軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

368回目 強くなった

フリント王国の北部では、眷属を増やして進行しようとする魔王と、眷属を一定数以下まで狩って魔王の動きを封じようとするフリント王国軍の戦いが続いていた。

魔王の眷属自体は、ハッキリ言って弱い。ある程度訓練を積んだ兵士であれば、一対一で倒せる程度には弱い。いや、攻撃力は結構あったりするので、言い換えて脆い。所詮は影が作った眷属なので、耐久力がほぼゼロなのだ。

だが、その変わり魔王が存在する限り無尽蔵に出現する。

魔王は眷属が出揃うと移動を開始し、眷属が一定数を割ると眷属を生み出すべく動きを止めるので、人類側としては眷属を狩り続けて魔王を足止めしつつ、魔王を攻撃して吹っ飛ばし、封印に有利な地まで連れていくのが基本戦術である。

「一班は下がれ! ここからは二班の出番だ!! 一班は治療を受けて休息!! 三班は次の準備に掛かり、四班はサポートに回れ!!」

班を分けられた兵士達がスイッチし、戦闘が継続する。魔王は徐々に押し込められているが、フリント王国軍にも疲労が貯まっている。

限界を迎える前に勝負を決めねば、と考える指揮官たる将軍は、僅かな地鳴りと、西南方向にプレッシャーを感じ取った。さらに南の空を見れば、訳の解らない蜃気楼の大陸が空に浮かんでいたが、将軍はその全てを頭から追い払った。

この場所以外の事は、国に任せるより他がない。もはや偵察に分隊を出すなど出来る状態ではないのだ。

将軍は、せめて魔王の封印が完了するまでは何も起きない事を、神に祈った。

一方、スタンピードが起こる兆候を見せていたダンジョンの近くには、ザッパ率いる『ノーバスナイト』の四人と、シエラがいた。

五人はアラムの特別なジュエルドラゴンに乗せられてここまで降りて来たが、アラムとそのジュエルドラゴンは、五人を降ろすとすぐに天空城へと帰って行った。

いかにアラムのジュエルドラゴンが優れていたとしても、アラム自体がまだ幼いので戦いには参加させない事になっているのだ。

そして、五人が見つめる視線の先にはダンジョンの洞窟があった。その洞窟の入口では、モンスター達が我先に外に出ようとひしめき合っている。あまりにもギュウギュウに押し合っているので、そのほとんどはまだ外に出られていない。

「すげぇいっぱいいるぜ、ザッパ兄ちゃん」

トルテなどは様々なモンスターが近くのモンスターを攻撃しながら外へと押し出されるその姿に、思わず体を震わせていた。

「確かに多いけど、まだ想定内だな。まずは既に外に出ているのを俺とベベントで叩く! ブームンはダンジョンの入口を崩してくれ。トルテはブームンの護衛! シエラさんはサポートでお願いします!!」

「よーーし! いっちょ暴れるか!!」

天空城と言う夢でしか有り得ないような拠点で『クランガチャ』を回しまくり、ザッパ達の装備はそのほぼ全てが☆4の+4まで強化されている。

トルテはそのあまりの密度に震えていたが、ダンジョンから這い出て来ようともがくヤツらも、すでに外に出て来たヤツらも、個別で見れば大したモンスターではない。

我聞のスキルの恩恵ではあるが、ガチャ書籍でステータスを上げ、最高のガチャ装備に身を包み、さらにガチャ食材で作った料理を食べてバフを最大限にかけたザッパは、「負ける気がしないな…………」と呟いて、礫を舞い上がらせる槍を構えたブームンと共に、スタンピードの始まりへと駆け出した!

「……………………兄ちゃん達すげぇ…………」

全身が真っ赤な鎧を着て、それよりも更に紅いオーラを放つ剣を振るう『灼熱の剣士』と、まるで岩を纏ったような鎧を着て、その鎧から生み出された岩石を周囲にぶつけながら雄々しく突き進む『礫岩の戦士』。

二人が通った後には動くものは無く、全てが蹂躙されていった。

「トルテ! 見とれてないで武器を構える!! こっちも始めるよ!!」

「わ、分かってるよ! ブームン兄ちゃん!!」

そして、二人に負けず劣らずブームンもまた強化されている。ブームンが身に付ける漆黒のローブは、その肩当てが下に曲がったカラスの嘴の様になっており、ブームンが唱える呪文に呼応して、漆黒の中に幾重にも走る亀裂が、真っ赤に輝き始めた。

ザッパが灼熱でベベントが礫岩なら、ブームンは『溶岩の魔道士』である。

ブームンの呪文により膨れ上がる魔力が、ブームンの頭上で灼熱に燃える岩石となり、ブームンが振り下ろす杖に呼応して撃ち出された!

まるで火山から飛び出した火山岩のような一撃は、モンスターがひしめくダンジョンの入口へと着弾すると、轟音と共に大爆発を引き起こした。

そして、クレーターとなって消え失せたダンジョン跡地に、今の一撃で倒されたモンスターのドロップアイテムと共に、ダンジョンの中で外に出るのを順番待ちしていたモンスター達が空中からポポポンッ、と弾き出された。

「ふぅーー。じゃあ魔力が大半消えた僕は、逃がさない為の結界の維持に専念するからね。後はよろしく」

「「おう!」」

「ではトルテくん。私達もやるべき事をしましょう。トルテくんはブームンさんを護りながら結界の外にリポップしたモンスターの討伐。私は結界の中にいる二人を回復しながら、同じく外にいるモンスターを叩きます!」

「わかった!」

フリント王国で魔王が仕組んだスタンピードは、たった五人の冒険者の手によって殲滅された。

アレスは自分の出番が無かった事を少し残念に、そして誇らしく思い、アレスと共にこの結果を目の当たりにしたフリント王国の騎士は、顔を真っ青にして身を震わせたのだった。