作品タイトル不明
260回目 ダンジョンで感じる視線
◇邪眼族の螺旋迷宮・六日目
四十一階層からスタート。
フロアにいる邪眼族の装備が全身鎧になった。蛇の頭に合わせたフルフェイスとか装備しているけど、あれどうやって身に付けているのか気になる。
こうなると『スリングショット』で一撃を与えるのは厳しそうだな。と思ったのだが、そこは『衝撃の弾丸』が良い仕事をしてくれた。
鎧に攻撃が阻まれても、内部に衝撃を与えてくれるので一撃判定が出たのだ。おかげで全身鎧を着ていても気にする事なく先に進めそうだ。
「いやまあ、流石に全身鎧となると当てる部分も重要になるんですぜ? それに鎧の種類やスキルによっては、『衝撃の弾丸』を+2から上にする事も考えないといけやせんね。まあ、手応えを見て判断しまさぁ」
未知の領域にも関わらずバルタは冷静だ。焦る様子も浮わついている様子もない。自分の悲願が達成されるかも知れないのに、バルタはしっかりと自分を落ち着かせている。
長年冒険者をやってきたベテランは、やはり頼りになる。
「…………で、次のレリーフメダルがこれか? 何これ? なんか模様のついた…………鉄?」
「おおっ! コイツは『ダマスカス』でやすね。魔力を挟んで鉄を鍛え上げたって言う金属ですぜ」
「『ダマスカス』? …………ああ! 『ダマスカス鋼』か!」
「ええ、かなり硬くて錆びない素材で武器や防具に向いてやす。が、外からの魔力を弾いてしまうんで魔法装備には使えないって金属でさぁ」
「へぇ、そんな感じなのか。俺としては『スッゴク硬い金属』くらいの認識しか無いな」
まあ何にせよ。使用頻度が多いから売れると言うので、細かい事は置いておこう。
そして今日は、四十八階層終わりの安全地帯で一泊となった。
…………俺は何もしていないのに疲労感があるな。などと思いつつ、俺は夜を漫画を読みながらソファーでくつろいで過ごしていた。
「……………………ん? 今、なにか…………?」
ふとその時、何やら視線を感じた俺が窓の方を見ると、窓の端の方で何かが顔を引っ込めたように見えた。
一瞬だったので確証は無いが、それは小さな蛇の頭に見えた。
「…………お、おいバルタ! 今、窓の外に蛇の頭が見えたぞ!!」
「なんですって!? 蛇の頭って、邪眼族ですかい!?」
「え? いや、もっと小さい…………普通の蛇に見えたけど…………」
「…………見間違いじゃねぇですか? あっしはここで、邪眼族と邪鼠以外の生物は、見た事がねぇですぜ? まぁここは安全地帯ですし、居るんなら、モンスター以外の生物が出てもおかしくはねぇですがね。…………普通のダンジョンなら」
「…………うーーん、見間違いか?」
念のため、バルタが外で『索敵』をかけてくれたが、やはり生き物の反応は無し。って事で、この夜の事は俺の見間違いって事で決着した。
◇邪眼族の螺旋迷宮・七日目
四十九階層からの邪眼族は、間合いが広くなった。とはバルタの談。
俺にはよく分からなかったが、いつもより遠くから狙撃したバルタに促され、気絶した邪眼族に近づいてみると、その手には剣の他に、矢の先端を丸く太らせたような、不思議な武器を持っていた。
バルタによると、投擲武器らしい。邪眼族は眼が悪いらしいが、気配で位置を察知して投げるようだ。でも、その間合いはこれまでよりも数メートルほど広いだけらしく、大した事はないと言っていた。
まぁ、念の為と『衝撃の弾丸』は+2から+4に変えていたけどな。ちなみにレリーフメダルの素材は『ヒヒイロカネ』だと言う。
魔法の鎧によく使われる金属で、かなり汎用性の高い金属だそうだ。
この日は五十六階層終わりの安全地帯に入って終了である。
…………きのう見かけたと思った蛇が気になっているのだろうか。視線を感じる気がする。感じるのは俺が一人になったタイミングだけなので、俺が怖がりなだけかも知れないが。
◇邪眼族の螺旋迷宮・八日目
邪眼族の螺旋迷宮・五十七階層。これ本当にどこまで深いのだろう? 八日も潜り続けるとは思わなかった。
邪眼族も手強くなってはいるらしいが、やはり『ひのきの棒』のスキル『気絶』がチート過ぎる。まぁバルタが使えば、だけど。
この日のレリーフメダルの素材は『ミスリル』。ファンタジーが好きなら誰でも知っている魔法金属がついに来た。これには俺のテンションも上がってしまったよ。
一階層四フロアでそれが八階層で区切られている。そう考えると4×8で32。ミスリルのレリーフメダルが32枚手に入るのだ。
大きなメダルだし厚みもあるし、結構な量である。これにはバルタもホクホク顔だ。
この日は六十四階層終わりの安全地帯で一泊。フレンド・チャットで商人のゲンゴウにレリーフメダルの件を話したら、是非とも売って欲しいと言われた。
まあ、俺達にはガチャ装備があるから、売っても良いのだが、☆5『技巧神の大工房』がちゃんと使える様になれば、素材として必要かも知れないし、全部は売らないでおこう。
ついにレリーフメダルの素材が『ミスリル』になった訳だが、明日は何が来るのだろうか? …………やっぱアレかな? アレだとしたら凄く嬉しいんだけど。
…………あぁそれと、この日もやはり視線を感じた。でも不思議と怖くなかったんだよ。慣れたのだろうか。…………慣れても良い物なのか? これって。