軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

53回目 タカーゲ商会の会頭

「…………え? ちょっと、マジで?」

「うん。ホラ見てご覧よ。みんな使っているだろ? 大人も子供も老人も。みんな普通にアレを使うんだよ」

タカーゲ商会の一階。その壁際にある場所で、俺はティムから信じられない説明を受けていた。

今、俺達の前にあるのは四つの魔法陣。そして天井を見ると、魔法陣の真上だけには天井がなく、空いていた。覗いてみて真上に見える天井は、二階をとばして三階のものらしい。

これが何なのかと言うと、右側二つが『飛昇盤』。そして左側二つが『下降盤』と言う魔道具の一種である。

そして俺達の目の前では、子供と手を繋いだお母さんや、腰が曲がって杖をついているおじいさんなどが、『飛昇盤』に乗って上に飛んでいったり、逆に上から下に落ちて来ては『下降盤』の上で一瞬ホバリングして安全に着地している。

いやいや、どういう事だよ。…………ってまぁ、理屈は解るよ? エスカレーターとかエレベーターとかを異世界で再現したらこうなった、ってのは想像に難くない。

でも飛ぶか普通? エスカレーターの方が作り易いんじゃないか? エスカレーターの構造は知らんけど。

「とにかく、会頭はいま三階に居るらしいから、これを使って上に行こう。これなら二階を飛ばして三階に行けるから」

「…………階段もあるんだろ?」

「あるけどコッチの方が早いから。それに慣れといた方がいいぞ? これって元々はダンジョンにあった物を解析して流用しているから、ダンジョンに行けば同じのがある。どうせなら、安全な場所で練習できた方がいいだろ?」

「えぇ…………マジで? 怖いんだけど」

「まあ何も難しくはありやせんぜ。ただ乗って魔力を足から流すだけでさぁ。魔力の扱いには旦那も慣れてきているでしょう?」

「お、おう」

確かに俺だって、魔力ってもんがあるこの世界に来てから魔力の操作ってもんを練習している。最初は魔力何てなんなのか解らなかったが、ガチャ装備が俺から勝手に魔力を抜く感覚があったので、ティムやバルタの指導の元で多少使えるようにはなっている。魔法は全然使えないけど。

つまりあとは度胸だ。習うより慣れろ。取り敢えずやってみよう! の精神で乗り切るしかない。

「よし! やってみようじゃないか!」

俺の気合いの雄叫びに、ごく自然に上から飛び降りて来た少年がビックリして俺を見たあと、首を傾げた。ちょっと恥ずかしかったが、気にしたら負けである。

俺はいまだにチラチラとこちらを見る少年と目を合わせないように『飛昇盤』に乗って魔力を流した。

すると『飛昇盤』が一瞬だけ光り、俺の体から重力が消えた。そして俺の体は、軽くジャンプしただけで上の階まで飛び上がり、吸い寄せられるように三階の『飛昇盤』の上へと降りたのだった。

「…………アレ? これメッチャ楽しい!」

……………………その後、俺は『飛昇盤』と『下降盤』の間を数回往復して遊んで…………ゲフンゲフン! …………練習した。

無重力で飛び上がるのも楽しいのだが、飛び降りて一瞬ホバリングするのも悪くない。あれだ、車とかで急な坂道を下る時に似ている。タマヒュンって言うんですか? …………フフッ、嫌いじゃないです。

しかし、何度も繰り返しては他のお客さんの迷惑になるので、俺はもうちょっと遊びたかった気持ちを押し止めて、タカーゲ商会の会頭へと会いに行った。

会頭はいま三階に居ると言っていたが、バックヤードの奥で仕事をしている様で、ティムがいる事もあって俺達はすぐに奥へと通された。

奥の部屋はいくつかの部屋が連なった形をしており、会頭が居ると思われる部屋へと通じる場所には秘書の女性が机に座って仕事をしていた。

そして、いかにも出来る女という雰囲気がある彼女はティムの顔を見るなり立ち上がり、俺達を出迎えてくれた。

「…………! これはティム=カラーズカ様。カラーズカ侯爵様より、お越しになる旨を聞き及び、待っておりました。会頭もすぐにお会いになると思いますので、少々お待ち下さい」

「わかった」

ティムが返事をすると秘書の女性は部屋の中へと入り、すぐに出て来て俺達を中へと促した。

そして俺達が中に入ると、そこには恰幅がよくて少し髪の毛が薄くなった男性が、席を立って俺達を出迎えてくれた。

そこは中々に立派な部屋で、会頭が使うのであろう大きく重厚な机の他に、客の対応も出来るように大きなテーブルと、それを囲うように大きめのソファーが並んでいる部屋だった。

「おおっ、これはティム様。お元気そうでなによりです」

「ゲンゴウ殿も元気そうだね」

「いやいや、最近はめっきり老けましてな。ティム様の若さが何よりも羨ましいですわい」

ニコヤカにティムと挨拶を交わす気のいいおじさん。どうやらこの人が、タカーゲ商会の会頭で間違いないようだ。

「積もる話はありますが、なんでもワシに頼みがあるとか。大体の事情はカラーズカ侯爵様のお手紙で存じてますが、うちで面倒を見てほしいと言うのは、どちらの方ですかな?」

そう言いながらも、ゲンゴウの眼は既に俺を見ていた。当然だな。ティムとバルタは最初から除外として残るのは俺とシエラだ。

カラーズカ侯爵から手紙を貰っているのなら、俺の事を少しは聞いていると言う事だ。なら性別くらい分かっているだろうし、俺の一択である。

「えっと、始めまして。ガモン=センバと言います。よろしくお願いします」

「ガモン殿ですな。ワシはゲンゴウ=タカーゲですわい。他ならぬカラーズカ侯爵様よりの頼まれ事ですからな。この街で衣食住の心配はせずに済むように、取り計らいますわい」

おお、取り敢えず住むところは出来そうだ。まあダメならダメで、俺には最後の手段『◇キャンピングカー』があるけど、どうせならちゃんと街で暮らしたいからな。住む場所があるってのは、普通にありがたいよな。