軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

164回目 拠点ゲット

アルグレゴ小隊が訓練を続ける訓練所を後にして、俺達は本来の目的を果たすべく辺境伯家の城へと入った。

執事の一人に出迎えられ、広い廊下を歩いていると。

「確保ーーっ! ですわ!」

「うぉわぁっ!?」

突然、廊下の物陰から飛び出したモノが俺の腕へと絡み付いて来た。視界に映るのは金色で縦ロールの髪で、腕には柔らかい物が押し付けられ、俺の腕が挟まった。

「リメイア!? な、ななっ!?」

若い女の子からの柔らかくも過剰なスキンシップに頭がフリーズする。いやいやいや! ヤバイヤバイヤバイ!! こんなのノルドにでも見られたら処刑されるわ!!

「ちょっ!? はな! 離れ…………!!」

「聞きましたわよ! 昨日私の婚約者とデートしたそうですわね! こうかしら! こうして腕を組んで歩くのでしょう?」

腕を組む、と言うよりはしがみついてぶら下がっている、と言う表現の方が合いそうなリメイアの行動に、シエラやアレスも戸惑っている。いや止めてくれよ!

「組んでないって! 手も握ってないぞ!!」

「あらそうなの? …………でも」

突然グイッと腕を引かれたかと思うと、リメイアは俺の耳元まで顔を寄せて、『ティアナのファーストキスは、奪ったのでしょう?』と、とんでもない事を囁いてきた。

知ってんのかよ!? いやあれも事故だからね!?

「いやあれは…………!?」

と、その時。俺の視界の端に『フレンド・チャット』の受信マークが現れた。突然の事につい反応してチャットを開くと。

◇ノルド

《私の娘と何をしている》

◇ノルド

《何でくっついている》

◇ノルド

《何で顔を寄せている》

◇ノルド

《殺すぞ》

◇ノルド

《殺すぞ》

◇ノルド

《殺すぞ》

と言う怖すぎる内容と共に、廊下の窓から庭を挟んで斜め向かいの窓に、鬼のような形相で張り付くノルドの姿が見えた。

…………あぁ、もうダメかも知れない。

結局、リメイアの押しには勝てずリメイアと腕を組んだままでノルドの待つ部屋に通された。

ニコニコと満面の笑みで俺と腕を組む娘の姿に母であるマチルダは目を丸くし、父であるノルドはその視線だけで俺を射殺せそうな獰猛な笑みを浮かべている。

…………いや怖ぇよ。言っとくけど、離さないのはお宅の娘さんですからね?

「リメイア、はしたないわよ。ガモン君から離れなさい。そのままじゃ、ノルドが倒れてしまうわ」

「…………しょうがないですわね。ここまでにしておきますわ」

マチルダの一言で、やっとリメイアは離れてくれた。ノルドはまだヤバイ顔をしているが、大丈夫だよな?

「……………………」

「…………あーーっと、『屋敷』の件でうかがったのですが…………」

「誰が『お義父さん』だ…………!」

「いや言ってねぇよ!? 一文字も合ってねぇだろうが!!」

頭に血が上っているのかノルドと会話が成立せず、まともに会話が出来るまで少し時間が掛かってしまった。

「…………ゴホン。すまない、私としたことが少々取り乱したようだ。それで、屋敷の件だったね。それならもう正規の手続きも済んでいるから、あとはガモン君に引き渡すだけだ。誰か案内をつけるから、早速行ってみるといい」

「それなら私が案内をしますわ!!」

何とか普通に会話が出来るようになったノルドが、俺が貰う屋敷までの案内にリメイアが手を挙げた事で、また目に見えて機嫌が悪くなる。

何かを言おうと口を開きかけるノルドだったが、しかしそれは先に口を開いたマチルダによって遮られた。

「リメイア。ガモン君を案内するのはいいですが、外では先程のように腕を組んだりしてはいけませんよ。あなたは婚約者がいる身なのです。分別は持ちなさい」

「はい。わかりました、お母様」

マチルダさん、マジで助かります。そのリメイア以上にお嬢様みたいな豪奢な見た目に惑わされて忘れそうになるが、流石はゲンゴウの娘だ。

マチルダが釘をさしてくれたお陰で、その後はスムーズに屋敷まで案内をしてもらえた。リメイアはタミナルの街の領主の娘だからな、そのお嬢様そのものである見た目もあって、顔を知る者は多いだろう。

しかもティムという婚約者がいるお嬢様が、他の男と腕を組んだりしていたら大問題に発展するだろうし、本当に事前にマチルダが釘をさしてくれて良かったよ。いやマジで。

「さあ、着きましたわよ。これがガモンの屋敷ですわ!」

「おおっ! これが…………って、ここティムの屋敷の裏隣じゃん」

「あら気づきましたか。その通りですわ」

リメイアに案内されたのは、貴族街にあるカラーズカ侯爵邸の裏隣だった。しかも、屋敷の大きさや敷地もこちらがやや小さい程度で同じくらいだ。

「ここは数年前まで他国の貴族が持っていた別邸ですわ。カラーズカ侯爵家の近くなので、譲る人は厳選しなければいけない物件だったのですけど、ガモンならちょうど良いでしょう?」

「ぶっちゃけたな。でも、確かにその通りだな。俺も近くにティムの屋敷があるのは心強いしな」

この流れで、カラーズカ侯爵家の人がこの街にいない間は、侯爵家の使用人が屋敷の維持に協力してくれる事にもなった。

ノルドは、ちゃんと俺達の事を考えて屋敷を選んでくれたようだ。