作品タイトル不明
146回目 ドゥルクとの面談
「……………………うーーん。やっぱちょっと違うよなぁ…………」
寮の裏にある高い塀に囲まれた広場で、俺は今回のガチャで出て来た☆4の車を並べて見ていた。
軽自動車から普通車、四駆にワゴンにスポーツカーと、種類も形状も様々だ。
しかも、今回スキルの倉庫から車を出す時に解った事なのだが、なんとコレ、倉庫の中でアイテムの説明画面を開くと、色や装備を変えられるのだ。
ガチャのアイテムとして出てくる特別なアイテムはそれを所持していないと変えられないが、色が自由に変えられるってのは凄いと思う。俺もそれが解った時は声を上げて喜んじゃったしな。
そして更に☆3のアイテム『痛車ステッカー』。
これは所持しているマンガの絵をステッカーに配置する事により、簡単に『痛車』を作れるというアイテムだ。さすがに使いきりのアイテムだが、ハッキリ言って面白い。…………まぁ、俺に『痛車』に乗る勇気はないが。
「…………色が変えられるのも装備を変えられるのも、凄く嬉しいんだけどなぁ…………」
一番の問題は、この中に☆4『ランブルクルーザー』が無いって事だ。それが最大の問題だ。
一度は手に入れたランブルクルーザー。クリムゾン・アントとの戦いで無慈悲に潰された(キャンパーに)ランブルクルーザー。あんな事があったせいか、もう趣味の車は『ランブルクルーザー』の一択になってしまっているのだ。軽いトラウマである。
「やっぱり『物欲センサー』か? 欲しい物ほど当たらない、あの妖怪が絡んで来ているのか?」
「うおっ!? なんだこりゃ!?」
「ホッホッホッ。これは『車』ですな。☆4のアイテムである車がこんなに並んでいるとは、壮観ですなぁ」
車を並べて悩んでいる内に約束の時間になったらしく、モンテナとゲンゴウがやって来た。
「こんにちは、モンテナ殿、ゲンゴウ殿。すいませんね、すぐ片付けますんで」
俺は二人に軽く挨拶をすると、次々と車をスキルの倉庫へと入れていった。
「おいおい、こんなデケェもんを簡単に入れちまうとか、メチャクチャだな。ガモンのスキルは」
「まぁガチャから排出されたアイテムのみ、などと制限もあるようですがね。しかし羨ましいのは変わりませんな」
車を全て片付けると、俺は開けたスペースに『◇キャンピングカー』を取り出した。
「さあどうぞ。ドゥルクには、軽く話は通してあるんで」
「お、おう」
「ではお邪魔しますね」
二人を中へ促すと、モンテナは緊張もあるのか少し顔を引きつらせながら、ゲンゴウは慣れて来たのかいつもの調子で『◇キャンピングカー』の中へと入った。
『ようこそ。ワタクシは『◇キャンピングカー』の管理AI、キャンパーと申します。モンテナ殿にゲンゴウ殿。歓迎いたします』
「…………お、おう」
「よろしくお願い致します」
モンテナは『◇キャンピングカー』の中に入って中の様子に驚愕し、更にキャンパーの登場に少し後退った。キャンパーに会うのは初めてではない筈なのに、この場の空気に飲まれているのかも知れない。
キャンパーもそれを察したのか、立ったままの二人にペットボトルのミネラルウォーターを渡した。
モンテナはやはり緊張していたのか、貰ったミネラルウォーターをさっそく半分ほど飲んでいた。
そしてモンテナが少し落ち着いたのを見計らって、キャンパーが二人をドゥルクの部屋へと案内した。
『おう。お前さんらか、ワシに会いたいと言うのは。…………フム。なるほど、見た顔じゃな』
「…………いや聞いてはいた、聞いてはいたが、本当にドゥルク=マインドの幽霊…………とはな。…………お久し振りです、ドゥルク翁。何度かお会いしていますが、モンテナです」
「…………まさにドゥルク翁ですな。お久し振りですわい。タカーゲ商会の会頭をやっておりますゲンゴウです。覚えておられますかな」
『ウム。二人とも覚えておるぞ。ゲンゴウは何度かワシの所に来ておるの。そっちのはバルタとパーティーを組んどったじゃろ。バルタが一人でおったから聞かなんだが、生きとったなら何よりじゃ』
「はい。今はこのタミナルの街で冒険者ギルドのギルドマスターをしています。」
俺が二人の事を伝えた時にはイマイチ覚えていない様子だったが、ドゥルクは二人の事を思い出したようだ。ドゥルクは二人をソファーに座らせると、自分は『鍵穴』のある壁へと向かい『ドゥルクの書庫』の入り口を開いた。
「「おおっ…………!!」」
『お主らの目的はこれじゃろ? 見ての通りじゃ。管理はワシがしておるが、すでにこれはガモンに渡しておる。所有者はガモンじゃよ』
そう言うとドゥルクはフワリと浮かびあがり、軽く飛んで二人の対面にあるソファーへと着地した。
…………流石は大魔導師ドゥルク=マインドだ。最初に『ドゥルクの書庫』を開いて見せる事で完全にこの場を支配したな。モンテナはもちろん、交渉ごとでは百戦錬磨であるゲンゴウですら、書庫の方をチラチラ見るのを止められなくなってる。
こうして三人の面談における先手は、ドゥルクのものとなって始まった。