軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

183回目 『ドランクモンキー』

◇ガモン

《二人とも、ここからの会話は基本的にチャットでやるからな》

◇シエラ

《わかりました》

◇アレス

《了解》

ドランクモンキーの群れを見つけた俺達は、無言で頷き合うと森の中へと入った。草や小枝は多いが音を出せば気づかれるかも知れない。そうでなくとも、他のモンスターに見つかって戦闘なんて事になれば最悪だ。

だが、俺には秘策とも言えるガチャ装備がある。それが☆3『忍び足の足袋』と☆3『迷彩マント』である。

まず『忍び足の足袋』には『消音歩行』というスキルがついている。これは歩行によって出る音を極力少なくしてくれる、使い所が限定され過ぎる装備だ。

音を消すのではなく小さくする。しかも足音限定で。正直、こんな使えないスキルは無いなと、忍び足くらいスキルなんか無くても俺でも出来る、と思っていたが。

…………汚い話、この場所に来てからちょっと立ちションをしに森の中へと入った俺は、自分の見立ての甘さを痛感した。あ、これ無理だと。森ってこんなに音が出るっけ? と思い知った。

なのでこれはヤバイと、ガチャ装備の一覧を見ていて発見したのがこれだ。しかもアルグレゴ小隊に出して熟練度が上がりきった物がちょうど三つあった時には、「おっしゃ! ラッキー!」とつい口から出てしまった。なので俺達はみんな、その足袋を履いている訳だ。

そして二つ目の『迷彩マント』。これはもう説明がいらない気もするが、敵に発見され難くなる『迷彩』のスキルを持っている。あくまでも発見され難くなるだけであり、よく見られると発見される微妙なスキルではあるが、森の中ならその効果は絶大だ。

しかもフード付きでそれを被れば、全身が迷彩になる。顔に何か塗りたくる必要もないので、これは最初から使おうと思っていたのだ。

◇ガモン

《おうおう、争ってるなーー》

森の中をしばらく進むと、ドランクモンキーとゴブリンが争ってる場所にたどり着いた。

ドランクモンキーは、確かに猿の姿をしていた。だが、俺が想像していた日本猿とは大きく異なり、その見た目はマンドリルのようだった。

◇シエラ

《もうすぐ終わりそうですが、どうしますか?》

◇ガモン

《もう酒を置いちゃうか?》

◇アレス

《いえ、戦いが終わってからの方が良いでしょう。勝利した後の方が、警戒心は薄いはずです》

◇ガモン

《そうだな。勝利の美酒で、気持ちよく逝って貰うか》

俺達は自分達にとって都合の良さそうな場所を探すと、ドランクモンキーとゴブリンの戦いが終わるのを静かに待つ。

『グギャッ!?』

『『ウッキキーーッ!!』』

そして最後のゴブリンが、ドランクモンキーの持つ錆び付いた剣で叩き伏せられドランクモンキー達から勝利の雄叫びが上がった所で、俺は猿達から少し離れた場所に三つの酒樽を出した。

この酒樽の中身はすべてアルコール度数の高過ぎる酒である。アルコール度数が強すぎる酒と言うのは通常の温度だとすぐ蒸発してしまうらしいので、わざわざ☆4『業務用冷蔵庫』の中で詰め替え作業をしてきたのだ。

俺達は三つの酒樽の蓋を少しだけ開けると、近くの草むらに身を隠して様子をうかがった。

『…………ウキ?』

『ウキキッ!』

◇アレス

《どうやらもう嗅ぎ付けたらしいですね。こちらに来ます》

◇ガモン

《よし、二人とも動くなよ?》

◇シエラ

《わかっています》

隠れたままでドランクモンキーの様子を伺うと、猿達が酒樽の周りに集まって来た。そして少し開いていた酒樽の蓋を完全に開けると、酒に手を突っ込んでその手を舐めた。

『カカッ!?』

『キギッ!?』

そして、これほどアルコール度数の高いのは初めて飲んだのか体をビクンッ! と固めると、…………みんな纏めて走り去ってしまった。

……………………アレ?

◇ガモン

《も、もしかして、ちょっと強すぎたか?》

◇シエラ

《みんな逃げていっちゃいましたね》

もしかしなくても、これ失敗か? そんな風に俺が思い始めた時。

◇アレス

《ガモン殿! あれを見て下さい! 戻って来ましたよ!》

アレスからのチャットに顔をあげると、走り去った猿達がその数を大きく増やして戻って来るのが見えた。しかもその全ての猿が、大きな木の実の殻を二つに割ったような器を手に持ったり頭にかぶったりしている。

…………どうやら、一旦棲みかに戻って酒を飲む為の器を持って来たらしい。しかも、棲みかにいた仲間もそれを見てたのか、一緒になってついて来たらしい。

中には大人にしがみついている小猿の姿もあるし、やたら顔の模様が派手で体も一回り大きいボスの様な個体もいるから、本当に全員を連れて戻って来たようだ。

『ウキッ! ウキキッ!』

『ウッキキーーッ!』

『ウキョキョキョキョッ!!』

奇声と共に始まる大宴会。猿達はアルコール度数の高い酒を器にすくってはガブ飲みし、そのあまりの強さに奇声を上げて転がると、さらにもう一杯とすくって飲んでいった。

そして樽の中身が半分以下になると、円陣を組んで座り込み、樽を傾けて回し飲みを始めた。…………マジかよ。

「…………終わったな」

「終わりましたね…………」

「まさか小猿まで飲むとは…………」

俺達が絶句しながら見る広場では、空になった樽と共に、全てのドランクモンキーがブッ倒れていた。本当に全員が酔い潰れるとは…………。と、とにかく勝利だな!