作品タイトル不明
488回目 大蛇八首VS『ウワン』
我聞達が大魔王から変形したティラノサウルスと戦っている場所、そこから少し離れた所では『大蛇八首』が大魔王の右腕から変化した『ウワン』と戦っていた。
この戦いの前に『大蛇八首』が戦っていたのは『サワン』。強大な腕力を持つ、土を操るタイプの大型モンスターだった。
では『ウワン』はと言うと、胴体部が亀で、その周囲の六つの穴からは様々な海洋生物型のモンスターが出て来る、水を操るモンスターだった。
特化しているのは『防御力』。特に完全に護りを固められると何も出来ない程に硬いモンスターである。
『さっきのあの岩も硬かったが、コイツはそれ以上だな!』
『ええ、ですが倒せなくはありません!』
『甲羅に隠れちまったら放置しときゃいいしな。考えようによっちゃ、態勢を立て直す隙をくれてるんだから、悪い事ばかりじゃねーな!』
どうやら『ウワン』は、呼吸の関係か長く体の中に引っ込んではいられないと『大蛇八首』は気づいた為、水や氷の槍で攻撃もしてくるが、八人が交代しながら戦っている事もあって、かなり余裕を持って戦えていた。
と、その時だ。耳障りなデカイ音がしたかと思うと、我聞達の近くに地面をえぐった様なクレーターが出来ていた。
『何だ!? 何が起きた!?』
『…………報告を! バウの見立てによると、あれは『闇のスキル』だそうです! 光を曲げる程の重力による『闇』で、地面を闇の中で押し潰したのだと予測しています!』
『何だそりゃ!? そんな事が出来るのか!?』
『理論上は可能だと、アルジャーノン様が言っていたそうです!』
『…………それじゃあ、信じるしかねぇな』
と、そんな事を話していると大魔王ティラノが闇の玉を噛み砕く攻撃をして来た!
『ん? うおおおおっ!? こっちにも来ているぞ! 躱せーーっ!!』
空から降り注ぐ闇にケト達が逃げ惑う中、『ウワン』も護りを固めたのだが、ただ一人『影魔法』の使い手であるバウだけが、動かずに降り注ぐ闇の玉を見極めていた。
そして自身の影から伸ばした影の触手を巧みに使うと、小さな闇の玉を先端で捕らえ、他の闇の玉にぶつけて吸収合体させて大きくしていった。
『(……………これ、キツイ…………!)』
『頑張れ! バウ!!』
バウは何も言葉を発していないし、顔もいつもの少し怯えた無表情なのだが、実の兄であるザイにはその心情が読み取れた。
そしてバウも、そんな兄の声援に応えて自分のやるべき事をやりきった!
即ち、集め闇の玉を防御態勢をとる『ウワン』に、闇の玉をぶつけたのだ!
『キュオォォーーーーッ!!??』
その様は、音で表現するならば『グリンッ! バツンッ!!』という感じだろうか、闇の玉にぶつかった所を中心として、『ウワン』の体が闇に引き込まれ、バツンッ!! という音と共に『ウワン』の体の一部、背中の甲羅の一部と左手のヒレが、丸々抉られる様に消失したのだ!
その様は、かなりエグい様子であり、女神『ヴァティー』の命令で他のダンジョンに行くなど、割と様々な経験を積んでいるケトをして、少々顔をひきつらせる様子であった。
『…………ェグ…………いやともかく! よくやったバウ! これで勝敗の天秤は、我々の側へ大きく傾いた!!』
一瞬『エグい』と口に出しそうになったのを何とか飲み込んで、ケトはバウを誉めた。
この『ウワン』が持つ回復力はキズを塞ぐのが精々らしく、何とか抉れた部分の肉を盛り上げて塞ぎはしたが、特大のダメージを受けたこともあってその動きは悪い。
しかも、体を甲羅に引っ込めての防御態勢も取れなくなったようで、既に『大蛇八首』の勝ちは揺るがない状況になっていた。
◇
ケト率いる『大蛇八首』と『ウワン』の戦いが終わりそうだ。さすがと言うが、ケト達は笑えるほど強い。奈落の奴が俺にこだわっていなければ、こっちの戦いもお任せしたい程である。
まぁ、そんな訳にはいかないけども。
だが、俺達とてただ逃げ回っていた訳でな無く、それなりにダメージを入れてある。特にティラノの顎だ。その付近の筋肉を大きく斬りつけ、断裂させたのだが、その治りが遅いのだ。
おそらくは『魔王の消滅』のデカイのがもう一度かそこらで、奈落が纏う魔王は底をつくだろうと、俺達は考えていた。
『……………………うぐっ!? …………ぐおぉぉおおおっ!?』
「来たな!! 全て吐き出してしまえ!!」
大魔王ティラノが、奈落の声で苦しみ始めた。ついにその時が来たのである。
その体から、多くの『魔王』を吹き出していき、空に霧散する。
俺達と『大魔王・ナラク』の戦いも、ついには最終局面を迎えたのである。