軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

160回目 ティアナとデート

いい天気に恵まれた午後。俺は『海ヘビ』の噴水がある広場で、ティアナと待ち合わせをしていた。

今回は俺が誘ったデートではなく、ティアナに誘われたデートだ。なのでリードはティアナがやってくれるらしい。

って言うか、女性リードでのデートなんて初めてで緊張するんだけど。いや、デートの経験がそもそも少ないから緊張するのはデフォなんだけど。

って言うか、侯爵令嬢とのデートに着る服とか解んないから無難にまとめたよね。清潔感にだけ気をつけて生活ガチャから出て来たジャケットにスラックスって日本の街を歩くスタイルになっている。異世界浮くよねーー。でも解んないもの。

「お待たせ、ガモン」

「お、おう。…………ティアナ、今日はよろしく」

そして、なんだかいつもよりキラキラしているティアナがやって来た。髪もなんかフワフワしていて髪飾りも付け、その服装はワンピースにカーディガンである。俺に合わせてくれたのか、あの服は生活ガチャから出て来た物だと思う。

…………って言うか、すげぇ可愛い。日本でもアイドルとして通用するくらいにキラキラしている。いつもは男装しているからノーメイクだが、うっすら化粧をしているのか美貌に磨きが掛かっている。

…………ヤベェさらに緊張してきた。これ本当に俺が隣を歩いて大丈夫なのか?

「じゃあ行こう、ガモン。今日は私がタミナルの街を案内してあげるからね」

「あ、ああ。まずはどこに行くんだ?」

「ガモンは午前中アルグレゴさん達と一緒だったみたいだから、ご飯はまだでしょ? オススメのお店を教えてあげるから、そこに行こう?」

俺もこの街に来てから、シエラやトルテと一緒に何度か飯に行ったし、夜には飲みに行った事もあるから、それなりに店は知っているつもりだった。

しかしティアナに連れて行かれた店は、トルテのオススメのレストランや食堂ではなく、『ビステリア』と言う名前の、お洒落な感じがするカフェだった。

この店自体は俺も知ってはいたけど、喫茶店としか思ってなかった。インスタントコーヒー派の俺は入る事の無い店だ。喫茶店ならギルドの中にあるやつで間に合ってたしな。

だがここは、どうやら食事も出している店だったようだ。

店はお昼時という事もあってか外に列が出来る程の盛況っぷりだったが、ティアナは予約をしていたらしく、すぐに低い衝立で仕切られたテーブルに案内された。そしてすぐにウェイトレスが注文を取りに来たのだが、どうやらそのウェイトレスとティアナは顔見知りのようだった。

「いらっしゃいティアナちゃん。この前はありがとうね。ティアナちゃんから貰ったレシピと食材のおかげで、厨房の皆は喜んでいるし、お客さんも増えたよ」

「うん、凄く盛況だもんね。ごめんね、予約なんてさせて貰って」

「いいのよ。こんなにお客さんか来てくれるのもティアナちゃんのおかげなんだから。それで、注文は予約の時に言ってたやつでいいの?」

「うん、お願いね」

ウェイトレスが去ると、ティアナが小声で教えてくれた。どうやらこの店に、俺のガチャから出てきた『レシピ本』といくつかの『ガチャ食材』を提供したらしい。と言ってもレシピ本は一冊だけだし、食材もほとんどが調味料やバターや生クリームといった加工品らしいが。

しかしそれでも、この世界の料理は大きく前進したらしく、今日はそれを俺に食べて貰おう、という事みたいだ。

そしてしばらく待って出て来たのはプレーンオムレツと、野菜や肉が挟まったホットサンドにコーヒーだった。

プレーンオムレツにはトマトケチャップで大きなハートが描かれているが、この店のオムレツはこれが定番なのかとティアナを見てみると、ティアナの顔が赤くなっていたので店が気をつかった結果のようだ。

「さ、さあ、温かい内に食べてみて下さい!」

「お、おう。いただきます」

俺はティアナに言われるままにプレーンオムレツとホットサンドを食べてみた。

うん、どちらも旨い。だけど、どうやらオムレツの卵やホットサンドの肉はガチャ食材ではなく、この世界の食材らしい。卵の風味は違うし、肉は若干だが血の味がする。でもそれは嫌なものではなく、俺はけっこう好みだった。

そしてティアナと談笑しながら食事を終えると、その後にはデザートとして何とクレープが出て来た。

皿に載せられたそれは俺が知る一般的なクレープの形ではなく、長方形に折り畳まれている。ウェイトレスがクレープだと言って出さなかったら、おそらくは食べるまでもクレープだと気づかなかっただろう。

「へぇ、クレープが出て来るのか」

「ええ、このお店の新商品です。ガモンのガチャから出たレシピ本を元にして作られているんですよ? 残念ながら『生クリーム』の根本的な作り方が解らなかったので、ガチャ食材の生クリームを使用していますけどね」

「あーー、生クリームかぁ。それは俺も作り方までは知らないな。牛乳を使うのは何となく解るけどな」

「ええ、そこは試行錯誤をしている所みたいですね」

でも異世界に来てデザートでクレープが出て来るのは面白いな。ティアナによるとクレープ自体はもっと前からあったらしいが、この『生クリーム』を使った物は初めてなのだそうだ。

うん、ここでの食事は楽しかった。この店にはまた来るとしよう。教えてくれたティアナに感謝だな。