作品タイトル不明
490回目 目覚める『黒炎』に
飛空艇『ヒポグリフ』の中で、俺達は見張りを俺についていたレティアのキューブに任せて、ガッツリ休む事にした。
飯を軽く食べて、風呂に入って、寝る。
戦っている『大蛇八首』を信じるからこそ、半分交代で休むなんて半端な事はしない。奈落だって、いつ動き出すか解らないからな。
とは言え、普通に寝たなら熟睡とまではいかないので、俺のスキル倉庫に在庫として残っていた『安眠パジャマ』や『安眠ベッド』を出した。
このおかげで五時間程、俺達はしっかり眠って身支度を整え、戦いに向けて体を落ち着かせる事が出来た。
地上で戦っていた『大蛇八首』が敵に勝利して『ヒポグリフ』に回収されたのは、俺達が紅茶を飲んでいる時だった。
『おう、勝って来たぞ。その様子だと、お前らもちゃんと休んでいた様だな』
「ケト! …………かなりの激戦だったみたいたな」
俺達の前に現れた『大蛇八首』は皆ボロボロで、中には武器が折れていたり、尻尾が無い者までいた。ガチャ装備は折れたら消えてしまうので、あれは彼らが元々使っていた武器なのだろうが、どうやらメインとサブの両方を失ってもまだ足りない程の激戦だったらしい。
『敵の中に回復役がいやがってよ。いや回復だけじゃねぇな、盾役もいたし、あいつらがしっかりまとまってからはバランスの良いパーティーを相手にしているようで、中々に歯応えがあったぞ』
『虫三匹は合体魔法まで放って来じゃないですか。歯応えなんてものじゃありませんでしたよ』
『ハーピーはハーピーで、攻撃が一切通らなくなったりするし、こんなにキツかったのは久し振りだな』
いや、ボロボロの有り様ではあるが元気だなコイツら。どうやら、連携が取られると厄介であったようだが、一体でも倒してしまえば連携がガタガタになるので、割かし楽に戦えたらしい。
それでも、たった一体倒すまでに結構掛かったので、こんなにボロボロの有り様なのだ。勝負は回復役の『チョウ』の敵を倒した時に決まったらしい。
『まぁとにかくだ、『邪眼』まで使っちまったから、ワシらの出番はここまでだ。体力も魔力も残り少ねぇ上に、スキルが全部封じられている。この状態で出ていってもただ殺されるだけだからな。あとはガモン、お前さん達に任せるぜ』
「それが『邪眼』の反動か。解ったよ。元々、そういう約束で俺達は休ませて貰った訳だしな!」
大魔王との一戦分を休息に使えたのはデカイ。俺達は鋭気をしっかりとやしない、戦いが近い事を察してバフもかけてある。すでに万全の態勢だ!
そう、俺達の戦いの時は近い。あの黒炎の中で脈打つように明滅を繰り返す魔力が、段々と大きくなっているのだ。
だが、このまま流される様に次の戦いに行くのは面白くない。散々流されて戦って来たのだから、一つ大きな意趣返しをしてやろうと考えている。
そこで俺は、目覚めた奈落に目覚めの一撃をくれてやる事にした。ここまでメチャクチャやりやがったんだ。なんならこれで終わったとしても文句は言わせない!
「準備はいいな、アレス!」
「はい! いつでも!!」
「『ヒポグリフ』! 進め!!」
俺の号令で、飛空艇『ヒポグリフ』が動き出す。
俺はその甲板で、アレスと共に時が来るのを待った。
集中するのは魔力を溜め込んだ両手にある☆5『破壊神の拳』と、左眼に装備している☆5『予知のモノクル』。
そして、俺の肩に手を置いてスタンバイしているアレスの手には、☆5『時神の懐中時計』が握られていた。
黒炎の繭に『ヒポグリフ』がゆっくりと近づく中で、とうとう俺の左目が、『予知のモノクル』が捉えた! 五秒後に復活する魔王を!!
「来たぞ!!」
俺の声と共にスピードを上げる『ヒポグリフ』! そして五秒が経過し、割れる『黒炎』と、その中から姿を見せる『黒炎の大魔王』!!
そして『黒炎の大魔王』の姿が完全に出現した瞬間に。…………カチリと、アレスが時間を止めた。
止まった時間の世界で動いているのは、時間を止めたアレスをのぞけば、アレスの手が肩に触れていた俺だけである。
いかに大魔王と言えども、時の世界に入門するのは難しいのだ。
「行くぞ! 『魔獣化』!! ウオオォォ…………ラァッ!!」
全てが止まる静寂の中で、俺は☆5『魔獣の黒鎧』のスキルで黒鎧の魔獣と化し、『ヒポグリフ』の甲板を飛び降りる!
そして☆5『ヘルメスの靴』で落下しながらも『黒炎の大魔王』の元へ走り、魔獣化して底上げされたステータスにより、ギリギリ使える様になった『破壊神の拳』の最強スキル《条件:全ステータスの合計が9999を越えること》を繰り出した!!
「『ゴッド・オブ・カタストロフィ』!!!!」
全てのステータスを破壊の力一点に込めて、最大限まで高められた『破壊神の拳』を両手で組み、全てをつぎ込んだ事でスピードが無いものの、当たりさえすれば星をも砕くと言う『破壊神の拳』の最強スキルを叩き込む!!
止まった時の中にいる『黒炎の大魔王』にそれが避けられる道理もなく、頭部に当たったそれは、何とも形容し難い、全てを破壊しているような途轍もない音を世界に響かせる。
それは『黒炎の大魔王』の頭部を砕き、首を潰し、胸を叩き割り、腹を貫き、右脚を両断して通り抜けた!!
そして『黒炎の大魔王』を縦に破壊し尽くした『破壊神の拳』にも大きな亀裂が入り、バギリッ! と割れてその役目を終えたのである。