軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

250回目 ハリボテ

「旦那! あっしは触手の相手をしながら屋敷のダンジョン・コアを破壊に行きやすから、あの鎧のオーガは任せやすぜ!!」

「わかった! 気をつけろよ!!」

「へい! 任してくだせぇ!!」

バルタが奥の壁に埋め込まれているダンジョン・コアへと走ると、それを妨害する様に触手が迫る。その触手の先端には剣や鎌などの刃物がついており、バルタはそれらを弾き、反らし、斬り捨てて先へと進んでいく。

床や壁からは、かなりの数の触手が出て来たが、そのほぼ全てがバルタへと向かった。俺の方は空飛ぶ剣や盾が何体か出て来た程度だ。護る対象が違うからかも知れないが、随分と格差がある。

まあ、俺としては助かるけども。

『ワシ! ワシワシガガ、コ、コロスゥゥ…………!』

「一応は喋れるのか!?」

代官の鎧を纏い、腕が四本に増えたオーガが、まるで壊れたスピーカーのようにノイズの混じる声を出した。『代官の動く甲冑』が喋っていたので、あり得る事なのだろうが、まさかオーガの見た目で言葉を話すとは思っていなかった。

だが、コイツがどうであろうと、俺の敵だと言う一点に置いては変わりは無い。

『ワシシシッ!! ワシワシ! ワシガコロスススス!!』

ノシノシと歩いて来た鎧オーガが、腕を振り上げる。その手には、代官の持っていた剣を大きくした物が握られているのだが、そのゆっくりとした動きに、俺は思わずそれを見ていてしまった。

もっとパワーアップしているものだと思ったら、その動きがあまりに遅く、力も感じないので、逆に意表を突かれたのだ。

それでも、振り下ろされる剣を見ればマズイとも思う。俺は慌てて振り下ろされる剣を防いだのだが、その剣に込められた力はあまりにも軽かった。

「な、なんだこれ?」

『ココ、ココロスゥゥ…………!!』

そして何度も振り下ろされる軽い攻撃を弾き飛ばし、その腕が大きく振り上げられた瞬間を狙って、俺は鎧オーガの腕を斬り飛ばした。その感触も軽く、見た目とのギャップが酷い。

腕を斬り飛ばされた鎧オーガが後ずさるのと入れ違いに、空飛ぶ剣と盾が襲って来るが、俺はそれらを落ち着いて斬り捨てて、鎧オーガへと近づいた。

…………鎧オーガには腕が四本あるのに、その内の二本は動いてすらいない。コイツはダンジョン・コアの力を取り込んで強くなった筈だ。なのにこれでは、普通のオーガよりも弱い。

『ココココッ!』

「…………もういい!!」

俺は剣を振るい、ひと思いに鎧オーガの首を斬り飛ばした。すると、鎧オーガの体が後ろ向きに倒れて崩れ、その胸の辺りからモヤモヤとした、虹色の光が現れたので、それも斬り捨てる。

そのモヤモヤはダンジョン・コアだった筈なのだが、やはりその感触は軽く、後には何も残らなかった。

「…………訳わからねぇけど、後にしよう」

俺は走り回りながら触手の相手をするバルタの手助けをするべく、走った。

「バルタ! 向こうは終わったぞ!!」

「早いですね! なら、触手の相手を頼みまさぁ!!」

バルタの言葉に頷き、俺はバルタの方に向かっている触手の根本を幾つか斬り裂いた。それで俺を敵と認識したのか、バルタに向かっていた触手の幾つかが俺の方に襲い掛かり、その隙をついてバルタが俺に向かった触手を斬り捨てた。

この一連の動きで触手の数がガクッと減り、バルタが勝負を決めに動く!

襲い来る触手をバックステップで躱しながら誘い込み、ある程度伸びきった所で一気にスピードを上げて横をすり抜けたのだ。

もちろん、それを警戒していた触手もあったが、それは俺が防ぐ。バルタと触手の間に体を滑り込ませる雑な方法ではあったが、触手の攻撃では俺の防御力を貫く事が出来ず、バルタは触手に邪魔される事なく、壁に埋め込まれた屋敷のダンジョン・コアにまで到達した。

そしてバルタはダンジョン・コアに向けて真っ直ぐに飛び上がり、その手に持つ『竜爪の短剣』を構える!

「チェックメイト! ってヤツでさぁ!!」

昨日、『コンテナハウス』の中でやったチェスで覚えた言葉をさっそく使うバルタに、ダンジョン・コアがその身を怪しく輝かせると、周囲の壁から無数の槍が飛び出した!!

「甘いですぜ!!」

宙を飛び、ダンジョン・コアに向かっていたバルタには、槍を躱す術は無いと、ダンジョン・コアは考えたのかも知れないが、それはバルタを甘く見すぎている。

向かって来る槍の一本を受け流し、その反動を使って体勢を変えるくらいならバルタはやって退けるのだ。

そして襲い来る槍の全てから身を躱したバルタは、伸びきった槍の間を縫うように『竜爪の短剣』を投擲し、それは見事に、屋敷のダンジョン・コアに突き刺さって割り砕いた!!

その瞬間、俺と戦っていた触手もビクンッ! と身を震わせて止まり、部屋に溢れていた触手の全てが崩れていった。

「…………やれやれ、中々に厄介な敵でしたぜ」

そう言いながら戻って来るバルタの手には、砕いたダンジョン・コアから出て来たのだと思われる一冊の本が握られており、俺達は徐々に崩れ出した『代官の屋敷』と言う名のダンジョンから、強制的に弾き出されたのだった。