎだよ。その瞬間はどれほど幸せなのだろうかと、もう何度夢想したか解らない』

安らかな死が、果てしなく遠いからこその憧れ。口には出さないが、それはダイスにも解らなくはない憧憬だった。

『ボクは、創造神が死んだ時に『神にも死があるのだ』と思った。長い長い時の果てだとしても、それが『ある』のであれば待てばいい。神にも終わりがある。全てが消え去る時が来る。…………そう思っていた…………!!』

『でも、それは違った』

『そう、違った。創造神は確かに死んだし、それに伴って世界は壊れ始めて、立て直すのが大変だったよね? でもさ、創造神は 生(・) ま(・) れ(・) 直(・) し(・) た(・) 』

そう。輪廻転生でも復活でもなく、創造神は生まれ直したのだ。

それはロゥギィやダイスだけでなく、多くの神々が目撃し、感じとった。死の果てに消え去る筈だった創造神の魂は、肉体が朽ちてしばらくから再び肉体を持った。

そこにいたのは、前の創造神と同じ個体でありながら、創造神として生きた記憶だけが無い、生まれたての神だった。だが、神界にいた全ての物が一瞬で理解したのだ。これは創造神と全く同じ者であると。

『あの時にボクは悟ったんだ。この世界の一番最初の神は創造神じゃない。この『世界そのもの』だと。創造神は、一番最初に意思を持っただけの、世界に創られた魂だった』

これに思い至ったからこそ、ロゥギィの目的は『世界の破壊』になった。世界を壊さない限り、自分に死が訪れる事は無いと解ったから。

『…………何故だロゥギィ?』

『何がだい? 世界を壊したい理由なら、十分に話したと思うけど』

『違う。何故それを僕に話す。力を封じられてはいても、君ならここまで本心を話す必要は無いだろう? いくらでも誤魔化せる筈だ。だってそれが、君の本質だろう? それとも、この話自体が僕を騙す為の罠なのか?』

そう口にしながら、ダイスはロゥギィの言葉に騙す意図が無いことを確信していた。ロゥギィが語っていたのは本心であり、ロゥギィは今、言わなくていい罪まで自ら自白した。それが、ダイスを困惑させていた。

『解っているんだろう? ボクは本心しか語っていない。それにボクの罪が増える事は、君の望む所だろう? 君はボクの力が欲しくて、ボクを殺しに来たんだから』

『…………!?』

『いいよ。殺して持って行きなよ。ボクが復活するまでの間なら、自由に使えるから』

『…………いつから気づいていたんだ?』

『多分、君達がこの方法を考える前からだよ。この神界の神々の中で、一番最初にガモンに期待をしたのは、ボクだよ。…………あの時、滅びるしかない世界を救う方法を必死に考えるガモンの頭の中を、ボクは覗いていたんだ』

その時のロゥギィの目的は、いかにして我聞の心を砕くかであった。何なら、心を砕いた後は自分の手駒にしようとすら考えていた。

そしてちょうどその時、我聞は『方舟』と戦う為に、世界を作り変える方法を考えていたのだ。

ロゥギィは、この事実に衝撃を受けた。

自分の都合の為に『世界を作り変える』。たかが人間がこの発想を持ち、更には本気で実現しようとしている事に、ロゥギィは自身の長い時の中でも一番の衝撃を受けたのだ。