作品タイトル不明
307回目 漆黒の魔族騎士
テルゲン王国の王都に向かって二日目、俺達は無事にテルゲン王国の王都へと入り、今はジョルダン王国の貴族であるターミナルス辺境伯がテルゲン王国の王都に持つ屋敷へと身を寄せていた。
そして今は、ターミナルス辺境伯の屋敷の一室で、王城へと潜入する為の最後の準備をしている所である。
ちなみに潜入の実行役でもあるバルタには、すでに王城の近くに潜伏して貰っている。
「おぉう…………。いや凄いな、こんなに印象変わるのか。もう俺の知ってるアレスじゃない」
「何と言うか、禍々しいわね。完全に見た目は悪魔だわ! ここにアリアやアラムが居なくて良かったわね
」
「漆黒の翼もありますし、空も飛ぶんですから堕天使…………でもいいかも知れませんね。似合っているかどうかで言えば、似合っていますよ」
「……………………必要なのは解るのですが、複雑な気分ですね」
俺・カーネリア・シエラに囲まれて散々な評価をされているのは、アレスである。
問題になっているのは、アレスの見た目だ。アレスは☆5『聖騎士の神装』を装備しているのだが、純白と金で美しい『聖騎士の神装』は、現在のところ禍々しく漆黒の鎧へと変貌している。
さらにはアレス自身の見た目も変化している。まず肌は黒くなり、耳は少し尖って眼は紅く光っている。こんなの、完全に魔族である。
なぜ、そんな事になっているのか。その理由となるのはもちろん俺の☆4『魔族の装具』と☆4『闇のルビー』という二つのアクセサリーだ。
☆4『魔族の装具』
《闇纏い》
・常に全身に闇を纏う様になる。闇属性の攻撃を全て吸収する代わりに、その姿は禍々しくなる。
《闇の加護》
・夜限定で全ての能力が僅かに上昇する。月の無い夜ならば、上昇値がさらに上がる。
☆4『闇のルビー』
《魔族化》
・種族が魔族に変化し、それに応じた強みと弱みを得る。魔力が5%アップする。
《闇の眷族》
・闇属性のモンスターを一体召喚する。
この二つのアクセサリーは、強いスキルを持つデメリットとして、見た目が変化する言わば呪われた装備だ。ゲームのように外せなくなったりはしないが、とにかく身に付けている間、姿が禍々しくなる。
そして、それこそが今回の作戦には必要なのだ。
「うん。これならイケるな。こんなのが王都に出たら、間違いなく騒然とするだろうからな。頼んだぞアレス。シエラとカーネリアも、バックアップは頼んだぞ!」
「少々不安ですが、全力を尽くします!」
「ガモン様も気をつけて下さいね!」
「こっちの準備はしておくから、しっかり助け出して来なさいな!!」
「じゃあ、始めるぞ!!」
禍々しい鎧に身を包み、その手には☆5『ヒュプノスの大鎌』を持ったアレスは闇色に染まった☆5『聖騎士の神装』の翼を広げて、屋敷からテルゲン王国の王都上空へと飛び出した!
◇
────それではここで、今回の作戦を説明しよう。
今回のティム及びカラーズカ侯爵家救出作戦において、実行役はバルタ、そして俺だ。
作戦としては単純。王城や街の戦力の気を最大限引くのと共に、☆5『ヒュプノスの大鎌』のスキルを使って出来るだけ無力化する。そして、警備が薄くなった隙をついてバルタが☆5『亜空間のマント』を装備して王城へ潜入する。
そしてティムやカラーズカ侯爵家の面々が囚われている部屋まで行ったら、魔法やスキルが使えなくなる部屋に入る前にバルタが『フレンド・チャット』を使って俺に連絡。
俺はその連絡を待って、俺とバルタと言うトゥルー・フレンド間だけで使える切り札、☆4『絆の証』での瞬間移動を使いバルタと合流する。
一日に一度しか使えないが、この『絆の証』での瞬間移動があれば、俺はギリギリまで準備に専念できるので、アレス達と一緒にいた。
正直、王城への潜入から俺が参加するのは、足手まといにしかならないからな。この形が一番良かったのだ。
そしてティム達と合流した後は、部屋を出る算段をつけた後に、バルタを除く全員で☆5『龍神の星籠』に入る。
実験した結果『龍神の星籠』は、多くの人を籠の大きさはそのままに入れておける事が解っている。中に入れている物や人数で消費する魔力は変わるが、この『龍神の星籠』を破壊するのは不可能であり、こうすると星籠は使用者の後を勝手について行くので、救出作戦において凄く都合が良かったのだ。
…………とまぁ、ティムとカラーズカ侯爵家の人々の救出は、このような段取りである。
『『…………!? ……………………!!??』』
「…………始まったな」
外から聞こえてくる喧騒が悲鳴に変わり、王都の住民は、いきなり空に現れた、闇を纏い大鎌を持った漆黒の 魔族騎士(アレス) に戦々恐々としている。
街の至る所から魔法が飛び、それを悠々と躱すアレスは、サービス精神を発揮して時折急降下しては、また上空へと戻っている。
そして、ある程度兵士や騎士、更には冒険者が集まった所で、大鎌の柄を横笛の様に構えて、眠りの旋律を奏でた。
ここに来るまでに解放した、☆5『ヒュプノスの大鎌』の二つ目のスキル《眠る世界》。それは眠りの神による範囲攻撃。対象と定めた者達に、抗い難い『眠り』を与える強力スキル。
その旋律を聞いて瞬間的に眠りに落ちる者や、何とか耐えようと膝をつく者を見ながら、俺は「アレスの奴は、この国に突然訪れた『正体不明の厄災』として伝説になるだろうな」などと考えていた。