軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

189回目 ジョルダン王国の重鎮達

ジョルダン王国の王城にある会議室。その中でも特に機密性が高く重要な内容の時にしか使われない『特別会議室』には、自身も上位貴族であるターミナルス辺境伯をして気を引き締めざるを得ない程の者達が顔を揃えていた。

ジョルダン王国の国王であるジョゼルフ=アインズ=ジョルダン。

宰相であるロイエン=ルフタング。

内務大臣ベルシュター侯爵、外務大臣デデガルド侯爵、軍務大臣フリードアイス侯爵。

魔導大臣マルヒルド=マインド侯爵。

北のカールグス辺境伯、西のハルトナイト辺境伯、南のヒルアントン辺境伯。そして東のターミナルス辺境伯。

ジョルダン王国冒険者ギルド本部ギルドマスターのエルドルデ、タミナル支部ギルドマスターのモンテナ。

一同の顔を見回して、ノルドは四方すべての辺境伯家が集められている事に驚いた。もちろん、全員が当主と言う訳ではないが、前当主や家宰などの、王都においてある程度の裁量を任されている者達だ。

そして宰相の部下が資料を配り、国王に促されてターミナルス辺境伯が資料についての説明と質疑応答をした事で、その場にいる全員から溜め息が漏れた。

「唐突に呼び出され老体に鞭打って来てみれば、このようなとんでもない話を聞かされるとはのぅ。『郷愁の禍津像』か。…………持っとる者に多少の心当たりはあるのぅ」

「…………参ったな。隠し立てしても仕方ないから言うが、ワシも軍を動かしてのダンジョン攻略の時に見つけた事がある。…………ただ、部下に攻略の褒美としてやってしまった。そうと知っていれば、その場で破壊したものを…………!」

そう言ったのは南の辺境伯家の前当主だった老人と北の辺境伯家に仕える騎士団長だ。

やはり貴族の中でも顔の広い者や、領地内のダンジョンによく潜る者はその存在を知っているらしい。

「やはり手元に置いておる者は少ないですか。ここにある四つも、いずれ報酬として使えるかも知れぬと城の宝物庫にしまってあった物です。まあ、今回の事があるまで忘れられていた物でしたがね」

宰相の言葉を聞いて、ノルドはテーブルの上に置かれている『郷愁の禍津像』に眼を向けた。

置かれているのは『ツバメ』『ゴリラ』『キノボリカンガルー』『ヤドカリ』の四つだ。それぞれがその仕草と表情で苦悶する様を見せている。

こんな悪趣味な物を褒美として用意していたとは、もはや押し付けるという表現の方が相応しかろう。と、ノルドは顔をしかめた。

「この他にも、ドゥルク翁より『カエル』がもたらされております。『カエル』については我が国に封印の地がありますので、まずはそちらを破壊してみる手筈となっております」

「宰相殿、私から一つよろしいか?」

「ええ、構いませんよ。マルヒルド殿」

宰相に断りを入れて立ち上がったのは、魔導大臣として魔法に携わる研究を行っているマルヒルド=マインドだ。

その姿は軍服を着た軍人であり、髪も髭も油でしっかりと整えられており、魔導師のようには見えない。さすがに今は無いが、普段はその腰に剣代わりの杖が差してあるらしいが、それでも魔導師に見えるかは疑問だ。

そして、その『マインド』と言う家名から解るように、マルヒルドはドゥルク=マインドの血筋である。すでにドゥルクの血も薄れて、似ている所は少ないが間違いなくドゥルクの子孫なのだ。

「ノルド殿。この資料にある事が真実である事は私も疑っていない。最重要機密事項として陛下自らが我々を集めているのですから、紛れもない真実なのでしょう。…………しかし解せない。この『勇者ガモン』とはどれ程の男なのですか? 我が先祖が、子孫たる我らにではなくポッと出の勇者に『ドゥルクの書庫』を渡したと言うのが信じ難い。それは本来であれば、我ら子孫が受け取るべき遺産ではないですか! それは私の物だ!!」

語気を強めて迫るマルヒルドに、ノルドは小さく溜め息をついて「やはりこうなるか」と小さくつぶやいた。

「はてさて、そんな事を私に言われても困りますな。私の認識では『ドゥルクの書庫』はドゥルク=マインドの物です。いや、物だった。の方が正しい。何せそのドゥルク翁からガモンは直接受け取っているのです。貴方に渡さなかったのはドゥルク翁の意思であり、それは尊重されるべきでしょう」

「ウム。ノルドの言う通りだ。それにこの資料にあるように幽霊としてドゥルク翁がこの世に留まっておるのならば尚更だろう」

ノルドの言葉に続いて国王もその発言を支持したので、マルヒルドはギョッとして国王へと眼を向けた。

「し、しかしながら陛下! あの『書庫』には数多くの魔道書や魔道具が残されておるのです。いえ、あの空間自体がとてつもない魔道具でもある。ああいった物はそれこそ国で管理される物ではありませんか!?」

つい先程、「あれは私の物だ!!」などと口走っておきながら、今度は「国で管理するべき」だと嘯く。普段の仕事ぶりから大丈夫だろうとこの場に呼んだ事を、国王は少々後悔した。

「ならばドゥルク翁と勇者ガモンに会い、直接交渉せよ」

「うぐ…………! わ、わかりました」

顔を引きつらせて頭を下げるマルヒルドを見て。まぁ、ドゥルク翁にまったく頭が上がらなかったマルヒルドには不可能だろうと、国王は心の中で溜め息をついた。