軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

443回目 レプラコーンの事情

レプラコーン。草原の精霊種族と呼ばれる彼らは、エルフとドワーフを合わせた様な能力を持っている。が、その力はとても小さく『劣化した精霊種族』と呼ばれる程に弱々しい。

彼らの身体能力は人間より弱く、魔法にしても精々が風で表面を切ったり、砂で目潰しをしたりと、戦闘にはほとんど役に立たない物ばかりだ。

だがそれらの能力は戦闘以外には結構力を発揮する。

主に芝生の長さを整えたり、雑草を枯らしたり、小さなホコリやゴミを一ヶ所に集めたり、家のヒビなどを補修したり。やたらと家庭的な部分で力を発揮した。

また彼らは衣服を作る技術に優れており、彼らがあつらえた貴族服や靴などは、ひと昔には貴族のステータスとして持て囃された。

そう、彼らは人間の奴隷として乱獲された歴史があるのだ。…………いや、実際には今でも、悪徳貴族の中にはレプラコーンを奴隷として飼っている家が存在する。もちろん、違法である。

「へぇーー。そんな歴史があるなら、ここまで来るのも怖かったでしょ」

「はい。普段は我々も隠れ里から出ないように生きているのですが、今回ばかりはそうもいかず、決死の思いで隠れ里を出て旅をしていました」

モメットがここまでして外に出た理由。それはエルフに会う為である。

どうやらモメット達レプラコーンと繋がりのあるエルフは、一つの島に住んでいるらしい。

広い海の真ん中で、高い岩山に囲まれた世界樹の森がある島。その島のある海は海竜の巣であり、高い岩山にはロックリザードが棲んでいる。

絶海の孤島であるその島は船では近づけず、万が一にも上陸出来たとして、岩山を登る途中でロックリザードのご飯となる事はほぼ確定だ。

ならばその島のエルフとはどうやって会うのか。それは『海流のダンジョン』と言う名のダンジョンが鍵となる。

その『海流のダンジョン』の中には、その名の通り何十何百と言う海流が流れている。このダンジョンにはその他にもカヌーの様な葉っぱをつける植物があるので、それを使って海流に乗って奥まで進むのだ。

エルフの住む島に行くには、この何百という海流の中から正解の海流を何十回と選ぶ事で行き着く事が出来る。ちなみにハズレの海流を選ぶとスタート地点に戻される…………のは良い方で、モンスターハウスに放り込まれたり外にあるマジもんの海に投げ出されたりするからチュウイが必要だ。

「もちろん私達は、その正解の海流を知っていました。我々レプラコーンは、エルフ様と交易をしている数少ない種族なのです」

「交易ですか」

「はい。エルフ様達は長い時を生きているので物欲が薄く、自給自足での生活に満足しているのですが、我々レプラコーンが作る服には興味を示して下さるのです。我々はエルフ様に服を納め、その対価として様々な魔法薬を受け取っているのです」

レプラコーンがエルフから受け取った魔法薬は、数少ない信用がおける人間に売られ、そこから世界に広まる。

さらにレプラコーンは、一から魔法薬を作る事は出来ないが、そのエルフの魔法薬を独自の方法で薄めながら増やす事が出来る。

その薄めて増やされた魔法薬は『レプラコーンの魔法薬』と呼ばれ、かなりの人気商品であるらしい。

ちなみに薄めると言っても、単純に水で割る訳では無いので、レプラコーンの魔法薬を作ろうとして失敗し、貴重なエルフの魔法薬を台無しにする愚か者は後を絶たない。

「ですがそのダンジョンの海流が、十数年経つ間に変わってしまっていたのです。そのためエルフ様の元へ行く事が出来なくなりました」

「十数年? そんなに長い間、エルフのいる島に行かなかったのですか?」

「エルフ様方は長寿ですので、数年空けた程度では昨日と変わらないのです。毎日来てると思われては、疎ましく感じられてしまいます」

数年で昨日かよ。エルフと仲良くするのは大変そうだ。

…………などとこの時には思ったのだが、後で知った所によると、エルフは環境によって時間の感覚が変わるらしく、人間の世界で長く暮らすエルフ達は、ちゃんと人間の時間感覚で生きているそうだ。

つまり世界樹のある島に暮らすエルフ達は、時間の感覚が植物のそれになっている為、時間の感覚がまったくの別物になっている訳だ。

「本来ならば、全ての海流を調べ直し、正解を導き出す所なのですが、今回は時間が無いのです!」

レプラコーンに時間が無い理由。それは、レプラコーンの姫君にあった。

これはおめでたい話で、いまレプラコーンの姫君は妊娠中であるらしい。妊娠中と言う事は常識ならば結婚している筈だから王妃様では? と思うかも知れないが、これにはレプラコーンならではの理由がある。

レプラコーンの王子は必ず『世界樹の加護』を持ってなくてはならない。その加護は母親のお腹の中で得るものであり、『世界樹の加護』を持つ子を産まない限り、その姫君がどんなに王様と愛し合っていたとしても、王妃とは認められない。

そして姫君に与えられる出産の機会は、レプラコーンの女性が二度の出産に耐えられないと言う理由から、一度だけなのだ。

「我らが王は現在の伴侶を心から愛しております。そしてそれは姫様も同じ! 我らはぜひこのお二人を末長い夫婦としたいのです! その為には姫様が出産を迎えるまでに『エルフの秘薬』が必要なのです! それがなければ、姫様のお腹の中の子に『世界樹の加護』が授かりません!!」

この『世界樹の加護』がなぜ重要なのか。それはこれこそが、『レプラコーンの魔法薬』を作る為の秘密だからだ。