軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

335回目 カラーズカ侯爵の一手

俺とカラーズカ侯爵がテーブルを挟んで向き合い、俺の隣にいるバルタは盛大に溜め息をついた。

バルタが呆れている理由は分かっている。俺とカラーズカ侯爵のそれぞれの手の中にある『ジュエルドラゴンの卵』が原因だろう。大事な話の前に何を遊んでいるのか、という事である。いや、やるべき事はちゃんとやりますよ?

「ガモン。本題に入るが、実は相談があって呼んだのだ」

「相談…………ですか」

「ああ。内容は、ティアナの『フレンドクエスト』とやらについてだ。その中の達成条件の一つを抜かしたい」

「…………とりあえず、どういう意味なのか聞かせて下さい」

カラーズカ侯爵の相談とは、簡単に言えば『フレンドクエスト』の内容に逆らっても、目指すべき場所さえ同じなら問題ないかを聞きたい、と言う事だった。

つまり、ティアナの『フレンドクエスト』、その達成条件にある三番目、『サザンモルト辺境伯の説得、もしくは討伐(三十日以内)』を一度飛ばし、四番目にある『ヌヌメルメ王家の打倒、及び処刑(六十日以内)』と一緒にクリアしてしまいたい、と言う話である。

「現状、我々とサザンモルト辺境伯の軍は、手は組んでいないが王都を挟み撃ちに狙っている形になる」

「まあ、そうですね」

「こうなると、我々が取るのに一番良い方策は何だと思う?」

「うーーん。サザンモルト辺境伯と同盟を組んで王都を襲撃する?」

「…………それも手ではあるが、それをやると後々に影響をする。私は王位につかなくてはいけないが、サザンモルト辺境伯もタダで私に王位を譲る事は無いからな」

ここでバルタが補足情報を出して来たのだが、実際にサザンモルト辺境伯からは、『手を組んで王家を打倒し、空いた王位をカラーズカ侯爵に譲っても良い。ただし、その後は我々のジョルダン王国の切り崩しに力を貸して欲しい』と打診があったそうだ。

ターミナルス辺境伯と懇意にしているカラーズカ侯爵に、ターミナルス辺境伯を裏切って、その首を差し出せと言って来た訳だ。飲める訳がない。

しかもこれの狙いは、後々カラーズカ侯爵をも抹殺してしまおうという野望の布石でもあるのだ。

「…………ジョルダン王国の豊かな土地を手にしといて、盟友を裏切って孤立したカラーズカ侯爵を後々攻める。って腹が透けて見えまさぁ。野心という意味ではサザンモルト辺境伯はヌヌメルメ王家を上回りますぜ」

なるほど。となれば、俺が言った手は使えない訳だ。サザンモルト辺境伯と手を組むと、後々がより面倒になる。

「なら、…………サザンモルト辺境伯に王都を攻めさせて、両者が弱った所を叩く?」

「ウム、そうなる。問題は、サザンモルト辺境伯もヌヌメルメ王家の方も、似たような事を考えるだろう、と言う事だな」

漁夫の利狙い。まあ、自身の被害を考えると、これは一番良い気がする。潰し合って潰し合って、テルゲン王国の国力としては、かなり下がるだろうが、他国がこれを機にテルゲン王国を攻めようとしても時季は冬、簡単には攻められずその間にテルゲン王国は若干だが回復できる。

…………となるとだ。サザンモルト辺境伯と王国軍を、先に衝突させないといけない訳か。

だが、カラーズカ侯爵の策はさらにその一歩先にあった。漁夫の利を狙っていると見せて危機感を煽り、王国軍をサザンモルト辺境伯に合流させ、まとめて叩いてしまおうとしているのだ。

そんな事ができるのか? もしかして、これはまた☆5『虚言の面具』の出番って事か? 俺はそう考えたのだが、どうやら違うらしい。

「いや、この戦いについてガモンの力を直接借りる気は無い。王位を簒奪する以上、私自身が覚悟を持ってあたるのが筋だからな。その為の策もある。ただ、その為には『フレンドクエスト』においての達成条件を一つ無視してしまう。私はそれが気になったのだ。バルタの話を聞くに、『トゥルー・フレンド』と言う力は有用だからな、もしそれを得られなくなると言うのなら話が変わってくるのだ」

「そんな訳で、旦那には確認して欲しいんでさあ、『フレンドクエスト』の達成条件について」

「…………最終的に『フレンドクエスト』が達成できるなら、達成条件を一つ無視しても大丈夫かどうか、だな。……………………俺には答えが出せないな、コレ」

「いやいや旦那。あるでしょう、答えを出す方法が。金はこっちで持ちますんで、情報を買って来てくだせぇ」

「あ、そういう事か。わかった、そういう事なら任せてくれ」

俺は久し振りに、『ガチャ・マイスター』の中の『マイスター・バー』へと顔を出し、マスターに金を払って情報を買った。

情報料は『白金板』二枚、とかなりボッタクられたが、高いだけあって詳細は解った。

「それで?」

「『フレンドクエスト』は、その依頼主であるフレンドの命の危機、もしくは人生の危機を救う為のものであり、俺とフレンドの絆をより強固にするための物でもある。達成条件はそれを期日までに満たしていないと、状況が限りなく不利になるもので、その条件を満たさなくともクエストをクリア出来るのであれば、満たさなくてもいい。ただ、条件を満たさないとどう状況が変化するのかは、しっかりと調べる事をオススメする。…………まぁ、そんな風に言われましたよ」

「つまりティアナの身に危険が及ばないならば問題ない、か。ウム。概ね想定通りだな。どう思うバルタ、これならば問題無いと思うが」

「へい、あっしも問題はねぇように思いますぜ」

これで、カラーズカ侯爵の策は決まった。カラーズカ侯爵は、サザンモルト辺境伯と王国軍をまとめて始末するつもりなのだ。