作品タイトル不明
209回目 魔王の封印
「アレス! シエラ! 周囲を警戒! カーネリアはニッカを放すなよ!」
「「了解!!」」
「言われなくても放さないわ!!」
「キャンパー、来い! 換装する!!」
『了解しました。『ステルス機能付き偵察用ドローン』二機の電源をオフにし、待機モードに移行します』
俺に呼ばれたキャンパーが、俺の目の前に二機の偵察用ドローンを停めた。そしてその機能を完全に停止させたのを確認して、俺はその二機をスキルの倉庫に収めた。
ドローンは『◇キャンピングカー』のアイテムだが、機能停止状態であれば俺のスキル倉庫にも入る。ただし『◇キャンピングカー』が外に出ていない状態ではキャンパーは操作できないし、独力で動く事はできるが極めて簡単な指示しか出せない。やはりドローンはキャンパーあってこそのアイテムなのだ。
そして俺は、仕舞った二機の代わりに別の二機を取り出す。『遠距離攻撃用ドローン』二機だ。これまでの『攻撃用ドローン』に比べてスタイリッシュになり、モノアイのようなスコープと、長くて太い銃身がついている。ドローンと言うよりも戦闘機に近い三角形をしている、やたら格好いいヤツだ。
俺がそれらを出すと、途端に電源がオンになり、二機は宙に浮いてホバリングする。俺はその二機にそれぞれ☆3『貫通の弾丸+4』と☆3『衝撃の弾丸+4』をセットする。コイツらの使命は、『郷愁の禍津像』の破壊である。
「ガモン殿! あれを!!」
準備ができた所でアレスが声を上げたので、その指差す方向を見ると、そこには中央のお稲荷さんに向かうアブクゼニスの姿があった。体が重いのか酔ってるのか、その動きはドタドタしていて遅い。
いや、アブクゼニス自体はもはやどうでもいい。問題はその後ろをアブクゼニスの背を押しながら走る男、そのさらに腕の中にある『郷愁の禍津像』だ。
「キャンパー! 『郷愁の禍津像』を破壊しろ!!」
『お任せを!!』
俺の命令を受けたキャンパーが文字通り飛んで行き、移動しながら射撃を行う。
「ぎゃあっ!?」
「うおっ!? マジかよ!!」
何とキャンパーは、二機それぞれから射出した『貫通』と『衝撃』の弾丸を、走る騎士が抱える『郷愁の禍津像』に同時に当てたのだ。キャンパーが今操るのは『遠距離攻撃用ドローン』だ。つまりスナイパーのように狙撃も出来ると考えると、この射撃精度は脅威だろう。本当に頼もしい。
まあ欠点としては、防御力は紙って事だ。銃身が長いから接近戦にもクソ弱い。スナイパーなんてそんなモンかも知れないが。
当然、そんな攻撃を喰らった男は『郷愁の禍津像』を落とした。男は俺達と落とした『郷愁の禍津像』を見て逡巡するが、結局は『郷愁の禍津像』を諦めた。
「くっ!? アブクゼニス様! 早く行きましょう! 魔王が封印されている場所なら、ヤツらも簡単には攻撃できません!!」
「ゼェ…………ゼェ…………、お、おい待て! ワ、ワシの像が…………!!」
「あんなのに構って命を落とす気ですか!!」
アブクゼニスは『郷愁の禍津像』に未練があるようだが、部下の騎士達が無理やり引っ張って連れていった。
「追いますか?」
「放っとけ、アレは後でいいよ。『郷愁の禍津像』さえ破壊すれば、どうせ魔王も消えるんだ。アイツらに報いを受けさせるのはそれからで良い」
アブクゼニスのせいで俺も少し顔見知りになったターミナルス辺境伯家の使用人が何人か殺されている。絶対に生かしてはおかない。俺の手で、ってのは抵抗があるが、報いは必ず受けさせてやる。
だが、それよりも…………。
「まだ破壊できないのか」
地面に落ちた『郷愁の禍津像』が、キャンパーからの狙撃でまた跳ねる。『貫通』と『衝撃』の弾丸、それも+4まで強化したもので破壊できないってのはどういう事だ? いや、ヒビが入ったり一部が取れたりはしているが、随分と頑丈だ。『郷愁の禍津像』ってのは、こんなに硬いのか?
「…………ガモン、それ普通じゃないわ」
「…………カーネリア、貴女にもアレが見えているのですね?」
「二人とも、何の話だ?」
カーネリアとシエルが言うには、『郷愁の禍津像』に魔力が注ぎ込まれているらしい。破壊できないのは、その魔力によって『郷愁の禍津像』が強化されているからだ。そしてその魔力は、あの中央にあるお稲荷さんから流れて来ているらしい。
「映像では解りませんでしたが、肉眼でみるとあの社も大きな魔力で包まれています。あれがおそらく、魔王の魔力なのでしょう」
「でもおかしいのよ。私は家の事があるから当然魔王の封印の地は知っているし、何度か足を運んだ事もあるわ。でも、その時にはこんな魔力は無かったのよ」
…………つまりここだけ? いや違うか、 今(・) だ(・) け(・) こうなっているんだ。…………すげぇイヤな予感がするんだけど。
「ガモン殿!!」
俺が顔をヒクつかせていると、アルグレゴが何人かの隊員を連れて走って来た。その様子はずいぶんと慌てたものだ。
「どうしたんだ?」
「アブクゼニス達がいた所でここに詰めていた魔道士を保護したんだが、魔王の封印がもうすぐ解けると言っている!!」
「はぁっ!? 何でだ!? アブクゼニス達が解くのか!?」
「いや、自然に解けるそうだ。魔王の封印は、常に魔力を消費する。私も初めて聞いたが、ここに詰めている魔道士や兵士の任務は、その魔力を切らさないように補充しながら封印を継続する事だったそうだ。そして再封印には供物として大量の酒がいるそうなのだが…………」
「なんだ?」
「アブクゼニス達は、その供物の酒で宴会をしていたらしい」
「あのクソ野郎!! 絶対にこの手でぶっ殺してやる!!」
…………だが、この俺の宣言はすぐに無駄になった。
何故なら、轟音と共にアブクゼニス達が駆け込んだお稲荷さんが吹き飛んだからだ。
「!? くっ! な、なんだ!?」
「ガ、ガモン様!! アレを!!」
そして瓦礫の山となったお稲荷さんだった物の上に、まるで瓦礫の山から滲み出るように『影』が集まり、形を成した。…………真っ黒に赤い光の走る、『キツネ』の形を。