作品タイトル不明
511回目 AAランクが望む報酬
AAランクの冒険者パーティーは貴重だ。ここまでの実力者になる冒険者がまずいないと言うのもあるが、そもそも、高ランクの冒険者ほど引退が早いと言うのも理由のひとつだ。
高ランクになればなるほど依頼の危険度は増す。それにともなって依頼料も跳ね上がるのだが、蓄えが増えれば増えるほど、危険な依頼をやりたくなくなるのは人情だ。蓄えがあるのに、そんな必要は無くなるからな。
大きく稼いで、家族を作って、あとは悠々自適に生活をする。
依頼の中で貴族に気に入られてその家に入ったり、報酬に貴族籍を望んで貴族になったりする者もいるが、これは割と稀である。
一番多いのは冒険者を辞めて、慣れない事業に手を出して失敗し、体力も気力も衰えた状態で復帰して死亡する。と言う道筋を辿る者だと言うのは、なんとも世知辛くて悲しくなる話だ。
おっと、話がそれたので元に戻す。何が言いたかったのかと言うと、AAランクの冒険者を雇うのは大変だと言う事だ。
「それで契約についてなんですが、どうしたもんでしょうね?」
集まってくれたAAランクの冒険者パーティーとフレンド登録した後、俺はレティアに頼んで天空城へと『亜空間ゲート』を開いて貰い、天空城の会議室へと全員を案内した。
そしてこれからの事、主にここにいる冒険者パーティーとの契約について取り決めを行う事にしたのだ。
だが、正直なところ少し困っている。アルグレゴには確かに頼んだし、実際に連れて来たからフレンド登録もしたが、『方舟』との戦いは約二年後となる予定である。
そりゃ準備が早ければ十全に備える事ができるのだが、相手はAAランクの冒険者パーティーだ。当然タダで拘束する事など出来ない。莫大な金が掛かるのだ。
だから本音を言えば、もっと後で来て欲しかった。できれば『方舟』が落ちてくる半年くらい前とか。それまでに使える金が減るのは、割と本気で困るのだ。俺のスキルがどんだけ金食い虫だか知ってるのか?
しかし、事はこの世界の存続に関わる事なので準備に手が抜けないのも本当だ。だからタダでとは言わないから、せめて良識の範囲内でお願いしたいものだ。
そんな事を考えながら恐る恐る振ってみた、契約についての話だったのだが、天下のAAランク冒険者パーティー達が提示した契約内容と報酬は、意外なものだった。
「この子達の求める報酬って、実は一緒なのよね。アタシが代表して言うけど、この子達が求めているのは、☆5『◇天空城『レナスティア』』の永住権なのよね」
「え? 『レナスティア』に住みたいの?」
「はい。俺達って結構有名なんで、中々落ち着ける家って持てないんですよ。どっかの街とかだと領主とか王族とかがウチに泊まれって言いに来るし、そうじゃなくても商人が押し掛けて来たり募集もしてない新メンバーが売り込みに来たり…………」
「知らない親戚だとか昔関係を持った女なんてのもザラだよな。俺じゃないが、赤子を抱えた風俗嬢が責任とれ! なんて言って来たのもあったよな?」
「ともかく、落ち着いて暮らせる環境が欲しいんですよ。ここなら、俺達もあまり目立たないだろうし」
…………けっこう切実? まぁでも分かる気はする。いわゆる有名税ってやつだな。それにしてもトラブルが多い気はするが。
「ここはガモンちゃんのスキルの上に成り立つ街だから、フレンド以外は暮らせないでしょ? それに設備も充実しているし、住めるならアタシだって住みたいくらいだもの。もう王都から引っ越しちゃいたい!」
それでいいのかギルドマスター。…………でも、『拠点ポータル』もあるし不可能では無いよな。王都にもフレンドが居ればチャットで連絡もつくし。
「実は俺達、貴族の護衛で『レナスティアの街』に来た事があるんだよね」
「え、マジで? ここに来るためにAAランクを雇った貴族がいるの?」
「仕方あるまい! 普通に考えれば空を飛ぶ大陸にある街など、警戒の対象でしかないからな!」
「モグモ! 結局なにも起きなくて、雇い主の貴族が報酬を値切り始めるまでが、様式美なんだな」
マジかよ、値切るなよ。ってか、国に応じて人数制限もかけてるのに、AAランクの護衛まで付けて来るとか、正気か?
どんな客が来てるのか何て把握してなかったから、少し驚いたな。報告が上がってないって事は、問題も起きてないんだろうけど。
まぁでも、彼らの永住権については特に問題もない。と言うか、エルドルデが保証するほどの信用できて強い冒険者が住み着くとか、メリットしかない気もする。
もちろん、永住権だけでなく他にも報酬は渡すが、彼らはそれの大半もガチャアイテムやガチャ食材、ガチャ書籍などの優先購入権を希望したので、これも受諾した。
この報酬に彼らはとても喜んでいたが、正直なところ罪悪感も少しあった。あまりにも安過ぎないかと。
…………まぁ、『レナスティア』に住んで一ヶ月後くらいに、ジャージ姿でコンビニで立ち読みしたり買い食いしたりしている姿を見て、その罪悪感も消し飛んだ。
…………だいたい『レナスティア』に住むのって、よく考えればタワマンの最上階に住むようなものだし、物凄い価値がある気もするから、これで十分に報酬になっているのかもな。