作品タイトル不明
116回目 焦り
緊急クエストにストーリー・サブクエスト、そしてそれに関わるトルテの兄貴達の救出と、様々な事が重なった俺は、取り敢えず全員を連れて寮に帰って来た。
焦るトルテにもストーリー・サブクエストの事を話すと、トルテも渋々ながらについて来た。トルテとしてはすぐにでも共同墓地に行きたいだろうが、ストーリー・サブクエストに期限が出たって事は、逆に言えばそのくらいの猶予が生まれたって事でもある。
事は緊急クエストにも関わっているからな、順序だてていこう。焦りは禁物だ。
「…………緊急クエストに、ストーリー・サブクエストですか。ストーリー・サブクエストはアレスさんの時にもありましたね。それは人を助ける為のクエストなんでしょうか?」
「正直、よく解らないけど、ただ『人を助ける』だったらもっと大量に来ると思うんだよ。だから『俺の近くで、俺に関係する人を助ける』だと思う。で、緊急クエストの方は、放っておくと俺が詰むやつだと思っているよ。多分だけど」
緊急クエストもストーリー・サブクエストも俺のスキルから発信されている以上、俺が中心にいるのは当然だろうからな。
「そのサブクエストってやつで、兄ちゃん達の場所は解らないのか!?」
「共同墓地がダンジョン化して、そこに巻き込まれたらしいから、地下のダンジョンにいるのは間違いないだろ。でも具体的にどこにいるとか、ダンジョンがどの程度の大きさなのか、とかは解らない」
「なんだよそれ!!」
トルテは苛立ったようにソファーから立ち上がると、そのソファーの近くをウロウロと歩いて、再びソファーに乱暴に座った。
トルテがだいぶカリカリしている。大事に思っている身内が巻き込まれているのだから当然だけど。
トルテの為にも、ザッパ達を早く助けてやらないといけない。
「なあシエラ。死霊系のモンスターって、どう倒すものなんだ?」
「一番簡単なのは魔法です。魔法ならば、どんな属性でもダメージを与えられます。スケルトンやゾンビなどは剣でも斬れますが、倒しきるにはよほど斬り刻まなければいけません。剣の場合は魔法を付与するのが絶対条件だと言っていいでしょう。でなければ倒すのに時間が掛かりすぎて敵に囲まれることになりますから」
「なら、武器については問題ないな。アレスの武器には元から雷属性がついているし、俺とトルテについては、多分アレが使える」
「アレとは何ですか?」
「『○○の弾丸』シリーズだ。あれのスキルはそれぞれの属性や効果を付与する物だったからな。MAXまで強化してアクセサリーとして装備していれば、その属性を付与出来るはずだ」
待てよ? また攻撃用ドローンを幾つか交換して属性の弾丸を持たせればかなりの戦力になるな。クリムゾン・アントに強化してない弾丸が効かなかった事を考えれば、弾丸の強化は必須だけどな。
…………MAXまで強化するなら一つにつき五セット必要か。ちょっとでも使ったやつは強化に使用出来なかったから、新品が五セットいる。
弾丸シリーズはかなりの数はあるけど、一気に減ることになるな。…………またガチャを回さないと。
「そう言えば☆3で『ボウガン』があったな。俺はあれを使うか」
「弾丸を使うのでしたらオススメは『回復の弾丸』です。治癒魔法はアンデッドには毒と同じですから」
「弾丸は一箱に百発。数はそこそこあるけど無駄撃ちは出来ない。基本はアレスに頑張って貰う事になるな」
「任せて下さい! 剣術は幼い頃からやっていましたので、動きの遅いアンデッドに負ける事はありません!」
「ああ、任せるぞ!」
前衛としてアレス、斥候としてトルテ、魔法および回復要因としてシエラ、そして後衛が俺。これは中々にバランスが取れているのではないだろうか?
あとは攻撃用ドローンと防衛用ドローンと、武器となる弾丸シリーズの強化が終われば行ける。…………おっと、バフを付けるのも必要だな。
共同墓地のダンジョンがどの程度の規模なのかは知らないが、誕生したてのダンジョンである事は変わらない。なら、攻略も早い方がいいだろう。
「大体は決まったな。ならまず飯に…………」
『マスター、よろしいでしょうか?』
「…………なんだよキャンパー」
さっさと飯を食って行こうとする俺の前に回り込むように、キャンパーが出て来た。まるで俺を止めるようなタイミングに、少しイラ立つ。
『ワタクシやドローンをダンジョンに入れるのならば、『◇キャンピングカー』自体をダンジョン内に入れなければいけません』
「…………そうなのか?」
『はい。ダンジョンは、今いるこの空間とは別空間ですからね。ダンジョンの外からではダンジョン内のドローンに指令が届きません。また、ダンジョン内であっても別の階層となると同じように指令が届かない可能性があります』
マジかよ。それってつまり、ダンジョンの入口に『◇キャンピングカー』を出していても無意味って事か。ドローンが使えないとなると、かなり厳しくなるぞ。何せ、どれだけ強力な敵がいるのか未知数なのだ。それを物量でカバー出来ないとなると…………。
『ですので、『◇キャンピングカー』は『ガチャ・マイスター』に収納して持っていく事を推奨します。ダンジョン内にて、必要な時に出してください』
「…………うーーん。それはそうするけど、戦力がなぁ…………」
『ええ。戦力は足りないと予測します。ですので、バルタに協力を求めるのを推奨します』
「……………………ぁ」
…………俺はアホか。確かにそれが一番確実じゃねぇか。
焦りは禁物とか言っといて、俺もかなり焦ってるじゃねぇか。どうも心の中が焦っていて、周りが見えなくなっていたみたいだ。そうだった。メチャクチャ頼りになる男が近くにいるのを忘れてた。