作品タイトル不明
318回目 『虚言』
カラーズカ侯爵やティアナ達を、無事に領都バウルに送り届けた次の日。
テルゲン王国からやって来る王国の使者をどう食い止めようかと考える中で、☆5『虚言の面具』なんて言う反則アイテムを手に入れた俺は、単独で領都バウルを離れていた。
移動手段はバイクだ。ガチャから出てきた☆4『オフロードバイク(400cc)』に乗って、雪の降る平原を走っている。
ちなみに着ている防寒着やフルフェイスヘルメットも、当然ながらガチャ産である。一言感想を言わせてもらえるなら、カッコいい。フルフェイスで顔とか見えないし、全身も着込んでいるため若干窮屈だが、ただただカッコいい。俺、満足。
しかも、こんな良いバイクに乗れると言うのも感慨深い。バイクの免許欲しかったけど、休みも金も無くて取ってなかったのだ。つまり無免許状態だ。
さすがに俺も、無免許状態でいきなりバイクに乗るのは怖かった。どうしようかと機械繋がりでキャンパーに相談もした。
しかしその時にドゥルクが口を挟んで来たのだ。『なんなら儂がバイクの乗り方を教えてやろうかの?』と。
いやいや、異世界の幽霊が何を言っているんだ、と当たり前のツッコミを入れた所、ドゥルクは自信満々に一冊のガチャ書籍を取り出した。
☆4『サルでも解るバイクの乗り方』
「……………………何これ?」
『そのバイクと言う乗り物の乗り方を解説した本じゃよ。読破すると『普通自動二輪免許』というスキルが手に入る本じゃな』
「そんなんあったんかい!! え!? バイクの免許ってスキルなの!?」
『☆3までなら基礎知識を得てステータスが伸びるだけなのじゃが、☆4ともなるとスキルが手に入る物が出てくるらしいのぅ。儂も盲点でな、最初に見つけた時は驚いたもんじゃ。ちなみに儂、もう大型バイクも乗りこなせるぞい? この☆4『ゴリラでも解るバイクの乗り方』も読破してあるからのぅ』
「…………幽霊がバイクに乗ったら、もうそういう妖怪だろ」
と、言う訳で。無免許の俺もバイクに乗れるようになった訳です。もう意味が分からないよね。でもいいんだ、バイクに乗れるから。
『マスター、目的の街が見えて来ました』
「おっと着いたか。なら、お仕事といきますかね」
早朝からバイクを飛ばして数時間。俺の周囲を飛ぶドローン達のおかげで道中は何事もなく移動できた。モンスターが出ようとドローンが処理してくれるので、俺は何もせずにバイクを走らせるだけですんだのだ。
今回の俺の任務は、王国軍が持って来る『国王の命令書』を始末する事と、カラーズカ侯爵のアリバイ作りである。命令書の始末は言わずもがなだが、カラーズカ侯爵のアリバイとは、王都に現れた魔族騎士とカラーズカ侯爵を無関係とするための工作である。
要は、王国軍は進軍すると同時にカラーズカ侯爵と魔族騎士のつながりも調べる筈だから、そのアリバイを作ってしまおうって事である。
と言う訳で、街の外でバイクをスキル倉庫へと収納して、俺は街へと入った。ただし、キャンパーが操作するドローンは一機だけ浮かべてある。これは、俺が一人で行動すると言った時に大反対したシエラを納得させる為の条件である。
俺の護衛として教会から来ているシエラとしては、ここ最近、俺がシエラと別行動ばかりしているのが納得できないようなのだ。
だが、今回は本当に俺一人の方が都合がいいのだ。何せ俺一人なら、『絆の証』を使ってバルタの所に瞬間移動が可能だからな。王国軍の中に入ろうって言うんだから、これぐらいの安全策は取っておきたいのだ。
「じゃあキャンパー、俺は作戦に入るから、お前は邪魔にならない所で見ていてくれ」
『かしこまりました』
俺は建物の影へと隠れるキャンパーを確認してから、☆5『虚言の面具』を装備した。いきなりこんな物を出して装備する俺に、街の人達からの視線が刺さるが、気にしたら負けである。取り敢えず、やるべき事をやってしまおう。
「やーどうも。今日は少し寒いですね?」
「ん? おう、そうだな。確かに今日は少し寒いな。君は冒険者かな? 私に何か聞きたいのかな?」
俺は取り敢えず、街の入口付近にある兵士の詰所に入って、そこの責任者らしき兵士に話しかけた。
「俺はつい先日にこの街に立ち寄ったカラーズカ侯爵の部下です」
「カラーズカ侯爵?」
「ええ、立ち寄ったでしょ? つい先日」
「…………ああ、確かに立ち寄ったな。それで、その部下の方が何用で?」
「ええ、実はこの街の責任者の方にお会いしたいのですよ。できれば内密に」
「そうでしたか。では、私が案内しましょう。おい、私は少し用が出来た! 後を頼むぞ!!」
こんな感じで、カラーズカ侯爵がこの街に立ち寄ったと言う『虚言』を、俺はこの街の有力者達に刷り込んでいった。
☆5『虚言の面具』。これは考えていた以上に恐ろしい能力を秘めていた。
ただ、有力者との話を終えて帰る時に、最初に虚言を刷り込んだ兵士が、別の兵士と話をしているのを見かけたのだが。
「おう、どうしたんだこんな所で。お前今日は東門の詰所での仕事だったろ?」
「ああ。先日この街に寄られたカラーズカ侯爵の使者に頼まれてな。案内して来たんだ」
「は? カラーズカ侯爵って、最近来てないだろ」
「…………あれ? そう…………だったか?」
と、刷り込みが解けかけている所に出くわした。俺は慌ててこの二人に刷り込み直し、そしてこのアイテムの大きな弱点に気がついた。
これ、刷り込んだ『虚言』と『現実』の間にある矛盾に弱いんだと。虚言はあくまで虚言。いくら真実だと刷り込んでも、確かにある現実には勝てないのだ。
俺はもう一度街の有力者の所に行って、王国軍やその使者以外とは、カラーズカ侯爵の事を話さない様に言い含めた。
これで、王国軍の兵士が確認に来る時までは保てるだろう。…………早めに弱点に気づけて良かったぜ。