作品タイトル不明
25回目 緊急クエスト
目指す目的地であるタミナルの街。その一つ手前の小さな宿場町で、俺達は宿を取った。
目的地まではあと少し。この世界に呼ばれてすぐに始まった逃避行も、そこが一応の終着点だ。つまりはティムやバルタとの旅もそこで終わり。フレンドにはなったし連絡も取れるが、なんだか寂しい気持ちになるのは仕方ないだろう。
俺達は宿の食堂で夕食を取ると、いつものように二つの部屋へと別れた。ティムが一人部屋で、俺とバルタが相部屋である。
「旦那、またスキルを見てるんですかい?」
「ああ、通常のクエストでのクリアアイテムの受け取りとかもあったからな。あとは、バルタが『ひのきの棒』の熟練度を上げきってくれたおかげで、『装備ガチャ』も解禁されたよ」
「おっ! じゃあ旦那の装備もようやっと揃いやすね!」
「そうだな。専用ガチャは☆3以上が確定してるみたいだし、引いとこうと思うんだ」
「若様が居ないとこで引くあたり、氷魔弾の弓を取られた事を気にしてるんでやすね」
「い、いや別に? 俺、弓使えないし? あ、あんなん別に、ちょっと綺麗なだけの弓だし?」
「…………弓が使えなかった事、けっこう悔しかったんでやすか」
「べ、別にそんな事ねーーし!」
などと俺達が言い合っていると、突然サイレンのような音が響き、スキルに『緊急!』という文字がデカデカと流れた!
「な、なんだコレ!?」
「…………? どうかしやしたか?」
どうやらバルタにはサイレンの音すら聞こえなかったみたいだ。つまり、あのサイレン音もこのスキルの一部って事か。本当に何だこれ!?
俺は眉をしかめながらも、いつもの状態に戻ったスキルの画面に目を通した。すると、クエストを受けたり報告して報酬を貰ったりできる『マイスター・バー』の建物に、ビックリマークが付いている事に気がついた。
どう考えてもこれが原因だ。だって、ビックリマークがずっと明滅しているのだから。
俺はビックリマーク付きの建物をタップして、『マイスター・バー』の中へと入った。すると、いつもは笑顔で迎えてくれるマスターが、今回は険しい顔をして出迎えた。いつもはコップを拭いたりしているのだが、それもなくテーブルに手をついてコチラを見て口を開いた。
『お客さん! いい所に来てくれた! 緊急クエストが発令されているんだ、受けてくれないか。報酬は弾ませて貰うが、どうだね?』
「緊急クエスト?」
俺がそう呟くと同時に画面にクエストの一覧が出た。しかし一覧とは言ったが、今回はいつもとは違いビックリマーク付きのクエストが一番目立つ所に大きく貼り出されていた。
《緊急クエスト》
『ソエナ村を救え!! (期限:五日)』
・ソエナ村の近くに自然発生したダンジョンコアが付近のオークに破壊され、それによって進化が起こりオークキングが生まれてしまった。オーク達はゴブリンの集落をいくつも潰して勢力を拡大し、フォレストウルフとまで手を組んでいる。まだオークキングが未熟な内に、これらを殲滅してほしい。森の側にあるソエナ村が蹂躙される前に、どうか頼む!
依頼主:森の樹精霊・フォレストメイジ
報酬:『☆4クラッシュレア確定! ガチャチケット』
「…………ソエナ村……ってどこだよ」
こうまで分からない事だらけだと逆に清々しい。オークがダンジョンコアを破壊して? オークがオークキングに進化して? フォレストウルフってのも従えてるのか? しかもこれ、依頼主が人間じゃないじゃん。報酬も意味が分からない。クラッシュレアってなんだ、壊してどうすんだ。
「旦那、ソエナ村を知ってるんですかい?」
「いや、むしろ知らなくて困っている。バルタは知ってるのか?」
「へぇ、知ってやすぜ。この宿場町の北東にある村でさあ。この宿場町で働いている者の大半は、その村の出身の筈ですぜ?」
「…………マジか。いや実はな?」
俺はバルタに緊急クエストの内容を話して聞かせた。すると最初は訝しげに聞いていたバルタだったが、『オークキング』と『フォレストウルフ』の名が出ると、途端に険しい顔となった。
「…………旦那、そりゃ本当ですかい? オークキングとフォレストウルフ? それが本当なら、洒落にならん事態ですぜ?」
「やっぱ、強くて厄介な相手なのか? 対処は難しいか」
「いえ、対処事態はむしろ簡単でさぁ。この危機を冒険者ギルドに伝えるだけで終わりやす。問題はその終わり方でさぁ」
「…………どういう意味だ?」
「…………これ以上は、若様も交えて話やしょう。ちょっと呼んできやす」
そう言ってバルタは隣の部屋へと行き、ティムを連れて戻って来た。ティムはすでに寝る準備をしていたらしく、男装用のメイクを落とし、ゆったりとしたパジャマのような服を着ていた。
それはもう、どこからどう見ても美少女であり、押さえ付ける物が無くなった胸も膨らんで、自己主張をしていた。
…………端的に言って、メチャクチャ可愛い。
「ガモン、魔物に村が滅ぼされそうってのは、どういう事だ?」
「あ、ああ。いま説明する…………」
口調はティムのままなのか。などと少し考えて俺は頭を振った。今はそんな事に気を回している場合じゃないのだ。
俺はティムに、突然現れた緊急クエストについて説明した。ティムの反応もバルタと似たような物であり、俺が座るベッドの横に腰かけて考え始めた。
そんな場合じゃない事は分かっているが、自分と同じベッドに、しかもすぐ隣に美少女が座ったので、俺の心臓は結構な勢いで跳ねていた。だってメッチャいい匂いすんだよ、ティムのやつ。アイドル顔負けって、この事だと思うよ、いやマジで。