軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

49回目 怪しい少女

我聞が受付でミミナから説明を受けている頃、ギルドマスターの部屋では、ギルドマスターであるモンテナと、そのギルドマスターに報告をしに来たティムがテーブルを挟んで向かい、ソファーに座っていた。

モンテナは蓄えたアゴ髭を撫で擦りながら、その顔に刻まれたシワを深くし、ティムの報告を聞いて唸った。

「…………そうか、オークキングにシャドウウルフとはな。被害が出る前に止めてくれて助かった。カラーズカ侯爵にも、ギルドから礼を言わせて貰おう」

「いえ。今は少し立て込んでいるので、むしろ黙っていて貰えると助かります。何か礼をと言うのなら、オークキングとシャドウウルフを買い取って下さい。もちろん内密に」

「それくらいで良いのなら了解だ。それに倒したのはバルタなのだろ? それなら素材の傷も少ないだろう」

「ええ、首を一撃で落としていましたからね」

「相変わらずだな。…………しかし、この街に来ていながら俺に顔を見せないとは。…………そういう所も相変わらずか、アイツは」

ギルドマスターであるモンテナは、元は冒険者であり、A級パーティー『マイグラング』のリーダーを努めていた剣士である。

そこはかつて、バルタが在籍していたパーティーであり、ドラゴンを退けし者『龍退者』の称号を持つパーティーだった。

モンテナは、そのドラゴンとの戦いで左足の膝から下を消し炭にされ、その左足は義足である。そしてそれが元で冒険者を引退してからは後進の育成に力を注ぎ、ついにはギルドマスターの職についた男だ。

「バルタはまだ気にしているのですよ。『マイグラング』の仲間達を、自分の因縁に巻き込んだ事を」

「アイツの因縁に巻き込まれたのは事実だが、俺達は全て納得の上でバルタの『呪物集め』に付き合ったんだ。それに最後のドラゴンはただの事故だぞ? ドラゴンなんてのは噴火や津波と一緒でただの災害だ。俺達はバルタのおかげで命を拾った。もっと言えば、アイツの『呪物集め』に付き合ってなかったら、ドラゴンにあっさり喰われていたさ」

「それでも納得できていないのが、バルタなんですよ。…………なんなら呼びましょうか?」

「フン、いやいい。俺に会いには来ないクセに、この街に来たら必ず馴染みの酒場にいるからな。今夜にでも飲みに行くさ」

会いたいんだか会いたくないんだか分からない行動を取るバルタに、モンテナは鼻を鳴らし、今夜の予定を決めた。他の予定もあったが、全てキャンセルだ。

「おおそうだ。つい先日、お前さん宛に手紙が届いたぞ。カラーズカ侯爵からだ」

「え? ここに届いたのですか?」

「ああ。俺に向けた手紙の中に一緒に入っていた。要はあまり人に見せたくない手紙って事だろう。…………ホラ、これだ。ちなみに俺宛の手紙には、お前さんが連れて来る男に注意を払っておいてくれ、とあったぞ? 嬢ちゃんにもついに男が出来たか」

「…………っ! そんなんじゃありません!」

ニヤニヤとからかいの視線を向けてくるモンテナに、すぐさまティムは反論し、逃げるように顔を背けて手紙に視線を落とした。

しかしモンテナは、少しだけ赤みが強くなったティムの耳を見て、まんざらでもないのかと、その顔に浮かべた笑みをいっそう強くしたのだった。

「…………まだ戻ってないか」

ギルドカードを貰い受付を離れたものの、ティムの姿はまだ無く、何故かバルタも来ない。

となれば、ギルドの中で待つしか選択肢は無い訳で。俺はギルドの中にあるカフェでお茶でもしながら待つ事にした。

「いらっしゃい。注文は何にする?」

幾つかある丸テーブルの中から適当にひとつ選んで椅子に座ると、すぐにウェイトレスであろう少女が注文を取りに来た。

「んーと、メニューとか無いの?」

「メニューはあそこの黒板だよ。お酒はまだ出してないけど、飲み物なら果実水か水出し茶があるよ。何か食べるならオススメはドーナツだね、さっき作ったとこだからまだ温かいよ」

「へぇ、じゃあドーナツと果実水で。種類があるなら任せるよ」

「はいよ! ちょっと待っててね!」

異世界でドーナツとか聞くとびっくりするな。でも楽しみだ。

そして少しして出て来たのは、レモンの果実水とリング状ではない丸いドーナツだった。形状はドーナツに近いが穴は無い。真ん中をへこましてある形で、少し甘い生地に、なんと塩をまぶしてあった。でも、これはこれでウマイ。

そんな感じでおやつを楽しんでいると、俺が座るテーブルの側に誰かが近づいて来た。ティムかバルタが来たのかと顔を上げたのだが、そこに立っていたのは見知らぬ少女だった。

「あの、ここ座ってもいいですか?」

その少女は、優しげな笑みを浮かべてそう声をかけて来た。

ワンピースに近い見た目の、白に薄い緑色の刺繍がされたフード付きのローブに、銀色の胸当てをつけて右腰には剣のように緑色の宝石の付いた杖を差している。その少女の髪は服の刺繍と同じ薄い緑色で、幼さが残るが整った顔は美人と言って差し支え無かった。

その少女はスタイルも良く、一瞬だが見とれてしまった。少女も俺のそんな様子に気づいたのか、いっそう笑みを強くして俺に顔を寄せて来た。

近くで見ると、本当に美人さんだ。元の世界では染めている以外には見かけない薄い緑色の髪もとても良く似合っている。

そんな相手に相席を求められた俺は、軽く周囲を見渡して…………。

「…………空いてる席はまだあるので、あちらにどうぞ」

と、促した。

当然である。いくら美少女とは言え、いきなりこんな風に声をかけて来るなんて、キャッチセールスくらいしか考えられない。え? 逆ナン? 無い無い。あんなもんは都市伝説です。信じるだけバカを見る代物ですよ。

「え!? …………あぁ、そうですか…………」

何やらショックを受けたようにトーンダウンして他の席へと向かう少女だったが、何故かすぐに戻って来て俺の前に立った。

「あの! 私とちょっとお話しませんか?」

「いえ、結構です」

「えぇ? ちょ、ちょっとだけでいいんですよ。この辺では初めて見る顔のあなたに、ちょっと話を聞きたいだけなんですから!」

「いやだから、他を当たって下さいって。俺、ちょっと人を待ってるんで」

「なら、その人を待ってる間だけでいいですから…………!」

「いやちょっ! だから…………!」

「…………ガモン? 何か揉め事かな?」

ついに俺の腕を掴んできた少女と揉めていると、背後から声をかけられた。

ティム! ティムだ! 待ってたよマジで!!