作品タイトル不明
137回目 『レッサーリッチ』の初撃
『オオォォオォォォォ……………………』
「…………あれがこの地下墓所ダンジョンのダンジョンマスターか?」
地下墓所ダンジョン・三階層の奥にあったボス部屋。そこは部屋として区切られてはいるが扉などは存在せず、外から丸見えの部屋だった。
そしてその部屋の中心には、人やモンスターなどの頭蓋骨が積まれたおおきな山があり、その頂上には大きなスケルトンの上半身が生えていた。
そのスケルトンの頭には骨で作られた王冠があり、その右手には様々な頭蓋骨を寄せ集めて作ったような長い杖が握られている。どう考えても、あれがダンジョンマスターの『レッサーリッチ』で間違いないだろう。
『オオォォオォォ…………』
「…………うわ…………」
ボス部屋では、レッサーリッチの能力なのか絶えずアンデッドが生み出されている。その生み出し方が醜悪で、俺の口からは思わず嫌悪感が出てしまった。
レッサーリッチの下半身である高く積まれた頭蓋骨。その中から這い出て来る物がある。
それはまだ体に少し腐肉が残っているスケルトンであり、這い出て立ち上がると同時に腐肉が剥がれ落ちて完全なスケルトンとなる。そしてその落ちた腐肉が、大体スケルトン三体分集まると、蠢いて一つの塊となり、ゾンビとして立ち上がった。
更には、レッサーリッチの体から絶えず立ち上る瘴気はレッサーリッチの上空に渦巻いており、そこからはレイスが生み出されていた。
「見た感じ、アンデッドが出て来る頻度はスケルトンが一番多いようでやすね。で、ゾンビが二番目で最後がレイスといった所でしょうね」
「スケルトンが生み出されるスピードが異常だね。これじゃあ確かに、いずれスタンピードも起きただろうね」
バルタやティムの言うように、レッサーリッチはそこに存在するだけでアンデッドを生み出している。緊急クエストを抜きにしても、こんなのを放置していく訳にはいかない。今すぐ、ここで倒さなくては!
「準備はいいか皆! 中に入ると同時に叩き込む!! 行くぞ!!」
俺達はそれぞれ武器を構え、魔法の詠唱をして、一気にボス部屋へと駆け込んだ!
『………………!!』
「!?」
ボス部屋へと入り、一斉に攻撃を放とうとした瞬間。俺は確かに見た。
レッサーリッチの頭蓋骨の空洞が俺達を睨むのを。そしてその頭蓋骨が、骨だけの姿にも関わらずニヤリと歪むのを。
……………………まさか、誘われた!?
そう直感した瞬間、俺達は急激な脱力感に襲われてガクンッと膝を落とした。
その原因となったのは『魔力』。魔力を扱う事に慣れていない俺でも解る程に、急激に魔力が削られたのだ。
「な、なんだこれは!?」
「チッ! トラップでさぁ! これは部屋に入った者の魔力を半分吸い取るトラップですぜ! まさかこの程度のダンジョンでボス部屋にトラップがあるたぁ、油断しやしたぜ!」
バルタの言うボス部屋のトラップで、俺達の魔力は一気に半分吸い取られたらしい。しかもその魔力はボス部屋を介して部屋の主たるレッサーリッチへと届けらた。
俺達全員の魔力の半分を吸収したレッサーリッチに変化が起こる。下半身の頭蓋骨の山から八つの頭蓋骨がレッサーリッチの背中に浮かび上がり、円を描いてゆっくり回り始めたのだ。
そして、レッサーリッチから魔力が渡り、頭蓋骨の眼や口の空洞に、青い炎が灯っていくと、ケタケタと笑い始めた。
「ヤバイ! 何か来るぞ!!」
「ガモン様! 『七星の盾』を私に!!」
シエラに言われ、俺は☆5装備『七星の盾』を取り出し、シエラへと投げた。
ステータスの値が一定以上にならなければ装備出来ない『七星の盾』だが、シエラにはその足りないステータスを補うためのガチャ書籍はあらかじめ渡してあった。
それを読み終えたのか、レベルが上がって条件を満たしたのかは解らないが。今この瞬間、シエラは確かに『七星の盾』を装備した!
「全員シエラの後ろに下がれ!!」
「来ます!!」
全員がシエラの後ろに回り、シエラが『七星の盾』を構えた瞬間。背後に回る頭蓋骨に宿った青い炎がレッサーリッチに全て移り、レッサーリッチの下半身の頭蓋骨の山が蠢いたかと思うと無数の頭蓋骨からなる大きな髑髏となり、その口から瘴気をはらんだ青黒い炎の奔流となって放たれた!!
「くうぅっ!?」
「シエラ!!」
「シエラ殿!!」
「耐えてくだせぇ!!」
青黒い炎の奔流を『七星の盾』で一身に受けるシエラの背中を、俺とアレスとバルタの手が支えた。
☆5の『七星の盾』には、敵の攻撃を吸収し封印するスキルがあるが、それはまだ解放されていない。だがそれでも、『七星の盾』には永続スキルとして防御力と魔法抵抗力がそれぞれ+100も上がる。
「…………そこだ!!」
『…………!?』
シエラが構える『七星の盾』でレッサーリッチの攻撃を耐えている中、ティムが放った氷の矢がレッサーリッチの右目を射抜いた!
それによって怯んだのか放たれる青黒い炎の勢いが僅かに弱まり、その隙をついてシエラが炎を押し返し、炎の奔流はレッサーリッチとシエラの間でぶつかり合うように消滅した!
いきなりやってくれるな、レッサーリッチ! だがここからは俺達のターンだ!!