軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

372回目 子供でも『賢者』

『やあ、いらっしゃい。…………え? 『郷愁の禍津像・ウミガメ』がある場所の情報? それなら、白金板で二枚だ』

「…………お願いします」

あーー、売ってたわ。

俺のスキル『ガチャ・マイスター』の『マイスター・バー』のマスターにダメ元で聞いてみたら、普通に禍津像の情報を売ってたわ。

お値段は強気の白金板二枚。…………今日一日ですでに白金板十四枚、日本円にして十四億円というアホみたいな出費があり、俺は身体中にジットリと嫌な汗をかいているが、金で解決できるとか、やっぱり俺のスキルだわ。

…………と言うか、欲しい『郷愁の禍津像』の在りかが一つにつき二億か。緊急クエストに関わる魔王は『ウミガメ』を抜いてあと三体。…………買っておくべきか?

『『郷愁の禍津像・ウミガメ』は、ロミントン男爵が持っている。ジョルダン王国の貴族で、すでに貫禄を息子に継がせて隠居生活を送っている。『郷愁の禍津像・ウミガメ』は、何年も前にある商人から買って家に置いているみたいだな。…………ちなみに、隠居してから若い奥さんを貰ったようで、今は奥さんにメロメロだ。あ、この情報はサービスにしておくよ』

「…………いや、若い奥さんにメロメロな情報は別にいらないんじゃ…………? いや、違う! その情報、値千金だ!! ありがとう!!」

「うん? どうしたガモン?」

「若い奥さんで貴族って事は、流行に敏感な筈だ! 当然、化粧品や美容グッズはチェックしている筈!!」

「なるほど、サリアナイトの嬢ちゃん達の出番じゃな」

俺は早速『フレンド・チャット』を繋げて連絡を取った。リナとアナの二人は今ちょうど交渉中らしくて連絡を取れなかったが、サナとはチャットが繋がった。

◇ガモン

《…………と言う訳で、至急ロミントン男爵が持つ『郷愁の禍津像・ウミガメ』を手に入れたいんだ。何とかならないか?》

◇サナ

《それでしたら、ちょうどアナが交渉をしているのがロミントン男爵夫人です。私も出向いて交渉を纏めて来ましょう。少し時間を下さい》

◇ガモン

《どのくらいで破壊までいける?》

◇サナ

《二日以内には》

◇ガモン

《了解。それと、今俺達が求めている『郷愁の禍津像』の名前も送っておく。出来る限り最優先で手に入れてくれ》

◇サナ

《かしこまりました》

「…………と言う訳で、『ウミガメ』の禍津像は二日で何とかなりそうだ。うまくいけば、他の魔王の分もいけるかも知れない。ただ、今一番考えないといけないのは、魔王『ウミガメ』の足止めをどうするかだ」

「フム、二日か。その程度であれば儂一人でも抑える事は出来るであろうが、魚人国の動きが気になるの。最悪、宣戦布告と取られるかも知れん」

「代替わりして間もない国ですからね。外からの武力には敏感でしょう。魔王の事が正しく伝わっていない事も考えると、邪魔される可能性すらありますね」

「…………それは不味いな」

「……………………あ、あの!」

「ん?」

指令室の入口から、遠慮がちな子供の声が聞こえたので振り返ってみると、そこにはジュエルドラゴンを連れたアリアとアラムの姿があった。

アレマーの姿は無い事から、アレマーの目を盗んでここまで来たらしい。

「アリアにアラムか。どうした、天空城の探検か?」

「うん! ここ凄く広いから…………」

「待って、アラム!」

俺の言葉にアラムが元気に反応したが、アリアに抑えられてしまった。どうやら、アリアの方が俺達に用があるらしい。

「何だ、アリア?」

「あの! 聞こえちゃったんですけど、その『ウミガメ』を二日足止めするだけなら、簡単だと思います」

「え?」

…………うーーん、聞かれていたか。しかし、魔王の足止めを簡単と言ってしまうとは。さすがに簡単に足止めをする方法なんて無いだろ。

アレは『魔王の影』とは言え『魔王』なのだ。眷族は確かに脆いが、魔王は不滅の存在であり、その攻撃力もかなりのものだ。さすがに簡単にはいかない。

俺がそれをアリアに説明しようとすると、ドゥルクか手を俺に向けて出して俺を止めた。ドゥルクはアリアの言葉に興味をもったようだ。

「言ってみなさいアリア。魔王を足止めする方法について」

「はい、ドゥルク先生!」

ドゥルク先生、と言う言葉にちょっと面食らったが、そう言えば時間がある時は、ドゥルクが子供達に授業をしているんだった。ドゥルクは教師の立場としても、アリアの話を聞こうとしているようだ。

「あの、魔王は全て動物の姿をしていて、その能力も動物に依存するって聞いています!」

「ウム、その通りじゃ。今回の魔王は『ウミガメ』。その行動は、ウミガメの生態に依存するじゃろう。魔王だけあって、かなり強化されていると思うがの」

「はい。それをふまえても、広大な海を移動するのは大変ですよね? だって、海はずっと向こうまで海ですから」

アリアが指差すのは壁一面に映し出された海と水平線だ。確かに、海はずっと向こうまで海だ。

「…………ム!? …………ああいや、それで?」

どうやらドゥルクはアリアの策に気がついたらしく、顔を楽しげに歪めて続きを促した。…………俺はまだピンと来ていない。

「は、はい! なので、魔王を一度、海の向こうまで押し流してしまえば、二日くらいなら大丈夫かなって…………」

「「…………!!」」

アリアの言葉を聞いて、俺は壁一面の水平線を見た。

なるほど、それはいけるな。水平線まで押し流してしまえば、確かに二日ぐらいは余裕で稼げるだろう。

その方法も、俺達には心当たりがある。

☆5『海鳴りの杖』。まだ完全には育てきれてないが、この杖の二つ目のスキルは《大津波》だ。海ごと魔王を押し流すくらいなら、造作もないだろう。