軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

143回目 ゲンゴウと晩酌

「ガモン殿、ようこそ。いや、申し訳ありませんな、こんな時間にお呼びだてして。どうにも今日は忙しかったので、今くらいしか時間が取れないかったのです」

「いえ、晩酌に招いてもらったのは嬉しいですよ」

夜、俺はゲンゴウに『フレンド・チャット』を通じて晩酌に誘われ、ゲンゴウの家へとやって来た。今日はゲンゴウの奥さんもいないらしく、一人で飲むのも味気ないと思い俺を誘ってくれたのだ。

「おや、その手に持っているのは何ですかな?」

「ああ、これは食品ガチャで出したツマミですよ」

酒はゲンゴウが提供してくれるようなので、俺はツマミを持って来た。ゲンゴウは取って置きの酒を出してくれると言うので、楽しみだ。

ゲンゴウの出してくれた酒は、ワインと蒸留酒だったが、どちらも地球の物と比べると酒精が弱く、それが俺にはちょうど良かった。どれもゲンゴウのオススメの酒で、毎年樽で取り寄せている酒なのだそうだ。

「ほほう。テレビですか? 異世界の映像とは興味深いですな。どうですか、それを見た皆の様子は?」

「ここに来る前にリビングを覗いたら、何人かで野生動物の映画を見ていたな。ただ、どっちかって言うと娯楽よりも研究だなアレ」

「なるほど、確かにそうなるかも知れませんな。異世界などと言っても、遠い外国の地も簡単に行けないと言う意味では異世界と変わりませんからな。しかしそれをこの眼で見れると言うのはやはり興味深い。ワシの所にも、一台頼みますわい」

「そりゃもちろん。ガチャ・ポイントを払うフレンド登録も、ゲンゴウ殿にお願いしますよ」

「かしこまりましたわい。使用料も兼ねて金を出しますので、あとでガチャを回して貰えますかな? 生活ガチャと食品ガチャでお頼みします」

「わかりました。では明日にでも」

「…………フフッ、しかし『テレビ』ですか。ガモン殿のスキルは、つくづく良く出来ておりますな。これはフレンドがフレンドを増やす為の仕組み、という訳ですかな」

「…………ん? どういう事ですか?」

「いえ、ガモン殿とフレンドとなれば、ガチャ装備やフレンド・チャットなど、とんでもない特典がありますが、それは外の人間には伝わりづらい。ガチャ食品やガチャアイテムなどもありますが、やはりそれらもフレンドの良さは伝わり難い。しかしその『テレビ』ならば、一目見て良さが解るでしょう?」

「それが、フレンドを増やす事に繋がると?」

「話に聞くに、その『テレビ』は娯楽の側面が大きい。それがフレンドだけでなく、その周囲の者でもそれを見る事が出来る。しかしそれを継続させる事が出来るのは登録されたフレンドだけなのです。それは周囲にいるフレンドではない者達には、途轍もなく羨ましく映るでしょう。そうして彼らは、ガモン殿のフレンドにして貰うべく、努力を始める」

…………なるほどなぁ。これを羨ましく思うのなら、自分もフレンドにして貰いたくなる。しかし俺のフレンドとなる人数に上限がある以上、何らかの能力が高い者か、社会的地位のある者がフレンドになっている、と皆は考える。

実際に俺のフレンドにはティムやバルタ、それにゲンゴウなどと能力や地位が高い者がいるので、あながち間違いではないな。俺としても、能力の高いフレンドが集まるのなら心強い限りだ。もちろん、人柄も大切だけどな。

「…………うーんそうか。フレンドを増やす為の仕組みだとは考えていなかったな。なら、テレビはどんどん設置していくべきかな」

「いえ、少し慎重に様子を見た方が良いでしょう。ガチャから出る☆3のアイテムとは言っても、必ず出る訳でもないですからね。それに、何事も程々というものがあるのです」

そんな感じで酒を酌み交わして、そろそろいい時間になった所で、ゲンゴウがグラスを置いて俺に向き直った。ここからが本題かなと、俺もまたグラスを置いてゲンゴウの話を聞く事にした。

「…………まずはお詫びを。ガモン殿と酒を酌み交わしたいのはワシの本音で間違いありませんが、ガモン殿の口を軽くしようと企んだのも事実、それについて頭を下げますわい」

「いやいや、酒の席って元々そういう場でしょう? 俺は気にしてませんよ。それで、何かありましたか?」

「ええ、実は…………。ガモン殿が皆さんと共同墓地へと向かった日。寮にいたワシの部下の一人が、聞いていたのですよ。『ドゥルクの書庫の鍵』の話を」

「!?」

「あ、寮に住む者達には口止めはしましたのでご安心下さい。少なくともワシの部下から話が広がる事は無いと保証いたします。その辺りはしっかりと教育しておりますので」

「…………ゲンゴウ殿のことですから、ドゥルクの『鍵穴』が消えた事もご存知ですよね?」

「ええ、もちろんです。それを聞いてワシは『ドゥルクの書庫』をガモン殿が手にしたのだと確信致しました」

「……………………やはり、欲しいですか。ドゥルクの遺産、『魔道書』が…………」

「いいえ。そちらには興味はありますが、それだけですな。ワシか欲しいのは、むしろ『勇者』の遺物であり、ドゥルク翁が持っていると予想される物、『コスメ大全』です」

「……………………?」

え? コスメ? いま『コスメ大全』って言った? しかも『勇者』の遺物なの? コスメが?