軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

185回目 囚われの子供達

横転した馬車の惨状は酷いものだった。馬車の周囲には数人の死体があり、馬にいたっては胴体を切断されていた。おそらく馬は、あの大ムカデにやられたのだろう。

そして馬車の中を覗くと、そこには太った男の死体と、真っ白で美しい髪を持つ子供が二人倒れていた。

「…………獣人! それも白狐族の子供です!!」

「…………獣人……か。なんか、ずいぶん神々しいな、この子供達…………」

「はい、白狐族は神の使いとも言われる種族ですから。いえ、今は早くこの子達を連れて離れましょう!」

「お、おう!」

シエラと二人で子供達を抱えて馬車を離れる。そして子供達を助けた事をアレスに伝えると、アレスは『白雷獣の剣』から白い稲妻を漲らせ、上段から剣を振り下ろした!

「『 白牙雷霆(はくがらいてい) 』!!」

『ギィィシャァァアアァァーーーーッ!!??』

その瞬間! 周囲に白い閃光が走り、轟音と共に激しい雷が大ムカデの全身を貫いた!

荒ぶる白雷が大ムカデを蹂躙する中で、アレスは下に振り下ろした剣をゆっくりと回して横に構えると、凄まじい踏み込みで地面を砕きつつ大ムカデの横を走り抜け、大ムカデはアレスの剣が通り抜けた場所を境として上下に分断された。

「……………………フゥ…………」

カシィン! と音を立てて剣を鞘に納めるアレス。

いや、もう勇者じゃん。もう完全にアレスが勇者ですよコレ。

「…………うぅ…………ハッ!?」

アレスのあまりの勇者っぷりに呆れていると、地面に寝かせておいた獣人の少女が目を覚ました。少女は起きてすぐに俺を見ると、辺りを見渡してもう一人の獣人の子供を見つけた。

「ダッカ!!」

もう一人の名前だろうか? 何やら叫んだ少女はもう一人の子供に駆け寄ると少女よりも小さい子供を抱きしめた。

そしてその子供を抱きしめたままでジリジリと距離を取る。なんか睨まれてるし。

…………何だろう? 何だか凄く警戒されている。俺はそんなに悪人面じゃないし、シエラは見るからに怖くはない。

じゃあ何でだろう? と、首を傾げていると、少女の眼が俺が左手に持つ物に注がれていた。

俺の左手には小さな檻がぶら下がっており、その中には掌に乗る程度の小猿が三匹入っている。

…………ああ、なるほど。これは警戒するわな。こんなの持ってたら、どう見ても悪人だもの、俺。

「ハァ…………」

「……………………!!」

俺がため息をついた瞬間、少女はもう一人の子を抱えたままで踵を返して逃げ出した。

何も逃げる事はないだろう、と追いかけようとしたが、その必要は無かった。

逃げ出した少女が、急に膝をついたからだ。少女は地面に膝をついてもう一人の子供を取り落とすと、両手を首に当てて苦しみだした。

「…………ぁ……ぐ…………かはっ…………!」

「お、おい?」

「…………ハッ! いけない!!」

ただ事ではない少女の様子にシエラが走り出し、二人の子供を両脇に抱えて戻って来た。すると少女の苦しむ様子が緩和され、少女は苦しそうに息を吐いた。

「何だ、何が起きた?」

「…………うっかりしていました。この子達のしている首輪、これは『隷属の首輪』です」

「『隷属』? …………って、事はもしかして」

「はい。この子達は奴隷です。それもこんな強力な『隷属』の首輪を使っていると言う事は、彼女達は違法奴隷です。おそらくは…………拐われて来たのでしょう」

「…………おいおい」

…………と言うか、そもそも奴隷がいるのかよって話なんだけどな。…………いやしかし、一気にキナ臭い話になったな。違法奴隷…………か。

苦しそうに倒れた子供も、シエラが連れ戻るとその苦しさが無くなったらしく、しかしグッタリとしている。シエラによると、『隷属の首輪』に主人として登録されている者から離れると、首輪が絞まるようになっているのだと言う。

つまりは、あの馬車の死体のどれかが主人であり、そこから一定の距離しか離れられない訳だ。

「…………首輪に鍵穴があるな。アレス、鍵を探すぞ!」

「はい!」

俺はシエラに子供達を頼んで、アレスと二人で馬車から鍵を探す。死体の持ち物を調べるのは恐怖だが、あの子供達の為だと我慢して調べた。だが、鍵は見つからなかった。

「…………おそらくこれですね」

そう言ってアレスが持ち上げて見せたのは小さな箱だ。

「これは『アイテムボックス』です。鍵はこの中だと思います。ですが、『アイテムボックス』からの物の出し入れは登録された者しか出来ないので、俺達じゃ出せません」

「ティム達と旅した時に、カラーズカ侯爵家の馬車にも乗ってたヤツだ。あれよりも小さいが、性能は同じか。持ち主が死んだら出せなくなるのかよ…………」

正確には、「アイテムボックス」には数人登録できるらしく、登録者がここに来れば出せるらしいが、そもそもそんな奴がいるのかも解らないし、子供達の移動には『隷属の首輪』の主人と鍵の両方が必要みたいなのだ。

…………最悪だな、この『隷属の首輪』ってやつは。