作品タイトル不明
514回目 厄介な模擬戦
「チェスのルールだと白が先行。だから私達の誰かが動かない限り向こうも動けない。それはいいんだけど、向こうが大きなチェスの駒にしか見えないのは、ちょっと不利よね?」
ティアナがそう言いながら向こう側を示した。ティアナの言う通り、向こう側は巨大なチェスの駒が並ぶだけで何のモンスターが登録されているのかが見えない。
だが、それでも解る事はある。☆5『モンスター・チェス』は色の違いもあるが、基本として一種類の駒には一種類のモンスターしか登録できない。
例えば白の駒でポーンの『マスターピース』にゴブリンを登録したなら、白のポーンは全てゴブリンになる。そして登録出来るモンスターの強さは、駒の希少さに比例する。
つまり頂点はキングとクイーンで次点がナイト・ルーク・ビショップとなり、最後がポーンだ。なので格別に強いモンスターを登録出来るのはキングとクイーンだけになる。
翻って、ポーンに登録出来るのは比較的弱いモンスターと言う事になる。…………その『弱さ』がどこまでを示すのかは解らないが。
「トレマ・イオスの双子との会話で『コボルト』を狩りまくった話があったから、コボルトが入っているのは確定だろうが、相手はドゥルクも認める賢者のアリアだ。その情報を俺達が知っているのも折り込み済みで作戦を立てている筈だ」
「となると、ガモン殿はコボルトが白のポーンだと予想するのですか?」
「多分な。それすら引っ掛けだとしても、黒のポーンがコボルトなだけだからな、引っ掛けになってないものな」
「そうね、それだと予想通りにコボルトが出ただけになるものね」
せっかくの先行なのだから、動く前に色々と話してはみたが、結局は動いてみないと何も解らないので、俺達はまず動いてみる事にした。
そこで先ずは、アレスが先陣を切ったのだが、アレスは真っ直ぐに前に向かって飛び出した直後に、2マス先の左にあるマスへと移動し、止まってしまった。
それはつまりアレスの左手に浮かぶ駒、『ナイト』の駒が移動出来る場所である。つまり移動は、強制的に駒の移動出来る範囲になる訳だ。
…………だとすると、『キング』が表示されている俺は、常に1マスしか移動出来ない事になる。…………正直、とてもウザイ。これ、メッチャ面倒臭ぇ。
そして相手のポーンが動いた瞬間にポーンの駒が砕け、中から『ロックリザード』が出て来た。
やっぱりコボルトじゃ無かったなと、ならばコボルトは白のポーンだなと、俺はニヤリとした。しかし、数ターン後に動いたルークから『エルダーコボルト』が出て来た事で、俺達の予測が見事に外された事に俺達は動揺してしまった。
「クソッ! 絶妙なタイミングでバラしやがった!」
「思わず動きが止まってしまったわ。バラすタイミングも見事だったわね」
そしてターンが進んで行くのに比例して、この『モンスター・チェス』に掛かる制限も色々と解ってきた。
先ずは移動。これはターン制であり、自分が持つ駒の種類に応じた場所にしか移動出来ない。
移動は駒の種類によって変わり、それ以外のマスに移動出来ない。
これは結構キツイのだが、移動して相手の駒を取る、もしくは取られる。などと言う事はなく、敵を退場させたいのなら倒すしかない。
そして攻撃だが、コチラはマスに関係なく遠くまで攻撃が出来る上に、移動ターンにも関係なく攻撃できるのだが、自分の移動マスに至る範囲以外では、マスを通過する毎に威力が下がる事が解った。
これは敵味方関係なく起こる現象であり、黒のキングから出て来た『フェニックス』の、盤面全てを覆う程の炎ですら、離れたマスにいた俺にはまるで熱く無かった。熱すら感じない程に、無効化されていた証拠である。
そしてコチラはアレスが気づいたのだが、自分の移動出来るマスにいる敵への攻撃は威力が上がるらしい事も、判明した。
「なるほどな。確かにこれなら、幻獣が相手でも戦えそうだ。上手く使えば、幻獣相手に一方的に勝つ事も不可能じゃない」
☆5『モンスター・チェス』。ブッ壊れ性能の☆5に相応しい壊れっぷりだ。しかもこの模擬戦で、俺達が何とか黒のキングである『フェニックス』を倒して勝利したとしても、プレイヤーであるアリアには何のダメージもなく、何なら『白の駒』を使って『二戦目』に突入できるらしい。
やっと終わったと思ったら同等の戦いをもう一度とか、心が折れる事をされる訳だ。なんという鬼畜仕様だ。
流石に模擬戦でそこまでやる事もなく、この試合は俺達の勝利で終わった。
だが、かなり苦労した。モンスターの強さもそうだが、何よりアリアの駒運びが絶妙だったのだ。かなり翻弄された自覚がある。
「☆5『モンスター・チェス』とアリアの組み合わせか。これは確かに幻獣とぶつけても勝てるかも知れないな」
「しかしガモン様。それならば、盤外にいるアリアの身を護る事も考えないといけませんね」
シエラの言う通り、『モンスター・チェス』を操作している間、アリアは無防備になる。そこを突かれると終わってしまうので、アリアの防衛は考えないといけないな。
だが、それにしても面白いアイテムだった。これはモンスターを倒しても登録が消えたりもしないので、何度か模擬戦をやるのもアリだな。