軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

542回目 北の極龍『ディルアーク』

分厚い雲の渦にぽっかりと空いた穴は全体から見れば小さい物だが、俺達からすれば、ジュエルドラゴンに乗った状態でも十分に通れる程に広かった。

真っ白な雲の壁は常に動いているものの、俺達が進む道だけは避けて回り込んでおり、何故かその道は明るかったので壁である雲の動きがよく解り、何とも不思議な光景になっていた。

巨大な雲を突き抜ける一本道。

その先に待つのは『双極龍』の片割れである北の極龍だ。俺もアラムも、そりゃ緊張もする。神々と何度か会っているのに、神よりは下である龍に会う方が緊張するのも変な話かも知れないが、人の姿を取っている神よりも、得体の知れない龍の方が何か恐いんだから仕方ない。

まあ、そんな中で能天気な奴もいるんだけどな。

『フハハハハッ!! 雲の中をこうして進むのも良いものだな!! 北の極龍とやらも中々にやるではないか! まぁ、我ならばこの程度は容易いがな!! フハハハハッ!!』

アラムを背中に乗せて飛ぶカイザー・ジュエルドラゴンの『カイザー』は、もうずっとこの調子である。

コイツは自尊心が異常に高いんだよな。カイザーって名前に付いてるからか、自分をドラゴンの頂点だと思っている。

いや、実際に強いんだけどね。能力的にもジュエルドラゴンでは一番だしな。それに、カイザー・ジュエルドラゴン固有の能力として、一度でも会った事のあるジュエルドラゴンのコピーみたいな眷族を、自身の魔力を使って召喚する事もできる。

一個体に一体しか眷族を出せないが、出会うジュエルドラゴンが増えれば増える程、召喚できる眷族も増えていく上に、カイザー・ジュエルドラゴンは周囲の魔力を取り込む事も出来るので、召喚の為の魔力も、余程の事が無い限り尽きる事がない。

なので、カイザーはその気になればジュエルドラゴンの軍勢を召喚できるのだ。これは相手が『幻獣』でも戦える程に強力な能力だ。勝ちきれるかは、相性にもよるだろうが。

雲の一本道を通ることしばらく。ついにその出口が見えた。

「うおぉ…………。これは予想外だな…………」

「あったかい…………」

雲の道を抜けた先は光に満ちており、グラックがバリアを解いたのか、フワリとした暖かい空気が頬を撫で、柔らかな花の香りが鼻腔をくすぐった。

北の極点、ここはその筈なのだが氷になど覆われておらず、春のような空気に包まれていた。

広い海に氷など無く、海の真ん中から柱のように岩がつき出しており、その先端はとても大きく広がっている。

あの細い柱でどうやって広い島のような先端部を支えているのかも気になるが、その先端部の大地が色鮮やかな花々や花樹に溢れているのはもっと気になった。何気に桜の木もあるし。

そして、その花々の中心には、真っ白で美しい毛に覆われたドラゴンが、花畑に身を横たえて頭を持ち上げていた。

黄金の瞳でコチラを見るドラゴンは途轍もない存在感を放っており、その身に纏っているのは、間違いなく『神気』だった。その迫力ある姿には、威勢の良かったカイザーも黙ってしまう。

「…………『龍神』だったのか」

『お主ら、ガモンとアラムであろう? 『運命神』様より話は聞いておる。こちらへ降りてくるが良い』

北の極龍が発した重厚な声は穏やかであり、敵意など少しも感じさせなかった。だが、その存在感だけは途轍もない。…………って言うかダイス。話を通しておいたなら、一言くらい言っておけよあの野郎!

俺達はジュエルドラゴンに言って 北の極龍の前に降り立った。

目の前にすると、北の極龍は冗談みたいにデカイ。その体から漏れ出る魔力もとんでもないし、その黄金の眼光は、敵意がなくても俺達を萎縮させる程の鋭さがある。

コチラも向こうも戦う気などない。俺とアラムは、まずはジュエルドラゴンの背中から降りて、ジュエルドラゴン達を宝石に戻した。

『…………待っていたぞ、この時を…………! もうどれだけの途方もない年月を過ごしたか。我らが役目も、ようやく終わる時が来たか…………』

北の極龍はそう言いながら眼を閉じて、その身を震わせた。涙は出て無いが、その様はますで泣いているようだった。

「あ、あの…………?」

『おおそうだ。まずは自己紹介が必要か。我ばかりがお主らの名を知るのでは不公平であるでな。我が名は『ディルアーク』。北の地よりこの星を守護しておる『双極龍』が一体である』

北の極龍『ディルアーク』はそう名乗りをあげて、俺達を見下ろしていた。