軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

205回目 シャレにならん

「『緊急クエスト』!? なんでこんな時に!!」

これからアブクゼニス公爵家に拐われたニッカを取り戻そうと言う時に、よりにもよって『緊急クエスト』は無いだろう!?

俺はそう心の中で悪態をつきながらも、スキル内のクエスト表示画面を開いて…………固まった。『緊急クエスト』の内容が、シャレにならない物だったからだ。

《緊急クエスト》

『魔王種『キツネ』の討伐、もしくは封印。(期限:四日)』

・ジョルダン王国の公爵、アクダイカーン=アブクゼニスの手によって、魔王種『キツネ』の封印の地が占拠されてしまった。封印が解かれるより早く『郷愁の禍津像・キツネ』を破壊するか、甦った魔王種『キツネ』を再封印して欲しい。追記:白狐族の少女ニッカは、二日目には生け贄にされる事を明記しておく。

依頼主:?????

報酬:☆5確定! ガチャチケット(討伐追加報酬+1)

「……………………ヤベェ」

ものが『緊急クエスト』である以上、失敗すればこの王都は滅びると思われる。そうでなくても、大打撃は免れない。失敗すれば俺が詰むのが『緊急クエスト』だと俺は考えているので、これは絶対に失敗できない。

しかも、期限は四日となっているが、二日目にはニッカが生け贄にされると言う。なら、実質二日しか時間が無い。

ただでさえ魔王関連でヤバイ事態なのに、そこに拐われたニッカの救出まで加わるとは。それもこんなに短い期限で。

「だけど希望もある。これはつまり、今ならまだ討伐も可能だって事だ。封印が解かれる前に『郷愁の禍津像』を破壊できれば問題はない!」

俺はこの『緊急クエスト』とその内容を仲間に伝えると、さらに『フレンド・チャット』を通して関係者に開示した。

依頼主と報酬については開示しなかったが、問題はないだろう。何せ依頼主に至っては、『?????』などと表示されている。これも謎だな。依頼主を開示出来ないのか、もしくは『スキル』自身が依頼主だとかそういうアレかも知れない。

まぁそれはともかく。俺が『緊急クエスト』を開示した事で、さっそく情報が集まってくる。その発信元は、やはりロイエン宰相である。

まず、事を起こしたアブクゼニス公爵の領地だが、王都から王家直轄地をはさんで北東部に広がっているらしい。

王都からはそれなりに離れており、間にある王家直轄地には魔王の封印された地が幾つかある。魔王『キツネ』が封印されている地も同様である。

魔王の封印された地は、基本的には秘匿されている。兵士をそれなりに配置しているし目立つから知る人ぞ知るレベルだが、『そこに魔王がいる』などと大々的に謳ってはいない。

ただ、魔王がいた場所には嫌でも目立つ場所もある。魔王によってはその動物的本能で巨大な『巣』を形成する種もいるからだ。ジョルダン王国で有名なのは『ビーバー』だろう。

魔王『ビーバー』の封印の地は、それとは知られていなくとも、かつて魔王が大河に築いた巨大な『ビーバーの巣』が観光地になっている。

魔王『キツネ』に関しても観光地とまではいかないが、小さな『キツネの 社(やしろ) 』がある。これは『キツネ』が呪いに長けた魔王であり、かつて『キツネ』を封印した勇者の指示によって建てられた物である。

その勇者はよほど信心深かったらしいな。

「さて、のんびりしてられないぞ。既に封印の地は押さえられているし、そこにはニッカもいる事が解った。何故そうなっているのかは知らないが、敵はニッカを魔王への生け贄にしようとしているらしいからな。それは絶対に阻止する」

「当然よ! 何のつもりかは知らないけど、ニッカは私が助け出すわ! 絶対に殺させたりしない!!」

目の前でニッカを拐われた経緯もあってか、カーネリアの決意は固い。もちろん俺達だって、ニッカを生け贄なんかにさせるつもりは毛頭無い。

ジョルダン王国としても、今回のアブクゼニス公爵家の暴挙は許す事が出来ない。なにせ魔王の復活だ。それはジョルダン王国を滅ぼしかねない暴挙。『魔王』や『郷愁の禍津像』の真実を知らない筈のアブクゼニス公爵だが、どうやら『郷愁の禍津像・キツネ』を所持しているらしい事は解っている。

何せ『緊急クエスト』にもそれを匂わせる一文があるからな。事態は深刻なのだ。

「城の方では軍を派遣するとか言ってるけど、それで敵が奮起して魔王の復活が早まったら最悪だ。軍を派遣するにしても、王都だけにして貰った方がいいよな?」

「でもそうなりますと、封印の地に行くのは少数って事になりますよね。いくらガモン様のスキルが優れていても、魔王が復活してしまったら単独では戦えません」

「ならば俺達で、魔王が復活するよりも前に『郷愁の禍津像』を破壊するしかないだろ。アブクゼニス公爵は『郷愁の禍津像』の真実を知らない。だからそれをもって魔王の封印を解きに行くなんて暴挙に出ているんだ」

「アレスの言う通りだ。最善は俺達が乗り込んで『郷愁の禍津像』を破壊する事。だけど俺達の最優先はニッカの救出だ」

「…………私としてもニッカは助けたいし絶対に助け出すけど、魔王が復活するかも知れないのに、それを後回しにするのは反対よ。ニッカは私が命に変えても助けるから、ガモン達は…………」

「「「ダメだ(です)!!」」」

俺達三人の息を合わせたダメ出しに、カーネリアが怯む。いやダメに決まってるだろ。カーネリアは本当に一度命を落としているのだから。

「安心しろカーネリア、魔王を後回しにする気はない。『郷愁の禍津像』の破壊は、キャンパーに任せる」

俺の言葉を聞いた仲間達の視線が、偵察用ドローンの姿で浮かぶキャンパーに集中する。キャンパーなら狙撃も出来るからな。なにも正面から乗り込んでバカ正直にハンマーを振り下ろす必要など無いのである。