軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

108回目 卵の回収

ザシュッ! ザシュッ! と、蟻塚があった爆心地にスコップを土に突き刺す音が響き渡る。その音を立てているのはもちろん俺達だ。

俺は今、防衛用ドローンに入ったキャンパーに見守られながら、シエラ・トルテ・アレスの三人と一緒にひたすら穴を掘っていた。

穴掘りの重労働とは言え、さほど苦にはならない。何故なら俺達はしっかりガチャ食材を使った食事を食べて、バフをかけて来ているからだ。もうバフをかけるのも十数回目になるし、なんとなくどの食材でどんなバフが掛かるのかも解ってきている。あくまでも、なんとなくだけどな。

今回のメニューはアレマーさんがガチャから出て来たレシピ本を見ながら作ってくれた『牛スタミナ丼』だった。そのバフは、筋力と体力の大幅な増強である。

「けっこう掘ったな。…………ところでガモン。この『安全ヘルメット』ってカッコ悪い兜、脱いでいいか? 何も皆で被らなくてもいいだろ?」

「いや被っとけよ。言っとくけどなトルテ。この『安全ヘルメット』って、☆3の装備アイテムだけどスキルはチートだぞ?」

俺達の使っているスコップは生活ガチャから出てきた、ごく普通のスコップだが、ヘルメットは違う。これは一応、装備ガチャから出てきたガチャ装備なのだ。

日本では一般的な、黄色の本体に緑色で書かれた安全第一の文字。見た目は完全に普通のヘルメットである。

そしてこれは、寮にいたゲンゴウの所の社員の一人が何故か気に入り、ずっと被っていたからスキルが判明している装備アイテムだ。

☆3『安全ヘルメット』のスキルは『危険感知』。危険な場所や危険な行動に対して、事前に自分だけに聞こえるアラームで知らせてくれる、という物だ。おそらくスキルがMAXまで育てば、もっと詳細にハッキリと解るようになると思う。

本当にそうなれば、ひのきの棒に続く、☆3のチート装備と言っていいアイテムだ。

ただ、戦闘には使えないだろう。他の頭装備に比べて防御力が低いからな。まあそれは、戦闘用か作業用かの違いだと思うけど、ダンジョンの探索とかには使えると思う。生活ガチャからヘルメット用のライトも出て来てるしな。

「うん? ここ、何かあります!」

と、その時。アレスの差し込んだスコップが硬い物に当たったような音を出した。トルテの探知スキルによるとそろそろだったので、当たりを引いたのかも知れない。

アレスの周りに集まって皆で掘り進めていくと、そこから出て来たのは、真っ赤で大きなサナギのような物体だった。あまりにデカ過ぎて、まだ一部しか見えていないのに、俺と同じくらいの大きさがある。

どんどん掘り進めて、やっと全体像が見えてくると、それは禍々しくて色と大きさも違うが、明らかに蟻の腹部だった。

ってかデカ過ぎるだろ。家かよ。

『凄いですね。この状態でもまだ生体反応があります』

宙に浮かぶ防衛用ドローンを通して、キャンパーがそう報告してきた。マジかよ。これまだ生きてんの?

「おそらく卵を護るためでしょうね。ですがこの腹部自体に意思は無い筈ですので、割ってしまいましょう」

「俺の『探知』にも、この中に卵があるのが見えるぞ。とっとと回収しようぜ。アレスはそっちな」

「ここか? わかった」

言うが早いか、三人は巨大な蟻の腹部にスコップを突き刺してサナギのような殻を破っていった。こんなキモイ物体を前にしても躊躇わないってのは凄いな。俺はすっかり出遅れてしまった。

「…………じゃあ俺は回収の準備をするか。キャンパー、『倉庫』の用意を頼む」

『かしこまりました』

俺がキャンパーに頼んだ『倉庫』は、俺のスキルである『ガチャ・マイスター』の倉庫とは別物であり、『◇キャンピングカー』の機能で、ガチャ・ポイントを使って増やせる『設備』だ。500ポイントと結構使ったが、容量は家が一軒入るくらいには大きい。

更に今回のようにドローンを使ってキャンパーが外にいれば、外でも倉庫が使える上に、生き物以外ならば、何でも収納出来る。俺の『ガチャ・マイスター』の倉庫はガチャアイテムしか入れられないので、『◇キャンピングカー』の倉庫は普通に便利だ。

難点はキャンパーがその場にいないと使えない事だが、今は関係ない。取り敢えず、仲間達が破った蟻の腹からこぼれ落ちた蟻の卵を、さっさと回収してしまおう。

「これがクリムゾン・アントの卵か。かなりデカ…………熱い!?」

「おい、危な…………熱っ!?」

クリムゾン・アントの卵はラグビーボールくらいの大きさがあり、どうも熱を放っているらしく迂闊に持ち上げたトルテがその熱さに卵を取り落とし、それをカバーしようとしたアレスも地面スレスレで受け止めてから、結局は下に落とした。

「何だよコレ!? メチャクチャ熱いぞ!?」

『フム…………。どうやら卵を護っていた粘液が発熱しているようですね。先程の殻にあった生体反応はこれのせいですか。あの状態でも卵が孵るように温めていたのでしょうね。粘液を拭き取れば問題ないと思われます』

「あの状態でも卵を孵せるとか凄ぇな。取り敢えず、キャンプ用の耐熱手袋があるからコレを使おう」

俺はガチャアイテムとして出てた耐熱手袋と粘液を拭き取る為のタオルを倉庫から取り出した。耐熱手袋の方は二組しかないので、トルテとアレスが使う事になり、俺とシエラは普通の軍手をはめて、粘液を拭き取った卵をキャンパーの倉庫に納めていく係だ。

そして小一時間ほどの時間をかけて、俺達はクリムゾン・アントの卵を全て回収したのだった。